81話 新・寄生都市
「寄生人間が、人によって引き起こされた…?あれは忌避のもつ性質によって寄生体が生まれ、それが植物に寄生し、人間に移る…そうゲライウスたちは言っていたぞ?」
「ああ、全くその通りなんだが…今さっき、俺は寄生植物を採取している不審な人2人を発見した。俺に見つかったときにその証拠を隠そうとしていたことから、するものだと思ったんだ。これが俺の思い込みだったら嬉しいんだが…今言った通りになっている可能性も否めない」
キュラゴクスは剣を奮いながら考えているようだった。少ししたあと何かを決めた素振りを見せて、キュラゴクスは俺を手招きした。
俺はそれに応じて、火弾で寄生人間たちを焼き払う。
「バーザールの言う通りだ。俺も思い込みだと思っているが…この重要な時期に、怪しい可能性が少しでもあるなら相談しておくべきだろう。ラナリリスに断って一旦街へと帰り、ゲライウスたちに聞いてみよう」
「ああ、ありがとう…おーい、ラナリリスー!!今、どんな感じだーー!!」
「近くにいるのですから、そんな大きい声は出さないでください…耳が壊れてしまいます」
俺が街に響く大声でラナリリスを呼び始めた直後、建物の隙間からラナリリスが出てきた。腰には植物のサンプルらしきものをつけている。無事、採取できたようだ。
「ラナリリス。バーザールが、何か不審な人物を見たらしくてな…その様子から考えるに、もしかしたら寄生体を悪用している可能性があるとの事だ。パーザールの思い込みであって欲しいが…」
「そうですか…万が一可能性があるなら相談しておいたほうがいいでしょう。皆さん、それぞれのやるべき事は終わりましたか?」
「流石ラナリリス…話が早い。それじゃあ早速、街に帰るか!」
シャントタウンでは、ゲライウスたちが混乱の対応という急務に追われていた。
「落ち着いてください!指示に従って、速やかに行動してください!」
治安体がそう呼びかけているが、市民たちの動揺は収まることを知らない。
「くそっ…!なんで今は、忌避が来ていないのに…!」
その視線の先には、建劉園で見た、あの生物が闊歩していた。市民が全員避難し終えた街の道を寄生された人間や動物が、不自然な動きで歩いていく。
「寄生体が来るんだよ…!!」
「よし!2人とも、目をあけていいぞ」
「無事、着いた…まずは、ゲライウスらを探しましょう。おそらく、塔の近くにいるでしょうから」
「いや、そうでもないみたいだ… 2人とも、あれを見ろ」
キュラゴクスが指差す先には、いつも通りのシャントタウン…ではなく、所々に見覚えのある植物が生えている街だった。
建物を見た様子だと、ここはシャントタウンのはずだ。ではなぜ、今さっき建劉園で見たものと同じ植物がここに来ているんだ?まさか…もう、悪人たちの手に寄生体が渡ってしまったのか?
