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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow
【第17話】─ 番外編:芸能界編

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【第17話-11】─ 番外編:芸能界編

これはある人物の些細な行動の変化により

別世界線へと移ってしまった物語です。


5月末頃に掲載されていた

【第11話】エピソード1 ― シェアハウスで始まってしまった物語 ― 千晴

から分岐します



【Scene29:裏社会】



ここでは、表舞台の裏で静かに進行していた“もう一つの物語”を描こう。



大手芸能事務所の社長は苛立っていた。

せっかく主演として送り出した若手俳優が、実質的には脇役扱いになっている。


当然、TV局にクレームを入れる。

だが、返ってきたのは丁寧なだけの一言だった。


「申し訳ございませんが……スポンサー様の強いご要望でして」


社長は圧をかける。


「ならば俳優を引き上げさせてもらう」


TV局の答えは冷静だった。


「構いません。ただし、撮影済みの映像は契約上、弊社の所有物となります。その点だけお忘れなきよう」


完全に手詰まりだ。

社長はさらに強硬な策に出る。


「ならば、御社の他番組からも我が社のタレントを引き上げさせていただく」


だが、TV局の反応は変わらない。


「……はい、どうぞご自由に」


社長は違和感を覚える。

まるで、すべてを“先に知らされていた”かのような態度。


その“事前の通達”は、意外な人物からだった――

だが、何故かその言葉には、真実味があったという。



やがて、ドラマの放映が始まる。

撮影現場では、現在6話を撮影中。

方向転換できる“最終リミット”に迫っていた。


焦った社長はついに裏の手を使う。

チンピラを雇い、《み組》への嫌がらせを依頼したのだ。


だが――すべてが不発に終わる。


しかも、戻ってきたチンピラたちは青ざめていた。


「おっさん、俺たちに何させようとしたんだよ……

命がけになるなんて、聞いてねえぞ!」


そう言って、前金を叩き返してきた。



首をかしげる社長。

ついに“禁じ手”を使う。

弱小ヤクザの事務所に、直接“仕事”を頼んだのだ。


しかし――その結果が出る前に、ヤクザの事務所ごと“跡形もなく”消えていた。


完全に。

実に見事なまでに。



そして放映されたドラマは、話題沸騰。

だが――主演のはずだった若手俳優には、ほとんど注目が集まらなかった。


社長はさらなる焦りから、もっと大きなヤクザの組へ話を持ちかける。


応対したのは、なんと組長本人だった。


「……《み組》って組織、ご存知ですか?

最近、ちょっと調子に乗ってるんで……

“世間の怖さ”ってやつを教えてやってほしいんですよ」


そう告げた社長に、組長は唾を吐くように言った。


「……おいおい。

”み組”に手を出せなんて

うちの組を潰す気か?


俺らは社会の屑、汚ぇ手だって使う。

食い扶持になるなら容赦しねぇ。


……だがな、利害関係のない素人に暴力を振るうなんざ――仁義に反する。

とっとと帰りな」


社長は、青ざめて逃げ帰った。



その直後。

組長のもとに、一人の男が現れる。


「……これで良いのかい?」


「ありがとうございます、いい絵が撮れたました」


男はにこりと笑い続けた


「それより組長――最高でしたよ。

“利害関係のない素人に暴力を行うなんて、仁義に反する”――痺れました」


「よせやい。そんなもん、当然のことを言っただけだ」


「この映像、編集して使わせていただきますがよろしいですよね?」


「構わねぇ。好きに使いな、音声も変える必要はない」


組長は少し遠くを見つめながら、付け加えた。


「あそこにはな、うちで扱いきれなかった流れ者を引き取ってもらった恩がある。

それに今の頭は切れ者だ。

……抵抗しても無駄って、うちの幹部連中も理解してるよ」


「まったく同感です。

あの“姫様”の読みと判断力は――本当に恐ろしい」


そう言って微笑んだ男の名は”中田”。

美月と晴道を撮っていた、かつてのパパラッチである。


そして、組長の言う“流れ者”とは、斉藤のことだった。



翌日、オンライン版の週刊誌に“爆弾記事”が出る。


”大手芸能事務所、ヤクザに他事務所への嫌がらせを依頼”


記事には、音声と写真が添えられていた。



「……《み組》って組織、ご存知ですか?」

「最近、ちょっと調子に乗ってるんで……

“世間の怖さ”ってやつを教えてやってほしいんですよ」

「俺らは社会の屑、汚ぇ手だって使う。

食い扶持になるなら容赦しねぇ。

……だがな、利害関係のない素人に暴力を振るうなんざ――仁義に反する。

とっとと帰りな」


巧妙に編集されており、ヤクザ事務所に不利な内容は一切カットされていた。

だが、それと気づく者はいない。


社会は騒然となり、社長は警察に任意同行を求められる。

書類送検こそされなかったものの――“人気商売”において、それは致命傷だった。



社内では社長の退任が要求された。

そもそも、先代の息子というだけで社長になった“元・人気俳優”だった。

実力への信頼など、最初からなかったのだ。


元々ワンマン経営に嫌気がさしていたタレントは大勢いた

しかし移籍をすれば、その後の嫌がらせが怖かった。

その足枷が外れた瞬間。

多数のタレントが事務所を離脱。

大物俳優、人気グラビアアイドルまでが雪崩のように移籍を希望した。


しかもその中には――

香織がサロンで担当している芸能人たちも、少なからず含まれていた。


彼ら彼女らは言った。


「香織さんのもとで、やって行きたい」


香織は、全員を受け入れた。

信頼できるマネージャーごと。


《み組》は、すべてを用意していた。


こうして、大手芸能事務所は崩壊。

そして新倉南は香織を引き連れ、満を持して乗り込んだ。


「私ども株式会社み組は――

こちらの事務所を芸能事務所香織の下位組織として受け入れる準備があります。

もしよろしければ、これからもご一緒に――お仕事を続けていただけませんか?」


芸能事務所香織――

“業界の大手”となるのに、半年と少ししか、かからなかった。



最後にこの男で締めよう。


”中田勝行”


