80話 呪いはバグで
俺はとっさに最悪の状況を考えた。キュラゴクスが危険になった場合は、空に剣が飛ばされるはずだ。それを見ていないということは、おそらくまだ無事…
どちらにしろ少なくとも、流石にキュラゴクスが即死ということはないだろう。まずいのはラナリリスの方だ。
いや、どちらも俺より強い(って全知王が言っていた)のだから無事な可能性のほうがある…もしかして、無事じゃないのって俺のほうか?!
もしかしたら、知らないうちに2人と逸れてしまったのかもしれない…俺は不安に駆られて、咄嗟に空へと飛び上がった。頼む、近くに居てくれ…!
視界の先には、群がってくる寄生人間に対して1人で戦っているキュラゴクスがいた。よかった、別に逸れたわけじゃないのか…じゃあなぜ、この距離で音が聞こえないんだ…?
俺は安心して翼の力が抜けたせいか、地上に再び降り立った。見えたは良いもののやっぱり不安だし、一旦2人に会いに行こう。この悪用されるであろう寄生体のサンプルの相談もしなきゃいけないしな…
俺はそう思い、まずは小走りでキュラゴクスの元へと向かった。
「何分走り続けたんだ…?」
体感では、上空でキュラゴクスを目視してから20分は経っているはずだ。その間ずっと走っている。それなのにいまだにキュラゴクスの元へとたどり着かない…?
俺は上空へと飛び上がった。上から見れば、あとどれくらいで着くのかわかるはず。キュラゴクスは移動したのではと思ったが、少し前に見たところと同じ場所にいた。では、なぜこんなにも時間がかかるのだろうか?
俺は不審に思い、飛びながらキュラゴクスの元へとたどり着こうとした。だがその数秒後に、俺は目の前の何かに衝突しする。
いってぇ…なにに当たったんだ?怒りながら頭を抑え前を見ても、そこには何もなかった。手を伸ばすと、見えない壁のようなものに触れることができただけだ。
「なんだ、これ」
まさかこれ以上先には行けないのか…?!俺は周りの手で探ってみるが、行けそうなところはどこも見当たらなかった。まじか。まずい、相当まずいぞ。このままではキュラゴクスと合流できない…!
地上に戻った俺はとりあえず、ありったけの火力をぶつけてみることにした。槍にブレスに火弾…
「おらあぁぁぁ!!」
道の真ん中、一点だけに向けて集中砲火をしていく。俺は全ての攻撃を開始して、全火力をぶつけた。
ドッカーーン!!…………となるはずだったのだが、大きな音は一切しなかった。代わりに槍や火弾がその壁をすり抜け、道の奥へと突き進んでいく…
……は?あれ、壁があるんじゃなかったのか?俺は訳がわからなくなり、壁があるはずの場所へ向かっていく。手を伸ばしたが、そこには本当に何もない。。見えない壁は消え去っていた。
「何なんだよ…ビビらせやがって」
まぁ、問題が消えたことに越した事はないか。俺は再び、キュラゴクスの方へと歩き出していく。
15分後。俺はまた、同じ問題に直面していた。さっきと全く同じことを繰り返してみるが、やはり一向に変わりは無い。
これ、いくら歩いてもたどり着けないんじゃないか?もう半時間は歩いているぞ。
上空から見た俺の位置は、15分前と数メートルしか変わっていなかった。もしかして、徒歩で進もうとすると極端に長い距離を歩かされるやつか。
徒歩じゃない方法を考えようにも、飛ぶのが無理だからどうしようもない。声が届かない以上助けも求められないし、これ詰んでないか…?
〈落ち着いて、今ある情報を整理しましょう。今わかっていることは3つあります。1つ目はこの壁を通して内側から外側に音声を届けるのは不可能ということ。2つ目は、飛ぼうとすると通常の距離を進める代わりに壁が現れその行く手を阻んでくるということ。3つ目は、徒歩で移動しようとすると極端に長い距離は歩かされる代わりに見えない壁が消滅すると言うことです。〉
ああ。ヘルメスの言う通りだ。つまり、どうしようもないってことか…
〈この情報をもとに、矛盾を起こせばこの現状を打破できる可能性があります。例を出しますと、歩きながら飛ぶ…などです。〉
「そうか!足を地面につけながら翼で飛べば、どちらとも認識できるからバグって通れるようになる可能性があるのか!」
だが、それが原因でもっと状況が悪くなる可能性もある。少なくとも、長い時間歩けば絶対にキュラゴクスの元へとたどり着けるのだ…
「ヘルメス。徒歩でキュラゴクスの元へと向かった場合、どれだけの時間がかかる?」
〈38317分。月日にして、26日14時間37分です。〉
よし、歩きながら飛んでみよう。そんなに長い間歩けるわけがない。休みだかなんだかを入れたら、余裕で1ヵ月半はかかりそうだ。
俺は助走をつけて、道ギリギリをスレスレで飛んでいく。時々地面に足がついているから、走っている判定になるはずだ。客観的に見たら気色悪い行動をしているかもしれないが、やむを得ない。
走り始めてすぐに、今までとの違いに気がついた。空気の移り変わりが今までと違う…つまりこれは通常の距離を進めていると言う事だ。その上、見えない壁は現れない。
数十秒で、俺はキュラゴクスの元へとたどり着いた。彼は疲れながらも、いまだに鍛錬を怠っていない。
「キュラゴクス、鍛錬の調子はどうだ?」
「強くなったという実感はないが…気を長くしてやっていくしかない。お前こそ、なぜここに来たんだ?」
そうだ…あの壁から逃げ出すのに頭を使いすぎて、忘れていた。
「そうだ、これを言いに来たんだだった…まずいことが起き始めているかもしれないんだ。俺の心配のしすぎだったらいいんだが、さっきの襲来での寄生人間は、忌避の仕業じゃない可能性があるんだ。例えば…人間とか」




