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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow


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【第10話-11】祝福と呪いのあいだで始まる物語-花音

霞の宿、到着。


旅の高揚感。

温泉。美食。再会。


――表向きは、ただそれだけのはずでした。


けれどこの場所は、偶然で物事が進む宿ではありません。

出会いも、配置も、部屋割りさえも。


そして晴道の中にある“それ”は、

ついに無視できない形で姿を現します。


憧れと恋の境界線。

祝福と呪いの正体。


この回は、その核心に一歩踏み込みます。


どうか、最後まで見届けてください。


【Scene04.4:到着】



2月23日


晴道たちを乗せた車は宿に着いた。

新別館前で車を降りると、女将の葉月が待っていた。


「氷室様、お久しぶりです。こちらへどうぞ」

優香たちは、新別館のフロントに通された。


「これ、本当に新築なのか?」

晴道が感嘆の声を漏らす。


「木造じゃないって話だけれども、築100年とか古い木造に見えちゃう」

千紗もその見た目に驚いた。


「お父さんの渾身作品なのよ」

──しかし実際は、優香自身も詳しいことはよくわかっていなかった。


「こちらの宿帳にご記帳をお願いいたします」

優香、千紗、晴道の順に名前を記す。


「優香様、お父様より『女の子2人の友達と来る』と伺っておりましたが……」

「えっ、あの、なんか、お父さん、勝手に、勘違いしてたみたいで……」


(だめだめこれは、手助けしないと)