元パパラッチ。

斉藤に脅され、業界を引退し、今は細々とカメラマンとコンビニ勤務で食いつないでいた。


そんな彼の前に、新倉南が現れる。斉藤を伴って。


「中田さん。私共”み組”の――専属カメラマン兼ルポライターになっていただけませんか?」

「それって、どういう意味だい?」

「こちらから情報を提供します。貴方はルポとして世に出していただければ」

「なるほど」

「危ない橋を渡ることもあるでしょう。ですので弊社専属探偵・斉藤とコンビを組んでいただきます」


中田は直感した。

この男が、かつて自分を脅した“あの人物”だと。


だが、彼は笑って手を差し出した。


「……わかった。これからよろしく頼むぜ、相棒!」

「こちらこそ、よろしく」


こうして――奇妙なコンビが誕生した。



「なあ、新倉さん。なんで俺だったんだ?

あんた、俺みたいなの他にも潰してるんだろ?」


「貴方の名前、“中田勝行”ですよね?」

「あ、ああ」

「うちの代表も“中田”なんです。

その中田が“勝って行く”――縁起がいいじゃないですか。

それだけですよ?」


中田は思った。

名前の一致なんて、ただの偶然だ。


でも――

自分はこれを運命だと思おう。


そう決めた。


それから彼は、斉藤と共にヤクザ事務所への潜入取材や裏社会スクープを次々に成功させ、

”社会派ルポライター”として名を上げていく。


――彼は、新倉南の“手の届く範囲”に入ったのだ。


だから、幸せになれた。

彼女のもとで。


――それが、新倉南という女のやり方だった。



補遺――ある男の、その後


蛇足かもしれないが、

あの男の末路について、ひとつだけ記しておこう。



大手芸能事務所を追われた元社長は、

現在、新宿・歌舞伎町でホストをしているという。


年齢的には決して若くはない。

だが、かつて人気俳優だった面影と、

どこか影を帯びた雰囲気が、

当時のファンだった年配の女性たちの心を掴んだ。


指名は多くない。

だが、確実に、安定している。


――生きていくには、十分だった。



その追跡記事を書いたのは、言うまでもなく中田である。


見出しは刺激的ではなく、

文面も、どこか抑えられていた。


「過ちを犯した男」

「未遂に終わった判断」

「転落の末に選んだ、別の生き方」


糾弾でも、擁護でもない。

ただ事実を並べ、

“再起している”という一点だけを淡々と伝える記事だった。


それが、年配向けの婦人誌に掲載された。


かつて彼を愛した読者たちは、

ページをめくり、立ち止まり、

そして、静かに財布を開いた。


「今度は、私が支えてあげたい」


そう思わせるには、十分だった。



南に記事の最終確認をした時

中田は、ふと疑問を口にした。


「……なあ、南さん。

どうして、あんな奴まで救うんですか?」


新倉南は、少しだけ考える素振りを見せてから、

あっさりと答えた。


「未遂だったでしょう?」


中田は言葉を失う。


「それなら――

まだ、私の手の届く範囲よ」


それだけだった。



正義でもない。

慈悲でもない。

復讐でもない。


ただ、線を引く。


その線の内側にいる者は、救う。

外に出た者は、切り捨てる。


新倉南は、どこまでも、

自分の信念に忠実な女だった。



そして今日もまた、

彼女の“手の届く範囲”では、

誰かが静かに、生き延びている。


【至高のグランドフィナーレ!】

「虚構のドラマが映し出したのは、彼女たちが選び取った『本物の現実』!

選び合う世界を脱ぎ捨てた少年と少女たちが、永遠に続く愛の楽園へと辿り着く――」**

十月、ついに放映が始まったドラマは、日本中を巻き込む大ヒットを記録!

求められる役割を完璧に演じるあまり「永遠の助演女優」としての生き方を見出す千晴と、理屈抜きの存在感でトップグラビアへ駆け上がる千紗。

そしてラストシーン、ヒロイン・美月が自らの魂の答えとして監督に提案した「愛は、与え合うもの」という台詞は、そのままシェアハウスで生きる彼女たちの未来の誓いとなった。

数年後の未来、それぞれの場所で輝きながら、晴道という唯一無二の太陽を巡って回り続ける、優劣も順番もない無償の愛のループ。

ご都合主義のハーレムエンドと笑わば笑え、これこそが彼女たちの掴んだ至福の真実! 芸能界編、ここに堂々の完結!

「順番なんて、必要ない。ただ、そこに愛があるだけ。ずっと――永遠に。」

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