【第09話-03】エピソード0 ― 始まりの物語-千紗
時間はさらに進み、3月末。
盤面は整い、住む場所も決まった。
けれど――心は、整っているでしょうか。
千紗は気づき始めます。
支えると決めたはずの恋が、
いつのまにか“庇護”や“義務”に変わりつつあることに。
そして問いかける。
「今のあなたは、どこにいるの?」
甘さの裏にある、揺らぎ。
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【Scene09:今のあなたは、どこにいるの?】
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ふと気づけば、もう3月の末だった。
いや、早いって。早すぎるって。
まあ……いろいろあったからね。ほんと、いろいろ。
優香が晴道との関係を再開したり(これは私が望んだこと)
優香が「温泉旅館行こう」って言い出したり(3人で!)
優香が「3人でしよ」って言い出したり(──想定外)
優香が武に告白されたり(きゃー♡)
優香が、あんなことやこんなこと……(いやらしい)
──いや、主犯ぜんぶ優香じゃん!?
いや、わかってるよ。
きっと、よっぽど鬱憤が溜まってたんだと思う。
せっかく晴道と結ばれたってのに、5ヶ月も出番が無かったんだもんね。
(ごめん、私が独り占めしてた)
でも私、優香には何も説明してない。
晴道の心が壊れてることも、言ってない。
言えない。
それはたぶん──優香には純粋な愛を注いでほしいから。
私はもう、晴道を支えるって決めた。
晴道のすべてを、引き受けるって。
それはもう、恋じゃないのかもしれない。
きっと庇護で、義務で、それでも後悔はしてないけど……
優香の、溢れんばかりの真っ直ぐな愛が羨ましいって思うこともある。
──なんて感傷にひたってたらさ。
私が目の前にいるっていうのに、
あの二人はどれだけイチャイチャすれば気が済むのよ!?
ていうか晴道の右手、え、どこ触ってんの!?
左手は左手で、ちいさな胸の先っちょをこりこりして、
「優香のここ、感度最高だよ」って、ちょっと待ってよ!!
流石に私、泣きそうなんだけど!?
って思ったら、
「じゃあ、千紗もおいで」って──
そういう問題じゃないのに、ないのに……ああ……。
……また、3人でしてしまいました。
でも、わかってる。
これは普通じゃない。
正常な関係じゃない。
やっぱり晴道は、どこかが壊れたままだった。
自分の気持ちを言葉にできなくなって、
そのぶん──他人からの気持ちには、過敏すぎるくらいに反応してしまっている。
誰かに好かれれば、全部を受け入れてしまう。
愛情を受け入れるのが“義務”だって、思ってるんじゃない?
クリスマスイブの、メッセージカード作戦……
効きすぎたのかもしれない。
だって、温泉旅館で若女将さんに求められたら──
晴道、受け入れていた。
自分の気持ちは出せないのに、
誰かの気持ちは否応なく受け止めようとする。
そんなじゃ、晴道の心がパンクしちゃう。
私の愛だけじゃ、届かなかった。
優香と二人でも、足りないのかもしれない。
──でもね、晴道。
クリスマスイブのあの夜、あなたの中に確かに“本当の愛”を感じた。
あれだけは、絶対に嘘じゃなかった。
じゃあ、今の本当のあなたはどこにいるの?
私たちが、手を伸ばせば、また届く場所にいるの?
それとも、もう届かないほど遠くへ行ってしまったの?
──そんな思いを抱えたまま。
運命の日が、やってくる。
千紗は、やっと気づき始めました。
“支える”と決めたはずの恋が、
いつのまにか“守る責任”や“抱え込む義務”にすり替わっていないか。
優香のまっすぐな愛。
自分の覚悟混じりの愛。
どちらが正しい、ではない。
でも、晴道の心は――どこに立っているのか。
エピソード0は、甘さだけで終わりません。
問いは、まだ続きます。
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次回、
朝っぱらから、まさかの“ぎしあん”。
シリアスな問いを抱えていた千紗を待っていたのは、
恋人と幼なじみの全力モード。
怒る? 泣く? それとも参戦する?
けれど笑い飛ばせるからこそ、
千紗はまだ折れていない。
ルールは誰が決めた?
番制度の本当の意味は?
そして――
千紗の中に芽生えた、あの“優越感”の正体とは。
エピソード0、まだまだ加速します。