晴道と千紗が同時にそう思った時──


「大丈夫です。私どもには守秘義務がありますので。宿泊された方の情報は、たとえご家族であっても口外いたしません」


その言葉に、晴道は胸をなで下ろし、千紗は小さくほっと笑った。

彼らが「ふぅ」と息をついた、まさにその瞬間──


「ただ、私は優香様のことを剛志様より『娘のことをよろしく頼む』と申しつかっております」

「あっ……」

優香は思わず声を漏らす。


「本来であれば、別部屋での宿泊をお願いしたいところなのですが……」

葉月はにっこりと微笑み続けた。


「それでは、せっかくの旅の思い出が台無しになりましょう。代わりに、一つだけお約束ください。

ご案内するお部屋には専用の露天風呂が付いております。通常であれば、どのようにお使いになっても我々が口出しすることはございません。

……ですが、先ほど申し上げたように、剛志様よりお預かりしている以上、混浴などは避けていただきたく存じます」


「わっ、判りました……」


優香は、誰の目にも明らかなほど、しょんぼりと肩を落とした。


それを見た葉月は、さらに続ける。


「ただし、私どもも就寝後まで傍にお付きするわけではございませんので……」


その一言に、晴道たちは再び息をつき、

葉月の配慮に対して、むしろ感謝すら抱いていた。


──それは譲歩のように見せかけた、完璧な誘導だった。

一度、厳しさを見せ、次に擁護の姿勢を示し、そして最後に“味方”であるかのような印象を与える。

葉月は“草”の前首──高校生が太刀打ちできる相手ではない。


こうして千紗・優香と晴道は、自然な形で分断された。

その間に、花音か美由が晴道へ接触する手筈──すでにすべては仕組まれていたのである。



「小泉様、如月様──申し遅れました。

私はこの霞の宿の女将を務めさせていただいております、一ノ瀬葉月と申します」


葉月は深く一礼した。

そして、先ほどから隣に控えていた、どこか葉月に似た若い女性に目を向ける。

晴道たちは「姉妹かな?」と心の中で思っていたが、次の言葉に驚かされる。


「娘の花音です。若女将を務めております」

「お客様、このたびは当旅館をご利用いただきありがとうございます。

私、花音がこの三日間、お世話をさせていただきます」


晴道はどこかで見覚えのある顔だと感じていた。

「あっ、テレビでお父さんと一緒に出てた人!」

優香の声に、晴道は納得してしまった

晴道の記憶はそれでは無かったのに。


三人は花音に案内され、部屋へと向かった。



部屋は、かつて優香の両親も泊まったという最上位グレードの一室だった。


「先ほどの女将からもお願いがありましたが、混浴はご遠慮いただけますように。

そのため、隣の部屋を確保いたしました。

小泉様はこちらの露天風呂を、優香様と如月様は隣の露天風呂をご利用ください」


花音は、剛志と優香を区別するためか、優香だけを名で呼んでいた。

それに気づいた晴道が口を開く。


「あっ、俺も下の名前で呼んでください」

「私もです」

千紗も続いた。

「“様”もいらないです」


「わかりました。

晴道くん、千紗ちゃん──よろしくね」


花音の微笑みは柔らかかった。


──自分から名前呼びを“希望させる”。

それは宿側の仕掛けられた演出。

“警戒心を解くための”計算された一手だった。


けれど、最後の笑顔だけは、花音自身も気づかぬほど自然で、心の底からのものだった。

その無垢な表情が、晴道たちに親しみを抱かせ、

彼らはこの状況の“異常さ”に気づくことができなかった。



霞の宿──。


いまや世界中から注目を集める存在。

新別館が正式オープンして三ヶ月。

当初ほどの熱狂は落ち着いたものの、いまだ予約は抽選制。

平日でも倍率は数十倍、休日ともなれば百倍ではきかない。


そんな部屋を、急にもう一室用意できるはずがない。

つまり、これは──最初から準備されていたということだ。


ちなみに四月以降の予約は、十二部屋のうち

抽選予約四室、先着予約四室、そして常連確保の四室(電話予約限定)という構成になる予定だった。



部屋でひと息ついたところで、花音が切り出した。


「お茶を淹れますね」


香り高い茶葉と、上品な和菓子。

その穏やかなひとときに、晴道たちはようやく肩の力を抜いた。


「宿帳を拝見いたしました。

皆さん、同じマンションにお住まいなのですね。幼なじみなのですか?」


花音の問いは、あくまで自然。

──だが、すでに下調べは済んでいる。

これもまた、懐に入り込むための話術だった。


「はい。私と優香は生まれたときから一緒で、

少しあとに、小学校に上がる前から晴道も加わったんです」

千紗が答える。


「それからずっと、三人一緒なんです」

優香が続いた。


「そうですか……羨ましいですね」

花音は少し遠くを見るようにして言った。


「私が生まれた頃、この宿の経営はまだ小規模で、従業員も足りず……

家族は私の相手をする時間もありませんでした。

だから私は幼稚園へは通わず、小中一貫の全寮制の学校で育ったんです」


──実際には、“草”としての修行のためだった。

だが、そんなことを口にするはずもない。


「先ほどお迎えに伺った美由と由美、あの二人は私と同い年で、実家もこの近所なんです。

