90話 唐突な消滅
「なんで、こんなに早く次の波が来るんだよ!!」
「知らねえよ!!そんなこと言ってないで、きちんと前見ろ!殺されるぞ!!」
目下では焦りに焦っている兵たちが、再び急いで障壁を築こうとしている。ラナリリスたちは、俺のことを見るなり前線へかけていった。
やはり、おかしい!!!絶対に、これほどの量はいなかったはずだ!
(全知王!!寄生体による寄生は、聖なる領域で対処できるか!?)
〈………寄生はいわゆる「今、殺されている状況」を指します。対抗はできますが、対処はできません。完全なる排除には、火弾が必要です。〉
クソ…!!
「2人とも!!俺も共に戦う!」
「………バーザールは!!魔気を貯めてくれれば…それでいい!!技を使ったら!それこそ貯まるのが遅くなる!!」
「そんなことを言っている場合じゃないだろ!!死人が出るぞ!」
「お前がここに来たところで…何も変わらない!!ここにいるやつはみんな、死を覚悟してやってんだ!」
「バーザール様は、自分の役割を……しっかり、果たしてください!誰かが死んでも、それはバーザール様のせいでも……誰のせいでもありません!」
「……わかってる!だが、お前がそう言うから……俺は、ますます迷うんだ。責任は、必ず誰かが背負わなきゃいけない!」
「責任なんて、必要になったら取ればいい!!今はまだ、その時じゃない!!」
まだ、希望はある。誰も死なずに、この戦いを乗り越える…!
そういう願いが、キュラゴクスからは伝わった。
「…………分かった…それなら今すぐに退避してくれ!こうやって話している間に、第一弾が撃てるようになった!」
俺は両手に魔気を込めて、準備をする。
「だが…前線の兵はまだ退避できない。もう少し待っていてくれないか?!
「いいえ。後方にいる寄生人間たちに撃ってもらいましょう!それが無駄なく、有効に活用できます。オーバーキルになったら、魔気が無駄ですから!」
「それじゃあ、いくぞ!調整はするが、もしかしたらそっちにまで衝撃波がいくかもしれない……その時は、耐えてくれ」
「ああ、まかせろ!」
「火弾、点火!!」
ミスをしないように……ラナリリス、キュラゴクスの、仲間の命がかかっているんだ。
俺は今までになく慎重に、強化弾を撃った。弾は狙った地点に無事落ちて、大爆発を引き起こす。
「大丈夫か?!」
「ああ…少し揺れただけだ、どうってことはない……、それよりも、殲滅状況はどうだ?、!」
「少し待っててくれ、今見にいく…」
俺は再び急上昇して、空から見ようとした。
だが俺の目は、不思議すぎる光景に奪われていった……
後方の着弾地点から、円状にどんどん寄生人間が消えていっている。何があった?なぜ…?
だんだんとその波はキュラゴクスや他の兵たちのところへと辿り着き、彼らの前で寄生人間は消えていった。
「は……?消えた?どこに…?」
「もしかすると………バーザール様、また何かの才能に目覚めたのですか?」
「いや、俺はそんな…」
みんなが動揺していると、空が青く光った。なんだ…?その光は考える暇も与えずに、一直線に俺へと向かってきた。
ハッと察して逃げようとするが、間に合わない。俺は目を瞑りながら飛び始めると、その光は俺に当たって…
爆発は起きなかった。むしろ、俺の手の中に収まり、だんだんとその光が消えていく……
手の中には、一つの紙が入っていた。
「バーザール、なんだそれは?」
騒ぎを聞きつけてやってきたゲライウスも、驚いている様子だ。
そりゃあ、そうだ。今まで戦ってきた敵が一瞬で消えたんだからな。
「いや、俺にもわからない…見てみる」
開くと、紙には3文が書かれているだけだった。
“よく、このギミックに気がついたな。おめでとう。
次は最後だ。3日後に、伺う……それまでは、何の手も加えないことを約束しよう。
次に会う際の場所、時間などの諸々は…そっちの選択に任せることにする”
「と、書いてある…」
ふざけているのか?人の命を弄んでおいて…だが、今重要なのはそこじゃない。
忌避との第3戦が、3日後に始まるということだ。
「3日後か……前回の宣言と同じだ。これは異論ない。だが……」
「とりあえず、俺は魔気を最大まで貯めておきたい。だが、この約束も怪しい…当分は、警戒を緩めないほうがいいかもな」
「警備は、俺とバーザール、そしてラナリリスでしておく。ゲライウスとその他の兵士たちは、休んでいてくれ」
「ええ、それがいいでしょう。防壁さえあれば、一方的に殺せる。そうなれば、勝利はこちらのものですから」
「……ありがとう、感謝する。皆!戦闘は、これで終了した!我々は奴らの侵攻に耐え、退けたのだ!!」
戦場には、今日1番の歓声が響き渡った。抉れた、もはや大きな穴となりかけているところを横目に、俺は再び魔気を貯め始める。




