89話 無限に来る
このほかに、新ストーリー「残響の調律師」を連載開始しました!
暇でしたらどうぞ、みにいってみてください…(懇願)
地味にこの物語より自信あります
俺は、先陣を切って前へと進んでいった。目前には、地を這うように迫ってくる奴らの大群が黒く見える。
俺は一瞬で偽装を発動する。人の姿になると、早速全身にみなぎっている魔気を手に集中させていった。
この様子だと、数十発は確実に打てそうだ。
「みんな!障壁を築いたら、すぐに引いてくれ!」
「分かってます…!ですが、数が多くて…!!」
「このままでは持ちません!!だれか!、助け…!」
戦闘を開始して早速、問題が発生したようだ。俺は咄嗟に助けに行こうとするが、現場を離れられない。
もしここで俺が離脱すると、その間に攻められて大きな被害を被るかもしれない。他の者も皆、自らのことに精一杯だ。
俺はその恐怖にも悔しさにも似た気持ちをいだきながら、ただ殺されていく1人の兵を見送ることしかできなかった……はずだった。
「うおっと………危なかったな!」
そんな殺されかけていた1人の剣士を救ったのは、前線にいないはずのキュラゴクスだった。
呼んでいないのに、なんであいつがここに…?
「バーザール様!地上の事は私たちに任せてください。バーザール様は、思う存分に暴れていただいて結構です!」
「ああは言ったが、やはり心配になって来てみた。案の定、俺らの助けが必要みたいだな!」
「2人とも……!」
呼んではいなかったものの、やはりピンチの時に駆けつけてくれるのがラナリリス達だ。彼ら2人は前線の戦力として、一騎当千の実力を存分に発揮しながら障壁の設置に貢献していく。
数分が経つと、東側の方から空へ向かって1つの火矢が飛ばされた。数秒後、それに続けて中央、西側からも飛ばされる。
それは設置完了を知らせる合図だった。
「東側、設置完了しました!」
「中央、こちらも同じく設置完了しました」
「西側、設置完了しましたぁ!!!」
「バーザール、すべての箇所で設置が完了した!これより、退避に移る!全員の退避が完了したら、思う存分ぶっっぱなしてくれ!」
「…わかった!」
バーザールは、すでに数発分の魔気をその手中に貯めていた。準備が完了すれば、いつでも高火力のファイヤーボールを放てる。
戦場には、ゲライウスの声が響いていた。
「あと、3人…1人!……………完了した!バーザール、攻撃開始!!」
「よっしゃぁ、まかせろ…!!!」
俺は右腕を空に向かって一振りした。たちまち、空には複数の虚空間への扉が開かれ、丸い入口が顕になる。
次に、俺は天へ向かって腕を振り上げる。手の中では、青白い光を帯びた光の玉がどんどん成長を続けていた。
そして…俺はそれを握りつぶし、一気に地表へと振り下ろす。
「火弾…点火!!!!燃えろ…焼け死ね!!」
空から、青白い光を放つ火の弾が大量に地面へと降り注いでいった。火力も、数も、全てが地下でのものとは桁違いだ…
一瞬にして、前線は火の海となった。
土埃と煙が消え始めると、俺は地上近くまで降下して辺りの様子を見てみる。
あれだけの光景だったせいか、地上には何も残っていなかった。唯一あるとすれば、ファイヤーボールに寄って抉られた地面が広範囲にわたってあるだけ。
ふう。とりあえず、第一波は無事に倒し切れたようだ。俺はそのことをゲライウスに伝えると、本日3回目の歓声が響き渡った。
「バーザール……お前、あんなに、強そうな技を…いつからできるようになっていたんだ…?」
「いや、こんなに強かったはずは…なんだか、使うたびに強くなっていってる?地下で使ったときには炎は赤かったし、一度に出せた数も一つだけだったんだけど」
まさか、使用した魔気に比例して強くなっていくとか?もしそうであれば、とてつもなく強い…
「………正直、驚くというより少し美しかったです。そして少し、怖い…攻撃というのは、これくらいがちょうど良いのかもしれませんね」
