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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow
【第18話】─ 番外編:芸能界編二期

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【第18話-05】─ 番外編:芸能界編二期


【Scene08:進路】



第三話が放映されると、視聴者はさらなる驚きに目を見開くこととなった。

前週の衝撃的なラスト

『本当は付き合っている人がいるんだよ』

そこから一体誰がキャストされ、どんな役柄で登場するのか。

ネット上では無数の予想が飛び交っていたが、実際に画面に現れたのは、誰もが予想し得なかった人物だった。


一ノ瀬花音


世界的に有名な考古学者であり、同時に、これまた世界的な知名度を誇る温泉宿『霞の宿』の若女将。

最近では大学講師も務めており、メディアへの露出も多い彼女は、ある種そこいらの大物タレントなどよりも遥かに名が知られた有名人だった。


作中劇のストーリーは、こうして動き出す。



晴道は高校三年の春を迎えていた。

役者としてのタレント活動を細々と続ける傍らで、彼は自身の進路に深く悩んでいた。

役者として身を立てるべきか、それとも学問の道に進むべきか。

葛藤の末、晴道が導き出した答えは「大学進学」だった。

その決意の裏には、高校入学前に出会ったある論文の存在があった。

英語の原文まで取り寄せて貪るように読んだ、あの日。晴道はその論文に対する自分なりの考察と感想をレポートにまとめ、日本の共同研究大学へと送付していた。

何かを期待したわけではない。

ただ、勉学への熱意を何らかの形で表明したかっただけだった。


しかし、そのささやかな行動こそが、晴道の運命を大きく変える人生の岐路となる。

なんと、大学側から返信が届いたのだ。


『君のように、熱意と才能に溢れる学生には、ぜひ我が校に来てほしい。失礼ながら高校にも問い合わせさせていただいたが、学力的にも全く問題ないと聞いている。

推薦枠を用意するので、もし君さえ良ければ、是非返事をくれたまえ』


差出人は、あの論文の共同研究者であり、大学の文学部長を務める高橋進教授だった。

晴道はすぐさま返信を綴る。


『ご連絡ありがとうございます。ぜひ高橋教授の元で学ばせてください』


こうして、晴道の進路は早々と決定したのだった。


その後、晴道は面接を兼ねて大学を訪れる。

とはいえ面接は名ばかりで、実際には顔合わせに近いものだった。

無事にそれを終えた放課後、高橋教授は晴道を誘う。


「小泉くんよ、夜はわしの家で一緒に夕食でもどうだ? 会わせたい者がいるんだ」

「わかりました、ありがとうございます。ぜひご一緒させてください」



ちなみに、この高橋教授を演じていたのは、高橋進本人であった。

見るからに素人丸出しの演技ではあったが、本物が醸し出す威厳と堂々とした立ち振る舞いは、視聴者からも概ね好意的に受け入れられていた。



高橋邸に到着した晴道。


「よく来てくれたわね、小泉さん」


そう言って笑顔でドアを開けたのは、千晴だった。


「えっ、千晴さん!?」

「えっ、晴道くん!?」


千晴は、晴道が所属する芸能事務所の敏腕マネージャーである。

女性タレント専門のため晴道の担当ではないが、顔なじみの間柄だった。


「えっと……紹介したい人って、千晴さんのことですか?」

「いや、違うんだがな。なんだ小泉くん、わしの娘の千晴にほの字なのか?」


進がニヤニヤとからかう。

しかし、晴道は生真面目な顔で返した。


「いえ、俺の好みは巨にゅ――」

ボコッ!

「痛ってぇ!!」


千晴の鋭いゲンコツが、晴道の言葉を最後まで言わせなかった。



この一連のシーンは、すぐさまネット上で大きな話題となった。

進の自然すぎるセリフに対する晴道のリアクション、そして千晴の容赦ないゲンコツは、台本ではなく『完全なアドリブとリアルな反応なのではないか』と、視聴者の間で検証班が立ち上がるほどの盛り上がりを見せる。



