【第08話-27おまけ2】それぞれの“一番”-和也・美由
本日3本目の公開です。
30分まえにおまけ1、1時間前に本編を公開しています。
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【Scene07.9:1年前10月】
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次の週末。
美久も南も予定が入り、和也は本当に久しぶりに、誰にも会わない、何の予定もない土曜を迎えるはずだった。
──そのチャイムが鳴るまでは。
「……通販、なんか頼んだっけ?」
玄関に向かいながら、和也は妙な既視感を覚えていた。
この流れ、前にもあった気がする。
そして、ドアを開けた瞬間──
「……梨子?」
そこに立っていたのは、まぎれもなく阪本梨子だった。
「えっ、梨子、なんで──」
「おーにーいーちゃん、あーそーぼ! どっかいこっ!」
「おーまーえー、先週の涙の別れはどうした!!」
さすがに和也も呆れ半分、怒り半分だった。
「えー、だからもう部屋には入らないよ。セックスもしないしぃ〜」
「……」
「そ〜れ〜と〜も〜……和也お兄ちゃんは、従姉妹に欲情する変態さんですかぁ?」
その声は、容赦なく大きかった。
しかも梨子は両腕で控えめな胸を寄せ、なぜか強調している。
「はぁ……わかったよ。着替えるから、中で待ってろ」
玄関先でこれ以上騒がれたらご近所の誤解が怖すぎる。和也はため息混じりにそう答えた。
「だから、部屋には入らないってば」
梨子の表情が一瞬だけ真剣になった……が、すぐにニヤリと悪戯っぽく笑う。
「か弱い女の子を部屋に連れ込んで、自分は裸になるなんて……襲う気満々ですね!」
「だから! 人の家の前で、そんな人聞きの悪いこと言うな〜っ!」
和也はすでに涙声だった。
実は、梨子が今日訪ねてきたのには理由があった。
南から直接、こう頼まれていたのだ。
『今週は誰も和也のところへ行けないから、梨子が遊んであげて。』
もちろんそれは、南と美久が示し合わせて梨子に託した、和也との“最後の時間”をつくるための配慮だった。
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梨子はその日一日、和也と遊び倒した。
街でのウィンドウショッピング、豪華なランチ、駅前のラウンドワンでのスポーツ&カラオケ……
とにかく、めいっぱい遊んだ。
何度か二人きりになるタイミングもあったが、梨子は先週の“別れ話”など忘れたように明るく振る舞っていた。
そして夜。
少しムードのあるレストランでディナーを終えたあと──
「じゃあね、和也さん。またね」
梨子はそう言って、ふらりと帰っていった。
あっけらかんとしたその態度とは裏腹に──
彼女が大学を卒業するまで、和也の元を訪れることは二度となかった。
阪本梨子。
彼女らしい、明るく、強がりで、潔い。
そんな最後だった。
梨子らしい、明るくて、少し強がりな幕引きでした。
泣いて終わるのではなく、
笑って一日を遊び倒して、
何事もなかったかのように去る。
それが、阪本梨子という女の子の“けじめ”だったのだと思います。
南のように未来を背負う強さでもなく、
美由のように張り合う覚悟でもない。
でも――
自分の気持ちをちゃんと整理して、
相手の人生から一歩引く勇気もまた、ひとつの強さです。
あなたは、梨子の選択をどう感じましたか?
ぜひ感想やリアクションで教えてください。
次回、
次に動くのは、美由の人生そのもの。
仲居から“霞の宿の顔”へ。
だがその裏では、容赦ない特訓が始まろうとしていた。
そして――
和也を巡る戦いも、静かに熱を帯びていく。




