【第18話-07】─ 番外編:芸能界編二期
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【Scene10:別れ】
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第四話は、第二話のラストシーンが再び流れる形で幕を開けた。
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「やあ由美子、久しぶりだね。――俺は、ようやく自分のことを許すことができたよ。だから今、俺には好きな人がいるんだ。周りには隠しているけれど、本当は付き合っている人がいるんだよ」
晴道が告げたその相手とは、当然、花音のことである。
ここから晴道と花音の甘い恋人生活が始まるのだと期待した視聴者もいたが、物語の展開は、多くのコアな視聴者が予感していた通りのビターな方向へと進んでいく。
画面には、晴道と花音のデートシーンが映し出される。しかし、どことなく物憂げで悲しげな花音の様子に、視聴者たちは胸をざわつかせ、気に病み始める。
そしてデートの終盤、ついに花音は哀しげな瞳で晴道へと告げたのだった。
「ねえ晴道。私、里に戻らなきゃいけなくなったの」
「えっ……それって……」
「母がね、身体を壊して伏せってしまったの。だから私が”霞の宿”の女将を継ぐことになったの」
花音の美しい目から、一粒の涙が静かに流れ落ちる。
その瞬間、テレビの前の多くの視聴者の目からも、同じように涙が溢れ出していた。
自分の頬が濡れて初めて、自分が泣いているのだと自覚するほどの没入感だった。
「そんなのってないです……! 俺、花音さんについていきます! 宿の経営でも何でも手伝います、下働きだって何だってやりますから……!!」
晴道の健気で熱い叫びに、視聴者たちはぐっと深く引き込まれていく。
しかし、花音は涙を流しながら、きっぱりと首を振った。
「駄目よ。あなたは大学院に残って、研究を続けなきゃ。……私の研究成果は、すべてあなたに引き継いだわ。私はね、自分の研究を、ただの自己満足にしか使ってこなかったの」
「そんなことないです! 花音さんの研究は世界的に認められました!」
晴道は必死に否定するが、花音はどこまでも冷静にそれを制した。
「それは単なる結果論よ。私は何もしていない。――でも、あなたなら、あの研究結果を本当の意味で”世界のため”に使えるわ」
それ以上、晴道は言葉を返すことができなかった。
花音はただ一言の別れを残し、静かに晴道の元を去っていった。
「俺、絶対に花音さんの研究結果を、もっと世界に認めさせます。文学を通じて、世界を繋げてみせます。きっとそれは、世界平和に貢献できるはずだから――」
そんな勇ましい誓いの言葉とは裏腹に、独り残された晴道は、深く、深く、失恋のどん底へと落ち込んでいくのだった。
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――撮影当日。
このあまりにも切ない別れのシーンは、出演者である花音のスケジュールの都合上、なんとクランクインして最初に行われた撮影だった。
「おいおい……これ、とんでもない大傑作になるんじゃないか?」
監督は、自分の目から溢れる涙を拭おうともせず、モニターを見つめたまま呟いた。
「本当っすね……。俺、自分で書いたシナリオで、これだけボロ泣きしたの初めてっす」
シナリオライターの男は、ハンカチを両手から手放せずにいた。
それは単にシナリオの理屈で泣いているのではない。
魂の根幹を直接揺さぶられたことによる、本能的な涙だった。
「お二人は泣けて羨ましいですよ。俺なんて、涙でファインダーが曇るのに、カメラから一瞬も目を離せないんだから……」
カメラマンはファインダーを必死でのぞき込み、溢れる涙を堪えながらフォーカスを合わせ続けていた。
「おい、これって本当に、途中で退場するヒロインのシーンか?」
「完全に物語のクライマックスの熱量っす。これを見せられたら、後半のシナリオを書き直したくなっちゃうっすよ」
スタッフ陣は、クランクイン初日にして最高到達点に達したかのような手応えに、大興奮で語り合っていた。
しかし、この時の二人はまだ何も知らなかった。
これから撮影が始まるアイドル三人組の熱量も、この花音に決して負けてはいないということを。
そして、これまでは「永遠の助演女優」のポジションに甘んじていた千晴が、今回のシーズンに限り、スタッフの想像を遥かに絶する「まったく違った演技」を見せることになるということを。
この時の撮影現場の誰もが、まだその先の、さらなる大狂乱の展開に気づいていなかった。
次回予告
「ドラマの感動を置き去りにする、リアルな現実の衝撃」
四年ぶりに二人きりとなったシェアハウスで、巨乳先生が少年に遺した『真実の約束』とは――
「ふふ、何言ってるの。いつだって会えるわよ?」




