87話 ミス
(バーザール様!地揺れが……そちらは大丈夫ですか?!)
俺の放った技を感知したのか、ラナリリスがすぐに脳対話で話しかけてきた。
(ああ。今のは俺が起こしたものだから、安心していい。それより、朗報だ。闇の繁華街は跡形もなくなり、寄生人間の懸念点も払拭できた。)
(では…もう今すぐにでも、地上に来れるということか?!)
(ああ。だが…少し時間をくれ。街のみんなが寄生人間になるのは避けられたが、元凶を本当に倒しきったのかが確認できていない。ここで逃したら…)
(内外の寄生人間に挟み撃ちにされるか…わかった、しっかり確認してきてくれ)
(すまない。数刻で追いつく)
さて、この壊れた広い街の中から特定の人の死骸なんて見つかるか…?そもそも殺せていたら死体なんて残らないし、殺せていなければ逃げられて見つからないから、どっちにしろ見つからないのでは?
そうだ、もう一回さっきの技を発動すればいい。流石に2回とも耐えることはないだろう、きっと。俺はそう思い、もう一度ファイヤーボールを落とす。
放つ前にはあれだけいた寄生人間たちは、2発の火弾を食らったあとの瓦礫の山を墓地として消えていった。
俺は元凶がいたであろうところの周辺の瓦礫をひっくり返し、探していく。だが、いくら探してもやつの体は見当たらない…
もしかしたら、本当に逃げたのか?あの熱と光の中で?まさか…
「よっ…ほっ…!」
俺はそこら辺にある岩盤に飛び乗り、引き続き捜索を続ける。俺が背伸びをして周りを見渡そうとすると、突如それは音を立てて崩れ、その下にあった遺品があらわになった。
そこには知らない、縁のない人々の焼けた死骸とともに、元凶がつけていたはずの腕時計が丸焦げになって落ちていた。
やはり、元凶は死んだようだ。燃えて死んだが故に、死体も残っていないのだ…
「………はあ。疲れたな」
いくら街を救うためとはいえ、無実の人までも巻き込んで大量殺戮をするのは楽しいことではない。
「すまないな、無実の人たち…彼に巻き込まれた、不憫な人たち」
俺が街から去る直前に街へ向かってそう喋っても、帰ってくるのは炎の弾けるような音だけだった。
俺は罪悪感から、その場を急いで後にする。後に、俺がここへ戻ってくることはなかった。
「2人とも、いるか?!戻ったぞ!」
塔についた途端、俺はその到着を2人に伝えにいった。
ラナリリスたちは、俺がいつ帰ってきてもいいようにあらかじめ用意をしていたみたいだ。俺の声を聞くなり、2人は立ち上がりキュラゴクスたちへと伝えにいった。
その直後、すぐにゲライウスが飛んでくる。
「戻ったか、バーザール。迅速に説明する!よく聞いてくれ。寄生人間が移動速度がとても早いことを考えていなかった。装置のカメラの前では歩き、それ以外では疾走していたみたいだ!早くてあと2、3時間でこっちまで来る。みんな、バーザールが来た!すぐに出るぞ!!」
「は、え?本当に…?」
「奴らが頭を使えるとは思っていなかった…すまない、俺の完全なミスだ…!」
「そう、なのか…まあ、起きたことは仕方がない。切り替えていこう。そうなると俺は、ドラゴンの姿で戦った方がいいか?」
「ああ。すでに前線の部隊の移動は開始するように伝えてある。あとは、俺たちが行くだけ…まあ、バーザールが無双する未来しか見えないが」
「油断は禁物です、キュラゴクス様。ここで忌避が来たら…そういう危機感を持った方がいいかと」
「ああ、そのつもりだ。心に刻んでおくよ」
「雑談していないで、行くぞ!俺は準備、完了した!」
「了解。バーザールは準備運動も兼ねて自分で、ほかのみんなはこっちへ来い!集団で転移する!」
「それじゃあ、またあとで会おう!……と言っても、数分で再会できるけどな」
俺はふたりと戦前の挨拶を交わしたあと、1人で外に出る。久しぶりに完全な偽装が出来たような気がする…
俺は背伸びをしながら、スッとドラゴンへと変身した。試しに少しだけブレスを吐いてみるが、通常通りの火力が出る。よし、万全だ…!
俺はラナリリスたちが転移したのを確認して、出発した。目指せ、決戦の地。寄生人間と、決着をつける…!