でも、私が彼女たちと出会ったのは、彼女たちがここに就職してから。

普通の生活をしていれば、きっと幼なじみだったでしょうね」


「そうなんですか……今は美由さんや由美さんとは?」

晴道が尋ねる。


「ええ。今は仕事仲間としてだけでなく、親友としても仲良くしています」


「よかったですね」

千紗が小さくつぶやいた。


「同じ人を好きになったりもしましたよ」


「えっ、そうなんですか!」

優香が身を乗り出す。


「あなたたちと同じようにね」

花音は軽くウインクをする。


「それって、和也さんのことですか?」

千紗が尋ねた。


「ああ、夏にプールで美由と出会ったって話、してましたね」

花音が思い出したように言う。

これも仕込み


「それで、その和也さんとは今はどうなってるんですか?」

優香がさらに踏み込む。


「美由の勝ちね。

私は身を引いたというか……最後の最後で、本気になれなかったの」


「そうなんですか……」

千紗には“本気になれない”という感覚が理解できなかった。


「どんな出会いだったんですか?」

優香は興味津々で問いかける。


晴道がそろそろ止めに入ろうかと思ったとき、花音が軽く笑った。


「その話は、今の当事者──美由に聞いてみて。

入浴の準備をして、隣の部屋で待ってるわ」


「そうね。優香、そろそろ温泉入りたいし、行こっか」

「うん、賛成!」


二人は着替えを手に取り、笑いながら部屋を出ていった。



千紗と優香が部屋を出ると、仲居姿の美由が待っていた。


「美由さん、ずっと待ってたんですか? お待たせしちゃいました?」

千紗の問いかけに、美由はやわらかく首を振った。


「いえ、私も着替えて隣の部屋でお二人の入浴の準備をして、今出てきたところです」


──確かに“今出てきた”のは本当だった。

だが、まるで偶然のように見せたそのタイミングは、完全な計算だった。

美由は壁越しに四人のやり取りを観察し、二人が出てくる“ちょうどその瞬間”に部屋を出たのだ。


まるで透視能力でも持っているかのように。

もはや人の技ではない


「美由さん、着物姿もすごく素敵です!」

優香が目を輝かせて言う。だが、さっき見たあの巨乳はいったいどこに……? と、内心で首をかしげていた。


「少し、お部屋でお話ししませんか?」

千紗の誘いに、美由はにこやかにうなずいた。


「はい。立ち話もなんですし──どうぞ、こちらへ」



部屋には晴道と花音が残されていた。


「晴道くんも、温泉に入られますか?」


「いや……あの二人が入り出すと長くなるから、俺はもう少ししてからにします」


「そうですか。それじゃあ、もう少しお話ししませんか?」


──それは“探り”ではなく、自然とこぼれた言葉だった。

花音自身も気づかぬまま、彼のことをもっと知りたいと思っていた。


「晴道くんは、高校三年生ですよね。進路は、どうなさったんですか?」


通常、宿の者が客のプライベートに踏み込むことはない。

だがこれは任務なのか、あるいは──ただの好奇心なのか、花音自身も答えを持っていなかった。


「東京の大学に進学します。……三人とも、同じ大学なんです」


「まあ、そうなんですね。どこの大学なのですか?」


大学名を聞いた瞬間、花音の目が見開かれた。


「えっ……あっ、そうなんですね!」

思わず大きな声が出る。


「どうかしましたか?」


「あ、ごめんなさい。実は……私も、短い間でしたが、その大学に在籍していたんです」


「短い間……?」


思わず聞き返したものの、晴道はすぐに後悔した。

(聞いてはいけない話題だったかも……)

だが、花音はその戸惑いを正確に読み取り、静かに微笑んだ。


──優しい子なんだな。

そう思った瞬間、自分の胸の高鳴りに花音は初めて気づいた。


「大丈夫ですよ。退学とかではありません。

私は本来、アメリカの大学に在籍していて、日米共同研究の関係で一時的に編入していたんです」


(アメリカの大学、共同研究……)

晴道の中で、なにかが引っかかる。だが──目の前の花音に意識が引き寄せられていく。

その感情はすでに“ただの憧れ”を超え、無自覚に恋へと変わりつつあった。



そのころ隣室では──


優香が懸命に美由から“恋バナ”を引き出そうと躍起になっていたが、

千紗が要所で釘を刺し、なかなか思うように進まない。


そんな中、優香が思いもよらぬ提案をする。


「ねえ、美由さん、一緒に温泉入りません?」


──さっきの巨乳の謎、確認したい……。

そんな好奇心が優香を突き動かしていた。


「さすがに、それは……」


「もう、優香、美由さんを困らせないの。……二人で入ろ」


千紗がぴしゃりと言って、脱衣所へと向かう。


「では念のため、若女将に確認してまいりますね」


美由はそう言い残すと、二人が移動したのを見届け、静かに部屋を後にした。



晴道はふと、聞いてみた。


「高橋教授って、ご存じですか?」


「ええ、よく知っています」


「俺、高校一年のときに──

”Genealogical Variants in Literary Manuscripts: A Bioinformatic Approach to Scribal Lineage Reconstruction”って論文を読んだんです。

