【第08話-23おまけ】それぞれの“一番”-和也・美由
本日2本目公開です
30分前に本編を公開しています。
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【Scene07.3:1年前10月】
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「お昼休みでも食べようか」
誰ともなく言い出し、4人は部屋で軽く昼食を済ませた。
その後、ふいに美久が立ち上がる。
「──デートしよっか」
そう言って、和也の手を取る。
「ちょっと待って、和也は“私の”彼氏なんだけど!」
美由が鋭く声を上げる。
「まあまあ、第一彼女は心に余裕を持とうよ」
久美が苦笑しながら、なだめるように言った。
「それに……今回、また私たち酷い目に遭ったじゃない? これで3度目だよ。なのに美久ったら……それでも“本気”なんだよ」
「そう……なのね」
「私はもういいかな」
久美は微笑む。
「元々は、セックスのテクニックがすごくて夢中になっちゃっただけだし。今回のことで、よく分かった。やっぱり、愛が必要よね。私も、ちゃんと彼氏見つけようかな」
久美はにっこり笑い
「それじゃあね」
そう言い残して、帰っていった。
──その後、久美は和也と関係を持たなくなる
しかし半年後、とあるきっかけで和也もとの関係が復活するのだが
それは未だ語られぬ話しだ。
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一人また一人と去っていく中、美由は、ふと自分の“原点”に立ち返ろうとした。
──そうだ、決めたじゃないか。
「どんな形でも、和也の隣にいる。愛していく」って。
「和也。私、今日はあなたの部屋に帰って待ってる。泊まってきてもいいよ」
「え、それって……」
戸惑う和也に、美由は微笑んで言う。
「美久さん、今日は譲ってあげる」
彼女の笑顔は、どこか晴れやかだった。
「ありがとう、美由。……私も“美久”でいいよ」
美久もまた、何かを覚悟したような顔で頷いた。
「私が第一彼女だからね。第二彼女の美久は、ちゃんとわきまえてね」
「私って、第四位だと思ってたんだけど?」
美久がぽつりとつぶやく。
「千晴はとっくに退いてたし、梨子も……もう和也の元には帰ってこないわ」
「それ、どういう意味……?」
「卒業旅行に行ってるんでしょ? 女の勘よ」
和也はその意味が分からなかったが、どうせ“彼の意志”は聞かれない。
関係ないのだ。
「……私が“第二彼女”。なら、もう少し頑張れば……」
「だめよ」
美由は、すっと左手を掲げる。
薬指には、リングが光っていた。
「これがあるし。それにね、和也には──婚約者もいるのよ」
「いや、まだ決まったわけじゃ──」
「だって、もう住む家まで準備されてるんだよ?」
美由は少し意地悪そうに笑った。
「逃げようないじゃない」
新倉南との家──
すでにレイアウトも決まり、基礎工事が始まっているという。
父親のコネと財力を使った最速工事。来年の春には完成予定だ。
「私の恋……前途多難、か」
美久は小さくつぶやく。
美由はにっこり笑い
「それじゃあね」
そう言い残して、帰っていった。
派手な修羅場のあとに残るのは、
案外こんな、静かな整理の時間なのかもしれません。
久美は、自分に必要なのは「技」ではなく「愛」だと認めて去りました。
由美も、自分の原点に戻っていった。
そして美久は――それでも残ると決めた。
一方で美由は、「第一彼女」という立場に立ちながら、
本当に守りたいものは何かを、ようやく思い出そうとしています。
誰も完全な悪者ではない。
けれど、誰も完全に正しくもない。
それぞれが抱える“一番”は、
まだ揺れたままです。
ここから先、
その揺れがどう収束していくのか――
引き続き見届けていただけたら嬉しいです。
次回、
露天風呂で向き合う、梨子と新倉南。
ぶつかり合う価値観の先で、梨子が辿り着いた答えとは――。
そして花音は、南の中に流れる“血”と覚悟の深さを知る。
交差する想いは、敵対か、それとも共闘か。
静かに盤面が動き出す。