「ずいぶんと恐ろしいことを言うな。攻撃なんてのはしないのが1番いいんだぞ」
話がそれていってる。とりあえず、こういう時は指揮官の元へ行こう…
「ゲライウス。第二波はいつ来る?そろそろか?」
「……安心しろ。そんなに頻繁には来ない。短かったとしても、お前にはせいぜい10分、15分休憩できる時間があるはずだ。まぁお前にとっては、休憩というよりは戦闘準備に当たるかもしれないが」
「……これ、強さは変わっていくか?強くなっていったりしないか?」
前世でやった某ゲームのように、どんどん強くなっていったりしたら不利すぎる。さっきの強化状態を耐えることはないにしろ、タフになっていくのは嫌だな………
「さあ?そんなことは、誰も知らない。一気に強い奴が来るかもしれないし、今のやつが最強で、あとは全員雑魚の可能性だってある。だが、どれが襲来してきても、危険な奴であることは変わりない…確かにお前はこの中で最強だが、あんまり調子に乗るなよ。お前を失ったら…街はもう二度と立ち戻れない」
奇遇だな。俺も、死ぬのは嫌だ……まあ何にせよ、さっきと同じように襲ってきたら倒していくだけだ。
一つ、謝らなければならないことがある。前言撤回だ。前世のゲームなどという夢物語ではなく、現実だった。
戦線に襲撃を仕掛けてくる寄生人間は回数を重ねるごとに、より強く、より速く、より賢くなって行ったのが俺でもわかった。
ときには、仲間の死体を盾にして俺からの攻撃を防ごうとしたものまでいた。明らかに、賢くなっている…
だが、問題はそこではなかった。1番の問題は、いくら倒しても、いくら殺しても無限に湧いてくることだ。
そのせいか、兵士たちにもだんだん疲れが見えてくるようになった。見上げると、空は徐々にオレンジ色に染まり始めている。もう、夕方か…
「ゲライウス……一体いつまで、この戦いは続くんだ?」
まさか、夜通し続くなんてことはないよな?第24波の処理を終わらせて、俺はゲライウスの前に降り立った。指揮官は珍しく、顔を引き攣らせている。
何か悩み事でもあるのだろうか?
「ん、ああ……それが、おそらくだが…俺の予想だと、これは永遠に終わらない。今、対応策を考えているところだ」
???永遠に終わらない?それは、相当…というか、とても重大すぎることだ。なぜ全く焦っていないのか、俺には理解ができない。
「なんで……」
「静かに。俺が慌てれば、他の兵士にまでそれが移る。余計なことは聞かないでくれ。今は、これにどう立ち向かうかだけを考えたい」
「どうしろって言ってもな…これが忌避が来るまでずっと続いていたらと思うと、きついものがあるからな。なんとか早くこの戦いを終わらせたいところだけど…」
ん?忌避?今回の寄生人間は「頭がいい」………もしかして!!
「もしかしたら…寄生人間は、もういないのかも…」
「は…?先ほどだって、お前は奴らを倒しただろう?」
「ああ。確かに、あそこにいた敵にはファイヤーボールを当てた。だが、あれほどの数の寄生人間がいるはずがない…ざっと数十万、100万ほどいたぞ?すると、考えられるものは一つだけ」
だかその場合、あそこにいた者は何者なのだろうか…?俺は未だにその謎を解き明かすことはできない。
「あれがもし、寄生人間じゃないとしたら…?」
「だが、奴らは寄生人間の姿をしている。いくら現実から目を背けたいからと言って、信憑性が薄すぎる」
そうか…そうだよな。
「それじゃあ、あれほどの量の寄生人間はどこから生まれてきたんだ?」
「それは…誰にもわからない」
……やっぱり俺の勘は、奴らが寄生人間ではないことを知らせようとしている。
俺が再びゲライウスに言おうとした時、前線から叫び声が聞こえてきた。
「休んでる奴ら、戻れ!!敵が、すぐに来るぞ!!」
来るのが早い!俺は急いで飛び上がり、前線へと向かっていく。休む時間がなかったせいで、魔気を溜め終わっていない…!




