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一騎討ち

「こういうのを棚から牡丹餅っていうのかもしれねえな」


 銅鑼が響いたと思うと敵がサーッと二つに分かれ、中央から大将がゆっくりとした足取りで向かって来やがる。


 そして俺から数mの位置で止まり、肩にかけていたハルバードを地面に下ろした。


 全長2m、刃の肉厚が5cmあるそれは軽い振動と土煙を辺りに吐き出す。


 あれをまともに食らったら如何に俺でも無事で済まないな。


 フルスイングでもらうと鎧ごと胴が両断されちまいそうだ。


「アッパレぞ! クロス将軍!」


 声高らかに褒め称えてくるベルフェルド。


「貴公の活躍は歴戦のわしから見ても目を見張るものがある!」


 ほう、ラブレサック教国軍の大将が俺を認めるのか。


 そりゃあ嬉しいねえ。


「身に余る言葉誠に恐れ入る!」


 俺は返礼として声を張り上げる。


「歴戦の勇士とされるベルフェルド将軍からそのような言葉を頂けるとは騎士として誇り高い!」


「おお! そうかそうか!」


 俺の言葉にベルフェルドは深く頷きながら。


「わしはそなたのような騎士が異端者の下で散って地獄に堕ちることが誠に惜しい! ゆえにそなたら一門我らに降らぬか? 今ならまだ救いがあるぞ!」


「その言葉! 非常にありがたい! しかし! 私は騎士! 主君の下で果てることが最大の喜び!」


「なるほど! さすがわしが認めた騎士! その忠誠心は恐れ入る!」


 実際は一度命令違反を起こしているんだけどな。


 まあ、それは今関係ねえか。


 俺は血塗られた獅子の剣を掲げる。


「ここから先は言葉など無用! 後は剣で語り合おうではないか!」


「おお! その通りだ!」


 ベルフェルドは喜々として応えたのを見た俺は両足に力を込めて一直線に向かった。




 ガアアアアアン!


「素晴らしい! 素晴らしいぞクロス将軍!」


 もう何十合目かになるか分からねえぐらいの打ち合いの後、ベルフェルドは感心したように謳い上げる。


「まさかわしと渡り合うほどの猛者と出会えるとは思わなかった!」


「……お褒め頂き光栄だね」


 俺は疲労を隠すためにニヤリと笑う。


 この化け物め。


 あれだけ長大な物を振り回しているのに疲れのつも見せないとはどういうことだ?


 まさか全回復は睡眠や疲労などにも効果があるというわけじゃないだろうな。


 もしそうならマジで反則だぜ。


「クロス将軍! 何をボケッとしておる!」


「っ!」


 気が付けばベルフェルドが大ぶりの一撃を放とうとしている。


 あれを喰らうわけにはいかねえのでおれは楯を斜めに構えてその斬撃を受け流す。


「お?」


 ベルフェルドの体が泳いだその瞬間を狙って俺は剣で薙ぎ払うのだが。


「ワハハハハハハ! 効かぬ効かぬ!」


 剣で斬り裂いた箇所がリアルタイムで修復していく様子を見るだけで終わる。


「やはり小手先の攻撃じゃあ駄目か」


 相手の隙を狙って徐々に痛めつけていく定石通りの戦法は無意味だということを知る。


 捨て身の一撃。


 乾坤一擲。


 防御を捨て、相手と刺し違えるつもりで攻撃しなきゃあ勝ち目がねえ。


「……やるしかねえか」


 俺はそう呟いて気合いを入れ直した。


「クロス将軍よ! どういうつもりだ!?」


 ベルフェルドが驚くのも無理はねえな。


 何せ俺は楯を捨て、獅子の剣を大上段に構えているのだから。


 全回復を持つベルフェルドに勝つには1つの方法しかねえ。


 すなわち、ベルフェルドの攻撃を受け切った後、一撃の下に即死させること。


「クロス将軍、そんな無謀な賭けで命を散らすつもりか?」


 確かにその通りかもな。


 ベルフェルドの攻撃によって鎧が真っ二つになる可能性が高い。


 よしんば耐え切ったとしてもベルフェルドが一撃で死ぬ保証もない。


 分が悪すぎる。


 勝つ可能性はコンマ以下だろうな。


 しかし、おれはあえてやる。


 ユウキとサラが作ったこの剣と鎧を信じる。


 今、ここでベルフェルドを倒すことによってジグサリアス王国の偉大さを証明する。


「来い! ベルフェルド将軍!」


 俺は無防備な脇腹を晒し出したまま挑発する。


「ラブレサック教が正しいと言い切るのなら! この俺を倒して見せよ!」


「……クックック、クハハハハハハ! アーッハッハッハッハッハ!」


 ベルフェルドは突然狂ったように高笑いを始める。


 その様子に俺達を取り囲んでいる両軍がざわめき始めるが、ベルフェルドは構わず笑い続ける。


「その心意気や良し!」


 次の瞬間、ベルフェルドは鬼気迫る表情に変貌してハルバードを構える。


「わしの名はラブレサック教国軍総大将ベルフェルド=ラードビッツ! 金獅子騎士団団長クロス=ダイアモンド=カザクラよ! わしに倒されたことを誇りに主の元へ旅立つが良い!」

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