AIを使って古文写本の系統を解き明かす研究で、すごくワクワクして──考古学が大好きになったんです」


「まあ、そうなの」


晴道が熱を込めて語るその横で、花音の表情が徐々に緩み、嬉しそうな笑みが浮かんでいた。


「その論文の共同研究者が高橋教授で──だから、その授業を受けたくて、その大学に」


「……でも、筆者の方は“アメリカの大学に所属していて”、いまは研究から退かれているって聞いて……」


「失礼します」


扉を開けた美由の声が、現実を引き戻す。


──だが、晴道の思考はそこで止まっていた。


「……“一ノ瀬花音”さん。あの論文の研究者……?」


花音は静かにうなずく。


「ええ。その長いタイトル、原文で読んでくださったのですね」


「なんで……なんで気づかなかったんだ、俺……」


晴道の言葉が震える。


「俺──あなたに憧れて、考古学の道を選んだんです。

あなたのことが……好きです!!」


──本当は、「あなたに憧れています」と言うつもりだった。

けれど、それでは足りなかった。

心の奥底からあふれた感情が、そのまま言葉になってしまった。


つい先日、由美子に告げたときと同じように──

そして、やはり同じように“それ”が来た。


「ガッ──」


晴道が胸を押さえて苦悶の表情を浮かべる。


「いけない!」


美由がすぐさま“気”を飛ばす。

それは和也の技を見よう見まねで模したものだっので、威力は劣り、黒い気の進行をわずかに遅らせるだけだった。


「晴道!」


花音が叫び、彼に深く口づけをする。

“気”の交換──それは命を繋ぐ術。


やがて、晴道の表情が穏やかさを取り戻す。


だがその瞬間、黒い気は今度は花音を襲う。


『一ノ瀬花音──霞の里の“草の首”を、なめるな!』


花音はそのまま、己の“気”を最大限に解放した。


──次の瞬間、黒い気は周囲の空間ごと押し返され、霧散した。



「あれは……いったい、なんだったの?」


美由がぽつりとつぶやいた。


「──呪いよ。」


花音は静かに答え、胸に手を当てる。


「私に移ってきた“気”が、はっきりと訴えかけてきたの。

『人を愛するな。お前にその資格はない』

『諦めろ。お前は人を傷つけてきた。愛してはいけない』

……そんな声が、頭の中に響いたの。」


その表情は、恐れよりも哀しみに近かった。

花音の脳裏に、数年前──高倉南が和也に施した禁術の記憶がよみがえる。


「いったい誰が?」

花音が呟く


「……晴道くん本人よ。」


美由の言葉に、花音は目を見開いた。


「え?」


「私には“気”の色で、誰のものかが分かるの。

さっき彼の中からせり上がってきたのは、濁ってはいたけれど──まぎれもなく晴道くん自身の気だった。」


花音は息を呑んだ。


「晴道が……自分で、自分を……?」


「何があったのかはわからない。けれど──彼は自分に“人を愛すること”を禁じたの。

その禁忌が、血筋の力と結びついて呪いへと変わり、彼を縛っている。」


「だったら……それは、一ノ瀬家の業。私たちの責任よ。」


「そうかもね。」


美由がふっと笑い、わざと口調を軽くした。


「ところで──いつの間に“晴道”呼び?

