84話 追った先には…
「もらったペンダントだけど…ラナリリスにつけたら似合うんじゃないか?」
「大丈夫ですよ…私なんかに」
「いいから。ほら、頭を下げて…」
俺はラナリリスの肩をたぐり寄せ、首にペンダントを通してみた。うん、我ながらとても似合っている組み合わせだ。一生見ていたい。
「似合っているな。しかし、その宝石は見たことがないな…」
その宝石は赤でも青でも緑でもなく、少し濃いピンク色をしていた。そんな鉱石、あったっけ?ラナリリスはそのペンダントを顔の近くに持ってきて、必死に目を瞑っている。
「コホン!で、では……城の近くのその家に行ってみましょう!」
「……熱でもあるのか?顔が赤いぞ。ちょっと待ってろ、今キュラゴクスに…」
「大丈夫です…!早く、行きましょう!時間がもったいないです!」
「あ、ああ…わかった。本当にだいじょ…」
「大丈夫ですから!」
「バーザールとの連絡は取れるか?!」
「今している…ちょっと待ってくれ……」
「早めに頼む…お前達!全部設置は終わったな?!………わかった、感謝する!とにかく今は急いで、街へ帰るぞ!!」
「それじゃあ、調べるとするか…この部屋、散らかりすぎだろ…」
「散らかっているというよりは、誰かが暴れたのかと。壁や電球が割れているのをみると、やはり最近できた傷のようですね」
「これか…?カルダナおばあさんが言っていた『紺色』のやつは」
俺は色々漁っているうちに、紙々の隙間に何やら鱗のようなものがあるのを見つけた。
なんとなく触ってはいけないような気がして、俺はそのままラナリリスに見せてみる。
「…おそらくは。すみません、そのまま紙を持っていてもらえますか?」
そういうとラナリリスは手袋を外し、慎重にその鱗へと手を伸ばす。
覚悟を決めてラナリリスがその手を鱗へと伸ばすと、触れた瞬間に鱗は赤色へと変色していった…
「これは……」
「鱗が死んだ証拠です。資料には、寄生人間が死ぬとその体が真っ赤に変色すると書いてあります」
「ということはこの鱗は、俺たちに見つけられるまでの数日間、ずっと生きていたのかよ…とんでもない生命力だ、怖いな…」
俺たちは再び、部屋を漁る。他に手がかりはないか…?めぼしいものが見つからず、落胆して床を見ると、そこには床の色に擬態していて見えなかった鱗が落ちていた。
「ラナリリス…これ…」
「床のせいで、気がつきませんでした…この鱗の持ち主は、だんだん剥がれていっていることに気がついていないようですね。しかし、なぜこれほどまでに鱗が剥がれ落ちているのでしょう?」
「確かに…彼らに鱗があること自体、俺は知らなかったし…もしかすると、人間に戻るときに鱗が剥がれて戻っていくのかもしれない。ということは…」
鱗は、裏口から外へ点々と続いていた。
「鱗の持ち主…俺たちが追いかけているやつは、この先だ!」
「お前たちは治安隊に連絡を!」
「はい!!」
「俺は同僚たちに報告してくる!キュラゴクスは、先ほど言った通り、バーザールたちを呼び戻してくれ!」
「わかった!バーザールを見つけたら、塔に呼び戻しておく!」
「ああ!頼むぞ、みんな!時は一刻を争う!あの大群が来たら、忌避との戦いどころの話じゃない!今のところ対抗できる手段が、一つしかないのに……市民はただただ、彼らに寄生し尽くされることになる!!」
「ここか…」
その鱗を拾い集めながら歩いていくと、ある建物に着いた。しかし、そこは一目見たらわかるほどにワルがいそうな雰囲気を醸し出しているビル…の、地下だ。地下にあるおかげで、ほとんど壊れずに生き残っている。
「ここですか…どうやら、裏の社会の様です」
「ああ。まあ、正直そこは関係ない。問題なのは、大体こういうところって入り口に知らない奴が入らないように見張りがいることなんだよな…どうせなら、できるだけ騒ぎを起こさずに静かに入りたい…」
「騒ぎに乗じて目当ての人物に逃げられる可能性もありますしね。なんとか上手く入る方法はないものでしょうか…」
俺は唸り声を上げながら考える。だがその努力も虚しく、何も思いつかない…どうしようか?ここまできて、時間もないのに、何も成果をあげられずに帰る…?
「これ、使ったらどう?」
「……?誰だ?!」
「そんなに怒らなくても…あたしはただ、気が向いたからあんたらを助けてやろうって思ってるだけだよ」
「そのようなことを言われましても…どんな人も、周りにいない、姿も見せていない方のことを信じることはできないかと」
「はぁ、お2人とも頭が硬いなぁ。もうちょい柔軟に考えてみようよ。君たち2人は今、どうすればいいかわからず、途方に暮れている。そいで、あたしは助言をした。他に手がない以上、あたしの言う通りにしてもいいんじゃないの?」
「……理屈は通ってるな。」
「それでは……」
「ああ、こいつの言うとおりにしてみよう。ラナリリス、集めた鱗を出してくれるか?」
ラナリリスは、どこからともなく数十枚の鱗を取り出した。それは相変わらず赤色に染まっていて、少々の不気味さを放っている。
「あ、ちょっと待って!別にあたしは、必ず入れるって言ったわけじゃないからね!そこは勘違いしないで」
「そのような事は承知の上です。バーザール様、行きましょう」
「ああ。誰か知らないが、助言をありがとう」
「『誰か知らない』かぁ…いや、何でもない。頑張れよ〜」
見知らぬ声は、そこで途切れた。俺は万が一を考えて強制発火をすぐに発動できる状態にしてから、鱗を手に取りドアへと向かう。
そこでは予想通り、見張りが入り口を監視していた。やつは俺とラナリリスを見るなり、扉越しから話しかけてくる。
「………見せろ」
俺は無言で、その鱗を数枚見せた。するとたちまちドアが開いていき、中の熱気が溢れてきた。
「ゆっくりしていけよ、にいちゃん。あんた、初めてだろ?」
「あ、ああ…」
「俺はこの仕事を何年もやってるからなぁ。そういうのは全部お見通しなんだよ。当たったのが俺でよかったな…さぁ、行け」
「……感謝する」
「必ず、止めてくれよ。他んことは俺はどうでもいいが、それだけにゃぁ反対なんだ」
俺たちはこうやって部外者であることがバレながらも、無事難関をクリアした。あとは追い詰めるだけ…
「危なかったですね…あの方には、借りができました」
「ああ。彼に感謝しながら、ひとまずは見て回ってみるか」




