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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow
【第18話】─ 番外編:芸能界編二期

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【第18話-11】─ 番外編:芸能界編二期


【Scene14:出会い】



第五話の物語は、まだ第一話よりも少し前――シェアハウスへと入居する前の千紗たちが、駅前で偶然晴道と出会う場面から始まった。


「あれ、晴道お兄ちゃんじゃない!」


劇中の千紗は、晴道に向かって親しげにそう呼びかける。


「やあ千紗、久しぶりだね」

「「こんにちは!」」


声を揃えて一礼したのは、千秋と千鶴だ。


「グラビア・ミレニアムトリオのみんなが、こんなところで一体どうしたの?」

「……っ、私たちはそんな名前じゃないです!」


むっと頬を膨らませて抗議する千秋。


「私たち”千姫せんひめ”です! えーん」


隣で嘘泣きをしてみせる千鶴。


”グラビア・ミレニアムトリオ”とはファンたちがつけた通称であり、彼女たちのアイドルとしての正式なユニット名は”千姫”であった。


(いや……千姫ってなんか響きが古くさいから、グラビア・ミレニアムトリオの方がよっぽどいいのにな)


晴道は心の中でそう思った。

いや、思ったことをすぐに口に出してしまう彼の悪い癖が発動し、実際にはすべて声に出して喋っていた。


「もう、晴道お兄ちゃんってば! ぷんぷん!」

「いや、その“ぷんぷん”ってセリフ、本当に口に出して言うやつって千紗くらいだぞ……」

「これでも私たち、歌って踊れる王道アイドルなんですからね!」

「グラドルじゃないんですから!」


千秋と千鶴もぷりぷりと怒ってみせるが、その顔はどこか嬉しそうに赤らんでいる。


「ごめんごめん。でも、同じ事務所に所属していても中々会わないものだね。――改めて自己紹介させて貰うよ、小泉晴道です。

千紗とは母方の”はとこ”にあたって、子供の頃は同じマンションに住んでいたんだ」


劇中の設定もまた、現実の彼らの関係性に合わせたリアルなものになっていた。


「晴道お兄ちゃんは、私の初恋の相手なんだから!」

「晴道さんって、近くで見るとやっぱり格好いいな……」

「千紗がいつも自慢してたの、本当だったんだね」

「おいおい、全部聞こえてるぞ」


そんな、画面から甘酸っぱさが弾けるような微笑ましいやり取りから、第五話はスタートした。



しかし、駅前で出会ったのは単なる偶然であっても、彼女たちがこの街にいた理由は偶然ではなかった。

彼女たちは、これから入居するシェアハウスの手続きのために、マネージャーである千晴の元を訪れていたのだ。

駅のロータリーから、楽しげに談笑する四人の様子をじっと見つめる影があった。

千紗たちを迎えにきた、千晴その人である。


「私の“番”は、まだ……」


ぽつりと、誰に聞かせるでもなく呟き、四人の姿を見守る千晴。

だが、その横顔に宿る眼差しには、これまでのシーズンで千晴が演じてきた”主人公をそっと支える健気なキャラクター』には決して無かった、強い自らの意思と決心が乗っていた。

そのわずかな、しかし決定的な変化に、画面の前の多くの視聴者たちは無意識のうちに気づき、肌を粟立たせていた。

そしてそれは、モニターを見つめる監督たちも同様であった。



「千晴さん、完全に化けたっすね」


感嘆を隠せない様子で呟くシナリオライターに、監督は深く頷いて応じた。


「ああ。これだけのものを見せられたら、俺ももう、迷うことはない」


ライターは、少しからかうような笑みを浮かべて言葉を続ける。


「でも、千紗たち“も”魅力的すぎますよ?」

「いや、今の千晴の放つオーラなら大丈夫だ。もう結末ラストが揺らぐことはないさ」

「“結末は”ってことは……そこに至るまでの道のりは、また変えるってことっすね?」

「当然だろ。これだけ極上の素材が揃っているんだ、最大限に活かして暴れさせなきゃ損だ。それに俺はどれだけ無茶ぶりしても、お前なら完璧なシナリオに料理してくれるって信じてるからな」


監督はニヤリと悪戯っぽく笑う。


「はぁ……そこまで言われたら、乗るしかないじゃないっすか。それで、今日の変更点はどこっすか?」

「そうだな。千秋と千鶴の魅力が想像以上だ。彼女たちの出番をもっと増やしたい」

「了解っす。今回、役者を『芸能事務所・香織』のメンバーに絞っておいて本当に大正解っすね。

”早くから台本を配って、関係各所に根回しする必要がない”っすから。

それに、あいつら全員”柔軟にアドリブで対応してくれる”から本当に楽っすよ」



実は、今回のドラマの最終的な結末ラストがどうなるのかは、演じている役者たち本人にすら一切知らされていない。

監督よりプロットを聞かされているのは、代表の香織のみ。

み組の幹部にすら知らされていなかった。


つまり千紗たちは、先の見えないシナリオの暗闇の中で、純粋に「自分の魅力を一分一秒でも長く画面に焼き付け、晴道に選ばれるため」に、120%の本気でアタックを仕掛け、演技を競い合っているのだ。

たとえそれが物語フィクションの中の出来事であったとしても、絶対に晴道に選ばれたい。

少女たちの剥き出しの情熱こそが、このドラマを怪物級の傑作へと押し上げる、何よりの推進力となっていた。


次回予告


「現実をそのままトレースした設定の謎」


そこに込められた香織の思惑、

ドラマに込められた最大の罠とは。


「お前、完全にネットの考察記事に騙されてるよ」


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