↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/103

93話 人生の詠唱

「街か………!」


「バーザール様!私を気にせず、止めに行ってください!見ての通り、先ほどの襲撃でボタンが壊れてしまったので……ゲライウスたちは、このことに気がついていません!」


 ラナリリスが言葉を言い終わるや否や、俺は地面を蹴って真っ暗な空へと飛び立った。

 背後に俺が灯した火の明るさを感じながら、急いで街の方へと飛んでいく……!


 ラナリリスを襲った奴らがゲライウスを殺したとなれば…1番大変な時期である今、混乱が起きる。

 そんな状態じゃ、忌避(キケズ)を倒すなんて夢のまた夢だ。そいつらが市民に手を出さないとも言い切れない。


「間に合え……っ!」


 街の入り口が見えた瞬間、黒い影が二つ、民家の隙間に滑り込んでいくのが見えた。

 全体重をかけて刀で押しつぶす…のは流石にまずいだろう。すぐ近くには民家がたくさんある。衝撃で壊れたら、元も子もないからな。

 俺は空中で構えながら落下の勢いをすべてスピードに乗せ、その片方に奇襲をかける。


「うわっ?!ぐああああ!!!!」


 俺は見事に、片方を捕まえて空中に持ってくることに成功した。そのまま俺は刀を抜き、迅速に始末する。

 俺の刀の直撃を食らった一人目の黒服は、何が起きたのかも理解できないまま悲鳴と共に死んでいった。



「まずは1人。あと、一人……!」


 宙に舞い散る血飛沫の中から、即座に視線を巡らせる。

 だが、もう一人の姿がない……?逃げられた?クソっ、仕留め損ねたか……


 そう。残る一人は、バーザールの規格外の戦闘力と一撃の威力を間近で見て、正面から戦うのは不可能だと瞬時に判断したのだった。


 よく考えろ。この状況、俺だったらどうする?俺がいるせいで、ゲライウスを狙うのは不可能。となると、残るは……


「ラナリリス…?!」


 彼女のところなら、まだ護衛がまわっていないと考えるのが妥当だ。

 先ほど攻撃方法を一通り見た手負いの女性と、空を飛び仲間を瞬時に殺した不気味すぎる男性。

 どう考えても女性の方を敵にした方が、勝ち筋は高いと考えるはず…


 心なしか、撮り逃した黒服の気配はすでに街の外、闇が広がる不気味な森の方へと向かっているような気がした。


「チッ、逃がすか!」


 バーザールは森へ向けて飛んでいった。ドラゴンの目を限界まで見開き、人が通っている痕跡を最新の注意を払って探す。

 しかし、どれだけ目を凝らしても、どれだけ深く森へ入っても、敵の姿が全く見つからない……完全に気配を絶ち、森の闇と同化している。まるで最初から誰もいなかったかのようだ。

 クソ、どこだ……?!こんな時に限って、キュラゴクスへの脳対話も通らない!


 焦りが、俺の胸を締め付けていった。時間が経てば経つほど、状況は悪化していく…


「おい、バーザール!そんなところで何をしている!!」


「キュラゴクス…!」


 俺が焦っていると、目の前に爆速で走っていたキュラゴクスが現れた。俺がサボっていると思っているのか、相当の怒りと焦りが顔に現れている。


「1人は倒せた。だけど、残りの1人を仕留めきれなくて……俺の予想だと、おそらくラナリリスの方に向かっていっているんだ」


「ラナリリスの方か…!ラナリリスの元にいれば、いずれは奴に出会えるんじゃないのか?」


「今俺が居場所を感知できていない時点で、近くに来てもわからない。それどころか、俺たちが気がつく前に俺たちを見て逃げる可能性だってある。決戦前にそんな不確定要素が放っておかれるのは避けたいだろ」


 俺の意見を聞いたキュラゴクスは、何かを決めたようにこちらを見た。


「……わかった。この近くで、1番高いところに連れていってくれ。それと、ラナリリスをこっちに連れてくる。最後に、弓だ。弓は、作れるか?」


「槍ならいけるけど……試してみる」


 弓……弓。頑丈で壊れず、よく飛び、使いやすく、何よりキュラゴクスの手に馴染むような弓……

 俺が即座に想像してみると、俺の手には即座にその弓が生まれた。


「……うん、申し分ない。それと、槍ももらえるか?」


「ああ、これを…俺はお前を塔の上に連れていったあとに、ラナリリスを避難させればいいんだな?」


「ああ。迅速に頼む」


 俺は即座に転移魔法を発動し、キュラゴクスを塔の部屋に送った。そこから飛び上がり、屋上へ運んでいく。

 キュラゴクスが着地したのをみると、俺は発射許可を出した。弓を弾き始めるのを見て、ラナリリスの元へと急ぐ。


「バーザール様…?なぜ、ここに?2人とも、倒せたのですか?」


「いや、あと1人残ってる。そいつは、おそらくこの近くにいるんだ。だからラナリリス、しっかり捕まっていてくれ。転移で逃げる!」


「転移…?バーザール様なら……」


「とにかく急いで!」


 俺の声に押され、ラナリリスは俺へとボディタッチしてきた。彼女の手を掴み、転移…!

 無事、発車される前に安全に転移をさせられた。



「遅かったぞ。もし俺が打っていたら、やつだけじゃなくバーザールやラナリリスまで…まあ、こういうのはいいか。あそこに、誰もいないな?」


「ああ。確認した、誰もいない」


「わかった………」


 俺に確認をとったキュラゴクスは、弓に槍をつがえて深呼吸をした。槍を、矢に…?!




   「Three million lives, three million deaths.

    All returns to nothing, all ends in vain.

    Four heroes stand here to pierce it through...」


 キュラゴクスの体から、計り知れないほど高密度で、冷徹な魔気が爆発的に吹き荒れ始めていく。

 それとともに、彼の手にある槍がその光を吸い込み無数の光の帯を漂わせていた。


   「――Our lives,begin here!!!」


 キュラゴクスは詠唱を完全に終え、槍を掴む手を手放した。一瞬だけ、森が固まったように見えた。途端に槍はどんどん森へと突き進んでいき……

 壮大な爆発が、森で起こった。音波が迫ってくる…!俺は咄嗟に耳を塞いでみる。

 だが、音波は来なかった。何故だかは知らないが、音波は街だけを遠ざけて広がっていく。


「流石に、これで殺せただろう」


「………………すげえ……」


 俺はただ、すごいの一言しか出なかった。俺が先ほどの戦いで撃っていたものよりかは、強く感じてしまったのだ。


「久しぶりに使ったが……腕は衰えていないようで良かった。槍、ありがとうな」


 ………ん?今、魔気を使用していなかったか?


「そういえばキュラゴクス、魔気を扱えたんだ…」


「使えないと言っていたか?使えないわけではないが……あいにく0と100しか操作が効かないもんでな。こうやって一気に消費する方法でしか使えないんだ」


 そう言って、キュラゴクスは弓を背中に装着した。意外と、弓も似合っているな…

 って、そうじゃない。前線に戻らなければ。


「………だけど、あの様子じゃ、黒服の死体を確認しに行く必要もなさそうだな…」


「焼けて、灰すらも残っていないだろう。それよりも、寄生人間だ。この間に、迫ってきていないことを祈るばかりだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。