77話 彗燦魂の力
「おらあぁぁぁぁ!!!!」
戦闘が始まると、ゲライウスは急に人が変わったように暴れ出した。俺たちと出会った時のあの冷静さは何処へやら、槍を両手に忌避へと突っ込んでいく。
「彼を1人にするな!俺たちも行くぞ!」
俺は聖なる領域や火弾などを使って、後方から支援をしていく。流石に槍持ちが2人もいたら、仲間同士で殺し合いになりかねない…
「どうした、ゲライウス。槍が鈍ってきてるぞ」
「まだまだぁ!!!」
相変わらずゲライウスは殺意満々だ。その殺意が途絶えないうちに、奴を倒し切りたいものだが…
そう考えていると、俺の顔に破片が飛んできた。咄嗟に上半身を逸せて避ける…飛んできた方を見ると、ゲライウスの槍の片方がもう壊れていた。
「クソが…!!」
「槍がないと何もできないのか?情けない奴だな。もう一つも、なくなったらどうなるか…」
俺は咄嗟に生成した槍を手に、叫びながら忌避の頭目掛けて投げた。
「ゲライウス!それを使え!!」
ゲライウスは一瞬こっちを見て、瞬時に俺の思考を理解したようだった。彼は近くにいた仲間を土台にし、槍を取りに飛び上がる。
キャッチした!!その直後、体を捻らせて彼は戦闘を再開する。地上では再び火花が散り、金属と金属が打ち付けられる音が響き始めていった。
俺がアルカディアでみんなを回復していると、地上で不穏な空気が流れ始めていることに気がついた。見ると、いろんな方向から寄生人間がゲライウスやラナリリスたちの方へと歩いてきているのだ。
もしや、忌避にはこいつらを操れる能力が…?そうだったら、俺が処理しておかないと絶対に邪魔だ…!俺は空にありったけのファイヤーボールを出現させ、それを目視できる限り全ての寄生人間へ向けてはなった。
着弾時の衝撃は凄まじかった。地震?震度は…という思考をすぐにしてしまうほどに。地面は揺れ、街の寄生人間たちは消える。代わりに、街の火災がもっと発生していった。
くそっ、火力調整をミスったか…?いや、計算については全知王に任せているから間違いはないはずだ。俺はそんなことを考えながらも、仲間を回復させることしかできなかった。
「バーザール!槍!」
「あいよ…!!」
俺は指示されたタイミングに正確に槍を投げる。するとゲライウスはそれをキャッチし、再び戦線へと戻っていく。
剣と槍、斧と剣が暴れ回る戦場で、俺はただアルカディアを発動しながらただ眺めているだけだ…俺はなにもすることがない。その現状に悔しがっていると、後ろから声が聞こえた。
「よう、バーザール。久しぶりだなぁ。いや、数日ぶりか」
「なんで、忌避がここに…?!ラナリリスたちの方は?!」
「ああ、彼らは…俺の分身と戦っている。見ず知らずの剣や斧ですら複製できるのに、一番知っている自分を複製できない方がおかしい話だと思わないか?」
「余裕そうだ…技の原理を話すなんて、よっぽど勝ちを確信しているようだな」
「ふふ、はははは…!ああ、当たり前だろう?今回もだが…俺が負ける要素が何処にある?ゲライウスは成長していない、街は脆く、強いと思っていたバーザール…お前も弱いじゃないか」
「随分と言ってくれるじゃねえか。今のお前がどんな状態かも知らないで…」
そう言った瞬間、俺の首には彼の手が押しつけられた。それは徐々に剣へと変わっていき、俺の首からは一筋の血が滴り落ちる。
「今の俺がどんな状況かは知らないが…今のバザールがどんな状況かはわかるぞ。貴様は今俺に抵抗する手段を持ち得ない…」
忌避は、俺の首につけた手をさらに押し付ける。
「お前は処理するのにちょっと邪魔だ…さらばだ、来訪者さん」
やつの剣が、俺の喉に食い込む。忌避が俺の首を切り落としそうになったのと同時に、やつの頭や手に生えていた件は急速に錆びていった。
「?!なんだ、これは……っ!」
「忌避、お前は彗燦魂を一つ建劉園に置いてきただろう?それを俺たちが取っただけだ」
「………あれほどの距離を、この短時間で移動したというのか…まっさか、お前じゃあるまいし」
「?あいつは俺と同じように、転移魔法は使えたぞ。何か勘違いをしているんじゃないか?」
「…ゲライウスも、少しは成長したということか…素晴らしい。やっと、面白くなってきそうだ…!」
やつの体が錆び始めたのと同時に、ラナリリスやゲライウス達も俺の元へ着いた。本体に不備があると分身は消えていくようだ…俺たちは全員で、やつが散っていくのを見守る。
忌避は体からチリを出しながら、最後の声を出した。
「最後に1つだけ、助言をしてやろう。俺の分身は7体。俺はそのうちの1人だ…あと6体、せいぜい頑張ってくれよ」
「…うるさい!!」
その声に耐えかねたのか、ゲライウスはかろうじて残っていたやつの頭を粉々に切り裂いた。忌避が消えたと同時に、街にいた寄生人間も消えていく。
「一旦は、これで一段落ついたか」
「あぁ。3人とも、協力感謝する。街の状況の把握は俺たちがやっておくから、バーザールたちは休んでいていいぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて、休ませてもらうとするか…」
俺は一つ、ヘルメスに確認したいことがあった。忌避が背後をとってきた時に言っていた、あの「複製」…俺の槍の生成との違いが見出せれば、俺だって習得できる可能性がある。
「そういえば…ラナリリスとキュラゴクス!無事か?」
「そんな大げさな…ケガを負っているように見えるか?」
「少なくとも、私たちは大事ないです」
「よかった。やっぱり前の戦いが少しトラウマで…それで、2人はどうするんだ?俺は少し今回の戦いでヘルメスに聞きたいことがあるんだが」
「私も、少し行きたいところがあります」
「俺も、同じくだ…ということは、今から個別でいくことになるな」
「それじゃあ、後で部屋で集合だ」
そう言って、俺たちはそれぞれ行きたいところへと進んでいった。俺はさっきの忌避が消えたところへ赴き、その戦闘の痕跡を眺める。
上空から見ていたことを思い出す。奴が武器を取り出す際にはなにやら手で結界らしきものを生み出してそこから武器を出していた。俺はそれを真似て手を動かしてみるが、予想した通り、その結界が出てくる事はなかった。
どうしたものか…ヘルメスは戦闘を見ていなかっただろうから、何も有益な情報をつかんでいない。
(ヘルメス、この世界に複製ができる魔法はどれだけある?俺の槍を複製するときに使っている魔法と、俺が今試しにジェスチャーしてみた魔法は何が違う?)
〈この世界の複製魔法は、人の時代の始めに生まれたものが17種類あります。内、今日まで現存しているものは2種類です。バーザール様が使ったのはそのうちの1種類で、今ジェスチャーしていただいたものはその2種類の中に含まれていません。もし複製魔法であったなら、それは3000年以上昔のものでであると推測されます。〉
やつが何年生きているかわからないが、少なくとも40000年以上は生きているはずだ。それなら十分にあり得る範囲…あいつはヘルメスでも知らないほどの古代魔法を使っているのか。
だがそれは同時に、俺が手に入れればとても強力な武器になると言うことだ。無から武器を生み出す…明らかに強い。
とりあえずこれは要研究だな…次の忌避と戦うときにまでは、習得しておきたい。俺はやることもなくなったため、街の人助けに回ることにした。