リビングへと通された晴道は、そこで一人のとんでもない巨乳美人と対面することになる。


「小泉くんよ、こちらが――」


進が紹介を始めようとした、その瞬間だった。


「一ノ瀬花音さんですよね! あの論文、本当に素晴らしかったです! 俺、貴女の論文に憧れて、この大学に通う決心をしました!」


晴道は身を乗り出し、勢い余って彼女の手をがっしりと握りしめていた。


「えっ、ええ……ありがとう……」


突然の熱烈なアプローチに、花音の頬がぽっと赤く染まる。



二人がこの瞬間に恋に落ちたことを、画面の前の視聴者は誰一人として疑わなかった。

そして、その微笑ましい光景を、どこか悲しげな瞳で見つめる千晴のアップが映し出されたとき、誰もが確信した。

『ああ……千晴は今回も、永遠の助演女優なんだな』と。



その後、二人が不器用ながらも恋に落ちていく様子が丁寧に描かれていった。

大学入学前から、二人は密かに逢瀬を重ねていく。

ただし、初々しい二人の関係はキス止まり。

晴道はそれ以上に踏み込むことができない。


そして、第二話の冒頭で流れた香織と由美子の晴道を救おうとするシーンが、まさにこの直後の時間軸であることを示唆しながら、第三話の本編は幕を閉じた。



ちなみに、作中での花音の演技力は完璧の一言だった。

【草】の基本技術である

『誰にでもなりきり、どこにでも溶け込む』

それが映像の芝居という形で見事に昇華されていた。

花音はまるで何十年もキャリアのあるベテラン俳優のように現場の空気に馴染み、その演技には【草】の人を魅了する技術が惜しげもなく注ぎ込まれていた。

視聴者の誰もが、画面の中の一ノ瀬花音というヒロインに魅了される。


話は変わるが、多くの連続ドラマがそうであるように、この『シェアハウス』シリーズも各話の物語ラストシーンからシームレスにエンディングが流れる始める仕様になっていた。

今回のシーズンでも、第一話ではオープニングが、第二話ではエンディングがそれぞれ定位置で流れていた。

しかし、この第三話に限っては、主要テロップが出た瞬間に唐突にCMへと突入した。


テレビに慣れた視聴者たちは、即座に察知する。

『CMの後に、まだ本編の続きがある!』

誰もがリモコンを置き、テレビの前から離れられなくなった。そしてその緊張感の中で、あの有名オーディオ会社のCM、そして「み組」のCMが鮮烈に流れ出す。


この瞬間の視聴率はとんでもない数値を記録していた。

後に報告を受けたオーディオ会社の会長は腰を抜かさんばかりに驚愕し、すべての仕掛け人である新倉南は静かにほくそ笑んだ。



CMが明けると、予想通りドラマの続きが始まった。

画面の隅に表示されたテロップは、第一話の少し前――晴道が大学を卒業する直前の年月を示している。

一通の手紙を手にし、曇り空を悲しげに見上げる花音。

そして、静かに流れ出したエンディングテーマは――なんと、哀愁漂う「演歌」だった。


完全オリジナルの新曲。歌うのはもちろん、一ノ瀬花音本人。

それは、抗えない運命によって引き裂かれる女の、悲しい未練を歌った曲だった。



その歌声を聴いた誰もが、これからの展開を予感せずにはいられなかった。

『晴道は花音と悲恋の別れを経験し、その傷を抱えたまま、千紗・千秋・千鶴と出会って再び恋に落ちるんだ』


さらに、シリーズの構成を熟知したコアな視聴者たちは、さらにその先を正しく予感する。

『別れに落ち込む晴道を、一番近くで支えて癒すのは千晴だ。それでも晴道が他の三人の誰かと結ばれるとき、千晴はまた笑顔で身を引くんだな……』


そしてエンディングの直後、画面には衝撃のインフォメーションが映し出された。

あの先行予約で爆発的な数値を叩き出している「ウェディング写真集」に、他の三人と同時に『花音バージョン』も発売され、本日より予約が開始されること。

さらに、今流れたエンディング演歌のシングルCDも発売されるという告知だった。


花音の魅力に完全にノックアウトされていた視聴者たちは、彼女の悲しい結末を予感しつつも、『写真集の予約数で最終的な結末ラストが変わるかもしれない』という一縷の望みをかけ、一斉に予約サイトを開く。

そこには、すでに千紗・千秋・千鶴の分を予約済みの人間も大勢含まれていた。


さらに、画面の中の花音が、若女将の着物姿で微笑みながら語りかける。



「私、一ノ瀬花音が歌うエンディング曲が発売になります。

CDに同梱されている応募券をお送りいただくと、抽選で10名様に、私が若女将を務めます『霞の宿』の本館宿泊券をプレゼントいたします。

さらに……なんと1名様には、本館特別室のプレミアム宿泊券が当たります。

皆様、ぜひ私に会いに来てくださいね」



『泊まれば、本当に花音に会えるかもしれない』

熱狂した視聴者たちは、複数枚のCD購入へと駆り立てられていく。


しかしその一方で、ふと冷静になった視聴者たちも現れ始めた。

『待てよ? 抽選を待つより、普通に金払って”霞の宿”を直で予約して泊まりに行った方が確実じゃね?』

その結果、予約サイトにはアクセスが殺到することとなる。


5年前、霞の宿と新倉南の父親の企業が締結したパートナーシップ提携は、現在「み組」へと引き継がれていた。

美由由美Webの運営実績による絶対的な信頼から、現在、霞の宿のすべての予約管理システムは「み組」が一元化して担っている。

殺到する予約、跳ね上がる宿泊費、CDの売上――そのすべての莫大なキャッシュフローが、「み組」のシステムを経由して流れ込んでいく。


それもまた、新倉南が描く「み組株式公開」という巨大なキャンバスの、精緻な布石の一枚に過ぎなかった。


次回予告

「週刊誌の暴挙を封じても、止まらないネットの噂」


み組はそれをどうやって封じ込めたのか。


「――信じるか信じないかは、あなた次第です」


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