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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow
【第18話】─ 番外編:芸能界編二期

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【第18話-15】─ 番外編:芸能界編二期


【Scene18:旅路】



第九話の物語は、なんの前触れもなく、静かな新幹線の中のシーンから唐突に始まった。

画面に、千晴の静かなナレーションが重なっていく。


――私、高橋千晴は今、小泉晴道を連れて、ある場所へと向かっている。

目的地は、会津若松。

そう、花音のいる、あの『霞の宿』だ。

すべての、決着をつけるために。


そのまま滑り込むように始まったオープニング映像は、しかし、いつもとは明らかに様子が違っていた。


楽曲も、ダンスの振り付けも、カメラの構図もすべて同じ。

それなのに、画面に映る千紗、千秋、千鶴の三人の表情が、まるで違うのだ。

どこか哀しげに思い悩むような陰りを帯びた顔。そこから、何かを覚悟したように、すがり付くような視線でゆっくりと天井を見上げるカット。

そして何より、これまでのオープニングには存在しなかった、新しいカットが挿入されていた。


彼女たちのマネージャーである千晴が、踊る三人を見守っている――いや、冷徹なまでの鋭さでその姿を“見定める”ような、強い意思を宿した眼差し。


視聴者たちは、その一変した映像世界を前にして痛烈に直感させられていた。

前回までの、晴道とアイドル三人による暖かで穏やかな日常は、もう完全に終わったのだ、と。



オープニングが明け、CM枠が終わると、画面には少し前の日付を指し示すテロップが表示された。時間が少しだけ遡り、事の顛末が明かされていく。


「晴道、おはよう。――今日は、私とデートね」


千晴が、いつもの明るい笑顔で晴道を誘う。


「はい。わかりました」


晴道もまた、穏やかな笑みを返した。

連れ立って歩く二人のデートコースは、あの花音との別れに絶望し、晴道がどん底にいたあの日と全く同じ場所だった。

ただ、明確に違うことが一つだけあった。

二人は、最初から当然のようにしっかりと手を繋いでいた。その姿は、一朝一夕のものではない、まるで長年連れ添ってきた本物の恋人同士のそれであった。


デートの終着点、二人は夜の観覧車へと乗り込む。

あの日、二人の唇が重なりかけた、あの観覧車だ。

ゴンドラが動き出すと、二人の間にしんとした沈黙が流れた。

かすかな機械の駆動音だけを残し、夜景に溶け込んでいく観覧車が、ゆっくりと、ゆっくりと上昇していくシーンが丁寧に描かれる。


その画面に同調するかのように、テレビの前の視聴者たちも一言の言葉もなく、息を呑んでモニターを見つめていた。


やがて、頂上が近づいた頃、晴道が静かに口を開いた。

「千晴さんがあの日、観覧車で言った『まだ、駄目』の意味……今の俺には、分かります」

「うん」

「俺はあの日、千晴さんを……花音さんを失った心の穴を埋めるための、代替として選ぼうとしていました」


晴道は千晴の瞳を真っ直ぐに見つめ、己の不誠実さを逃げずに一気に伝えた。


「私はあの日、ただ晴道を救いたい、それしか頭になかったの」


千晴もまた、その視線から目を逸らさずに言葉を返す。


「「それは、愛じゃない」」


二人の声が、完璧に重なった。


「愛は――」晴道

「平等じゃないといけない」千晴

「与え合わないといけないんだ」晴道


「だから私は、千姫の三人に……彼女たちに、晴道を救うことを託した。自分の手を汚さない、ずるい大人なのよ」


千晴はそっと、自嘲気味に顔を伏せた。


「俺も、彼女たちに心が癒されていくのを確かに感じていました。……だけど、彼女たちの真っ直ぐな想いに、応えることはどうしてもできなかった」


晴道もまた、切なげに顔を逸らす。


「「――あなたを、愛しているから」」


三度、重なり合う二人の声。

観覧車がてっぺんに達した瞬間、二人の身体は静かに、しかし深く重なり合った。



この瞬間、ドラマの瞬間視聴率はシリーズ最高の新記録を叩き出した。

しかし、ネット上にお祭り騒ぎのような喧騒は一切なかった。多くの視聴者は、涙を流すことすら忘れ、ただただ画面から放たれる凄まじい熱量に引きずり込まれていた。

誰もが静まり返り、画面の中の二人を固唾を呑んで見守っていた。



観覧車を降りると、二人は再び、静かに手を繋ぎ直して呟いた。


「俺たちの」

「私たちの」

「「家に帰ろう」」


二人が高橋家と帰宅すると、リビングでは千晴の母、幸恵が二人を待っていた。

幸恵は二人の晴れやかな、しかし覚悟の決まった表情を一目見るなり、すべてを悟ったようにふと言った。


「……結論は、出たのね? 決心はできた?」

「「はい」」


晴道と千晴の声が、力強く重なる。


「それじゃあ――花音にも、会いに行かないとね」


穏やかに、しかし促すように告げる幸恵に、晴道は真っ直ぐな目で応じた。


「はい、そうします。霞の宿へ行って、自分の本当の気持ちを、花音さんへきちんと伝えてきます」



CMを挟み、画面は再び、第九話の冒頭――あの静かな幹線の中へと戻る。

台詞も無く、ただ並び座っている晴道と千晴。

しかしそれだけで、視聴者たちは理解した。

二人はもう深く結ばれたのだと、もうそこには誰も割り込めないのだと。

何の説明がなくとも納得した。

そして、すべての決着をつけるための旅路の先、会津若松の空へと、物語は一気に加速していくのだった。


次回予告

「ドラマで母親役を演じたのは、千晴の本当の母親だった!」


スタッフ一同が驚愕した、素人離れした圧倒的な演技力の理由とは――


「いや、でもあの母親は本当にただ者じゃねえっすわ。」


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