82話 別行動
「意味がない…それ、本当に重要なのか?」
「は?!」
ここにいる一同全員が一斉に振り返った。そこには、襲来してきた張本人…忌避の映像があった。どんな方法かわからないが空中に映像を浮かべて、俺たちとコンタクトを取ろうとしている。
「やあ、どうも。みんなご存知の通り、忌避だ。これは録音だから、俺が今そこに近くにいると言うことではないから安心してくれたまえ」
「舐めやがって…」
「おっと、そんな怖い言葉を使わないでくれ。俺だって、生き物なんだ。心にきちゃうものがあるだろ?」
人を殺しておいて、何を言っているんだこいつは?
「ここにいる君たちの顔が怪しくなったところで…今回の本題に入ろう。君たちはあの変異した生物について悩んでいるみたいだけど、別に俺が行ったところ以外でも発生するってわけじゃない。つまり君たちが睨んでいることに、俺は関与していない」
「お前が来なければ、そもそもあれほどの混乱は起きなかった。もし悪意を持った人物が街に寄生人間を解き放ったとしても、対応できる数だったはずだ…!」
「仮定の話をしてもしょうがないだろう?今を見据えて話そうぜ。俺がお前らを殺そうとしない事は無いのだから、街に被害を及ぼしたくないのなら君たちは地上に来ればいい。今まで言ったことを信じるか信じないかの判断は任せた。では、5日後にまた会おう」
そうやって忌避が言った直後、映像がプツンと途切れた。部屋は静寂に包まれる。
「5日後ですか…それまでに準備を整えて、再び地上に出なければならないのですね」
「ああ。そして5日以内にこの寄生人間の件も片付けなきゃいけない。相当辛いものになるぞ」
「そして忘れちゃいけないのが…エオリアの死だ」
「ああ。エリオリアスは、死んだ…生き返ると言っていたのに死んだんだ。今回の戦いで忌避に殺された場合も、生き返れない可能性だってある」
「とりあえずは、別れて動きましょう。地上の把握や戦闘準備をする人と、この街の寄生人間について片付ける人に」
「キュラゴクスは地上へ行く。バーザールは確定で寄生人間の処理だ」
「ああ。バーザールはこの中で唯一寄生人間を倒せる奴だ。これ以上の適任はいない。そして俺は…地上に行く。一瞬しか出られないのだから、出来るだけ人が多いほうがいいだろう。転移を使える人も、1人はいないと回らないだろうからな」
「となると、私はバーザール様についていけばいいのですね」
「決まったなら早速動こう、時間を無駄にしないようにな。ゲライウス、その…寄生人間の資料をくれ」
「そこに置いてある。自由に持っていってくれて構わないぞ」
「ありがとう。それじゃあラナリリス、早速行くか…」
「はい。まずは、ここ…北西ですか?」
ラナリリスは地図を指差しながら問いかけてきた。なんだそれ、見覚えのない地図だな…いやそれ、上下反対!
「………地図が逆さだぞ……南東だな。確かそこは、俺が寄生人間からおばあさんを助けた…そうだ!そのおばあさんに聞けば、何かわかるかもしれない!」
「流石、バーザール様ですね。早速行ってみましょう」
「それで、俺は何をしたらいいんだ?いまだにわからないことだらけだから、ゲライウスの知恵を借りたい」
「これを見てくれ…地上は、このように都市が点々とあるのみで、それ以外の集落などは何もない。小さい街は、すぐにやつに滅ぼされていったからな。奴から見たら、取るに足らないもののはずなのになぜ襲うのか…」
「つまり俺たちはここの周辺の都市だけを偵察しにいけばいいと言うことだな。任せろ」
「その通りだ。偵察したところで、一番標高が高いところにはこれを置いてくれ。これは、死のエネルギーを感知できる優れものだ。あいつは死の肆使である以上、俺たちよりはるかにこれに感知されやすい」
「了解した。それじゃあ転移、頼むぞ」
「よし、着いた…ここが被害を受けた人たちが集まる、キャンプ地か」
「ここに、バーザール様の言うおばあさんがいればいいですが…一応、聞いてみましょう」
俺たちはキャンプの中心地へと入っていく。中は、前世の世界で地震が起きた時のような光景が広がっていた…酷いな。これほどとは…
「すまない…この中に、助けられた時に茶の色の服を着ていたおばあさんは居たか?対面で話したいことがあるんだ」
「その方なら…先ほど外へ出かけられましたよ。おそらく家を見に行っているかと思われます。場所はおそらく…」
「いや、大丈夫だ。場所は自分でわかる。情報の提供、ありがとう」
「いえいえ。近頃、金目のものを奪いにくる強奪集団が目撃されています。お気をつけて」
「ああ。では」
俺はくるりと引き返し、キャンプを出て行った。ラナリリスも、俺の後を着いてくる。
「よかった。あのおばあさん、生き延びれていたみたいだな…」
「ええ、そうですね。後は、先ほど告げられたあの強奪集団に目をつけられていないと良いのですが…」
「おばあさん、そんな高価なものを身に付けていたか?そんなわけ…」
そういかけて、俺は少し思考が止まった。彼女、確か首飾りとして宝石をつけていた気がする…
「少し不安になってきた…すまん、ラナリリス。少し小走りで行っていいか?」
「構いません。ですが、道案内はお願いします。私のみだと一生たどり着かないので…」
「こんな感じでいいか?」
地上で作業をしていたキュラゴクスたちは、高所に登っていた。キュラゴクスはそこから、地上にいるゲライウスに向かって確認をとっている。
「ああ、最高だ!ありがとう、キュラゴクス!」
「これくらい、朝飯前だ。こんな簡単な仕事、俺がやってでいいのか?他にもあるんしゃ…」
「確かにあるが、別にお前にやって貰うほどではない…それが全部設置し終わったらもう一回読んでくれ」
「?これで設置し終わったが…」
「な…?!それじゃあ、すまない…彼らの代わりに周辺の偵察にも行ってくれないか?」
「了解だ。建劉園の方に行けばいいんだよな?任せてくれ、やり遂げてくれる」




