88話 演説
新しい物語も書き始めたので、そちらも見てみてください!(p_-)
「準備運動は終わった。そっちはどうだ?」
「私たちの方は、大方準備が完了しました。兵の移動も完了しているようです」
「それで…」
キュラゴクスとゲライウスは、2人揃って俺を見上げた。俺の顔に、何かついているか?
「「邪魔だから、人間の姿に戻ってくれるか?」」
ああ、そう言うことか。
俺は街を出てから、ものの数分で前線へと辿り着いた。途中、ブレスやら偽装やらを瞬時にできるように訓練をしてきたし、準備はバッチリ。
あと少しだけ欲張りを言うとすれば、この姿で忌避と対峙することも考えてもう少し小周りも聞くようにしておきたいだけだ。
俺は少し離れたところで人間の姿になり、3人の元へ駆け寄る。3人は戦闘準備をしているようで、俺がくると各々の武器をしまった。
「バーザールは、準備できたか?今回の戦いではお前が要だ。くれぐれも、ヘマだけはしないでくれよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。ゲライウスこそ大軍を率いているんだから、ミスでもしたら一気に何百人が死にかねない」
「大丈夫だ。そのために何十回、何百回と練習を重ねてきた」
「お二人とも、今は張り合って不吉なことを言うのは…今はただ、目の前の戦いに勝つだけです」
「……作戦は振り返らなくていいのか?バーザール」
確かに、キュラゴクスの言う通りだ。今の時点で食い違いがあれば、大きな事故…引いては、敗北につながる。
この戦いだけは絶対に負けちゃいけない…負けちゃいけない戦いが、最近何回もありすぎる気がするが。
「まず初めに、おれができるだけ寄生人間の数を削っておく。これで合ってるな?」
「ああ。おそらく彼らは移動しながらいろいろなものに寄生しているだろうから、数は予想の2倍ほどだと思っていい」
「となると、数万か…はじめに、どれだけ削れるかが肝だからな。頼んだぞ」
そうだ…さっき地下で出来た、強化火弾。それをここで使えば、効率よく倒せるんじゃないか?
「さっそくそのことなんだが…先ほど地下にいた時、俺のファイヤーボールを強化した状態で放つ技術を身に付けたんだ。おそらく、単純にブレスでやるよりも効果は絶大だ。直前で申し訳ないんだが、こっちにシフトするっていうのはできるか?」
「……本来は引いてやつらを丸焼きにして攻めてを繰り返す戦法だったはずだ。それなら…」
「ここから街までは相当な距離があります。攻める時間を抜いて、ひたすら強化されたファイヤーボールを撃つ方が効率がいいのでは?」
「ああ。そうすると兵たちは防護壁設置を繰り返すだけで済むから、攻撃を受けて寄生されることもない…」
「おまけに、これは魔気さえ足りれば連発可能みたいだ。忌避が来る可能性を考えて、早めに戦いを終わらせておいたほうがいい………頼む。ここは、俺に賭けて欲しい」
3人は腕を組みながらうつむいた。さすがに直前で戦法を変えるのはきついか……だが、変えられなかったとしても、俺たちが勝つことには変わりない。
「私は問題ないと思います。皆さんが賛成するようでしたら、早急に兵士たちに伝えたほうがいいでしょう」
「……ゲライウス、その役を頼めるか?この中で兵に1番信用されているのは君だ」
「……フッ、仕方がないな。戦士たちの反感を買っても知らんぞ?」
そんなことがないとわかっていながら脅すなんて…悪い漢だ。彼は足早に、寄生人間の襲来を防ごうと防壁を築く兵士たちの元へと歩いていった。
「あとは、バーザールがその技を上手く操れるかだな」
「……こう考えると、俺の責任がデカすぎる。もう少しこう、なんていうか…分散できないのか?」
「まさっきバーザールが言った作戦を実行するとすると、俺たちには少ししか出番がないからな。頑張ってくれよ」
「応援しておきます」
……ふたりとも、前線に出ない人みたいなコメントをしてるんだが?まあ、後々の忌避のことを考えると、予備戦力が数人いてもいいか。
「まあ、任せておいてくれ………お、そろそろか?」
戦闘の不安をかき消そうと話をしていると、前線の方から雄たけびが聞こえてきた。どうやら、あっちも用意ができたみたいだ。
「それじゃあ、行ってくる!」
「ああ!キツイと思ったら、いつでも呼んでくれ!加勢にいく」
「キュラゴクス様…やはり、私たちも参戦したほうがいいのでは…?」
「大丈夫。2人は非常事態に備えて、予備戦力としていてくれればそれでいいよ。」
ラナリリスは相変わらず不安な顔をしている。そんなに、俺は弱いかな…?
「皆のもの!よく聞いて欲しい!今回我々は、街へと迫りくる寄生体を撃退し、街の平和…そして、家族友人の安全を守るために戦う!」
戦闘の直前に、ゲライウスはすべての兵士に向かって話しかけていた。俺が空を飛んで偵察しに行ったところ、予想よりも少し遅い速さで迫ってきていた。
さすが、街のリーダーといったところだろうか。何十回、何百回と練習したと言っていた彼からは、その確固たる自身がにじみ出ていた。
正直、俺はあいつをなめていたな。あいつもあいつなりに、最善を尽くしていた…
「みんなの中に、少しでもこういう考えを抱いた人がいるだろうか…『負けるかもしれない』、『今回の戦いで、死ぬかもしれない』と!」
彼はみんなの心を鷲掴みにしながら、勢いをつけて大きな声を上げた。
「だが、その恐怖も今日で終わりだ!我々がこの戦いに勝った暁には、迫りくる怪物たちは皆消え、諸悪の根源も絶たれる!その第一歩を、我々は今踏み出すのだ!!」
「この戦いは、絶対に勝つ!いや、勝たなければならない!!そして我々には、その権利も、資格も、理由もある!!」
「必ずや勝ち、奴らに向けて、我々の反旗を翻す狼煙をあげよう!!!」
俺の眼下で再び歓声が上がる。ゲライウス、うまくやってるな…俺は顔を上げる。その目には、先ほどとは比べ物にならないほど近くにいる、寄生人間の姿があった。