「とりあえず、良くない状況っていうのは確かだ。一旦、ゲライウスたちの元へ行くぞ!」
俺たちが街の中へと入ったときには、既に街の入り口は寄生人間たちで溢れそうになっていた。この街で、一体何があったんだ…?周囲を見渡してみるが、生存者はいないようだった。
もう避難し終わっているのかあるいは全員が寄生体の餌食となったか…俺は今回は火事を起こさないように威力を調整して火弾を放とうとするが、そこで思いとどまる。
もしこいつらがもともと街の人だった場合、俺が街の人を殺したことにならないか…?ラナリリスが建劉園へと行ったのは、寄生状態を予防、そして治すためだ。
「このまま捕獲すれば、いずれは寄生体から解放されるんじゃないか…?」
「何を馬鹿なことを言っているんだ、バーザール!折られた紙は元には戻らない!病気ならまだしも、これは話が別だ!…………行くぞ!」
俺たちは塔に向かって一直線に駆け出した。3人で協力しながら周りの寄生人間を薙ぎ払いながら進んでいくと、目の前にはもう塔があった。
だが…塔の入り口は寄生人間たちを中へ入れないために頑丈な扉で閉められていた。外側からは開けられそうにもない。俺が上を見ると、その扉の上に通気口があった。そこも閉められていたが、そこからなら入れそうだ…
「2人とも!俺があそこから中へ入るから、援助を頼む!」
「わかりました…っ!」
「よし…行け、バーザール!」
俺は2人に周りの寄生人間を倒して空間を作ってもらった。俺はそこで翼を広げ、通気口へと飛び立つ。
ドロップキック…!!俺の蹴りを食らった通気口の鉄格子は壊れ曲がり、粉々になって床へと落ちた。その音を聞きつけた警備員は、一斉にこちらに武器を向ける。
「違う、侵入者じゃなくてだな…来訪者だ!ゲライウスに会いに来た!」
「なんだ、お前か…今、この街は見ての通り寄生体の襲撃を受けている。忌避はこの地に来ていないはずだが…なぜか、街の一角に突如として奴らが出てきたんだ」
「そのことだ。俺はそれを言いに来た…そうだ!話し合う前に、まずはこの扉を開けてくれ!まだ外に、2人が残されてる」
「…それを早く言え!警備!一瞬だけ、扉を開けろ!」
「ですが、外には外には危険な…」
「数十秒だ!その間、俺とこいつが誓ってこの中に奴らを入れん!」
「…わかりました。全員、門を開け!40秒たったら、何があっても門を閉めろ!」
隊員の掛け声が響いた直後に、頑丈な門はゆっくりと開き始めた。隙間から静かに見える外には、いまだに寄生人間と戦っているラナリリスとキュラゴクスの様子が見える。
「2人とも、こっちだ!!早く!!!」
「バーザール、感謝する!ラナリリス、大丈夫か?」
「はい。余裕です…さあ、門の内側へといきますよ」
2人は有言実行する人だった。キュラゴクスの一振りでラナリリスが声をかけた数秒後に寄生人間は飛び去り、空中に投げ出された寄生人間たちのすぐ下をキュラゴクスとラナリリスは走ってくる。
「閉めろ、閉めろーー!!一人たりとも、中には入れさせるな!!!」
2人は、扉が閉まるギリギリのところで滑り込んできた。
「ふう……ギリギリで間に合いましたね」
「2人とも、無事でよかった…!」
「俺たちがあいつらに殺されるわけがないだろう?…それで、ゲライウスにはもう話したのか?」
「いや、まだだ。……ゲライウス、少しいいか?」
「?ああ。何か用があるのか?」
「これは可能性の話で、あくまでも予想なんだが…率直にいうと、前回の忌避襲撃時に確認された寄生人間は、忌避によってではなく人間によって引き起こされた可能性があると思っているんだ」
「……続けてくれ。」
「俺たちは、さっきまで建劉園に行っていた。そこでは別行動をしていて、俺は…まあ歩き回っていたんだが、そこで不審な人間と出会ったんだ。そいつらは…」
「ちょっと待ってくれ。建劉園を術無しでほっつき歩いていた…?壁には引っ掛からなかったのか?!」
「ああ、なんだかわからない透明な壁には阻まれたけど…なんとか抜け出せたぞ。それで話を戻すが、そいつらは寄生体の採取をしていた。俺がそれを見た瞬間、隠すような仕草をしたんだ。おそらく、それを悪用している可能性がある」
「………その推測は、高確率で当たっているだろう。俺たちもその考えを持っていたんだ」
「というと?」
「先の忌避襲撃の時の寄生人間の目撃・被害場所をまとめてみたら、明らかにおかしいところがあった。忌避が訪れていないところからも、寄生人間が出てきていた…これはどう見ても忌避の他にも寄生人間を作り、俺たちを混乱させようとしている奴がいるとしか思えない」
「確かに…もし忌避がやっていたとしても、あいつがそんなことする意味がないからな」
『意味がない…それ、本当に重要なのか?』