それに、“好きです!”って告白まで受けてたじゃない。」


花音は一瞬だけむっとしたが、美由の意図を悟る。

この空気を和ませようとしてくれているのだ。


「ありがとう。……私、房中術を使ってみるわ。呪いを解けるかもしれない。

千紗ちゃんと優香ちゃんが戻らないよう、少し時間を稼いでくれる?」


「もう、さらっと言うんだから……。でも、二人ならとっくに温泉に浸かってる頃よ。」


「助かるわ。お願いね。」


「その代わり、あの子たちに、あなたの恥ずかしい話、二つ三つ……いや、いくつでも話してしまおうかしら。」


「お、お手柔らかにね……。」


軽口を交わし、美由は隣室へ戻っていった。



【Scene04.5:救済】



花音は振り返り、静かに呟いた。


「晴道……私が助けてあげる。」


部屋の鍵を掛け、布団を敷く。

そして自らの衣を脱ぎ、日の光の中、白い肌をさらした。


「晴道、大丈夫?」


布団に寝かせた彼の頬に触れると、晴道がゆっくりと目を開けた。


「えっ、あの……俺、どうしたんですか?」


「突然倒れたのよ。」


「って、花音さん……裸っ!?」


晴道は慌てて両手で顔を覆う。

だが、指の隙間から覗く視線が、正直すぎておかしかった。


「あなたは倒れたの。──“私に告白した”直後に。」


「そっか……また、やっちゃったんだな。」


晴道の顔に、深い影が差した。


「自覚、あるのね?」


花音が優しく問うと、晴道は小さくうなずく。


「うん。いろいろあって……俺、自分には“人を好きになる資格なんてない”って、思い込んじゃってる。

友達たちが、千紗が、“そんなことない”って言ってくれたのに……。

それでも誰かに想いを伝えようとすると──」


「胸が締めつけられるように苦しくなるのね。」


「……うん。」


「晴道は、つらいのね。」


その言葉に、彼は小さく息を呑んだ。


花音は静かに微笑んだ。


「なら、私が解いてあげる。──きっとできると思うの。」


「……本当ですか?」


「ええ。だから、私に任せて。」


そのまま花音は彼に唇を重ねた。

ゆっくりと、確かめるように。


憧れの人。その柔らかい体温。

晴道の心拍が一気に跳ね上がった。


花音の肌は、日の光に負けないほどに輝いていた。

それはあまりに美しく、現実味がなかった。


そして気づけば──自分の服はもう脱がされていた。


(あの時も……由美子のキスで、苦しみが消えた。

人を愛することで、もしかしたらこの呪いを越えられるかもしれない。)


そう思った瞬間、晴道は迷いを捨てた。

花音を抱きしめ、唇を重ね返す。


「あっ……」


花音の声が漏れる。

その一瞬の息づかいで、晴道は理性を失った


二人は深く結ばれる

そして花音は確信した。


──これは、房中術を使える者同士の交わり。

和也のときと同じ、“気”を循環させる感覚。


(この子には……それだけの力がある。)


しかし、最後の寸前の所で晴道に理性が戻った


(……ダメ。これでは気が混ざりきらない。

完全に受け止めなければ、彼の呪いは解けない。)


花音は唇を噛み、決意する。


(彼をもっと深く狂わせる。

彼の心の奥底に、私を刻みつける。

その時こそ──彼を救える。)


そしてもう一度、彼の頬に触れる。


(その時こそ、私は彼に“本当の意味で”愛してもらえる。)


荒い息を整えながら、花音はひとり、覚悟を固めた。


その決意こそが、彼女の長く果てしない“愛の道”の始まりだった。



「湯に入った方がいいわ。」


花音の声に、晴道はふと我に返った。

(やっちゃった……)

胸の奥に、重い自己嫌悪が広がる。


「ふふ、大丈夫よ。千紗ちゃんと優香ちゃんには、内緒にしておいてあげる。」


「いや、そういう意味じゃ……」

顔を伏せる晴道の表情は暗かった。


(優香、千紗、由美子……そして花音さん。

もう四人目だ。

誰にもちゃんと告白もしていないし、付き合ってくださいとも言っていない。

俺って──最低だ。)


「駄目よ。そんなふうに自分を思ったら。」


「えっ……俺、声に出してた?」


「わかるのよ。あなたを愛しているから。」


花音は晴道の頭を、自分の胸に抱き寄せた。

その柔らかさと体温が、罪悪感と痛みを溶かしていく。


「花音さん……ありがとう。」

くぐもった声は胸の奥に埋もれたが、花音にはしっかり届いていた。


「ううん、こちらこそありがとう。

私のことを“好きです”って言ってくれて。」


晴道は花音の胸の中で、小さく頷いた。



花音は晴道を連れて内風呂へと向かう。

それぞれシャワーを浴び、晴道を湯に浸からせてから、

花音は静かに部屋へ戻った。


着物を着直し、美由との約束どおり、気による合図を送る。



ついに――

ヒロイン三人、そろい踏みです。


千紗。

優香。

花音。


タイプはまったく違う三人。

あなたは、誰が好きですか?


名前だけでも構いません。

ぜひ感想欄で教えてください。


そして物語はさらに加速します。


呪いの正体。

晴道の力。

花音の覚悟。


霞の宿編、ここからが本番です。



次回、

温泉で時間を稼ぐ美由。

和装ブラの秘密。

入れ替わる“素”と“演技”。


そして廊下で交わされる、花音と美由の本音。


晴道の力。

千紗の真似。

梨子という存在。


ライバル、多すぎ問題。


だが花音はまだ知らない。

さらに強力な存在が、水面下で動いていることを。


舞台裏が明かされます。

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