76話 襲撃を受ける
「お前たちは残留勢との連絡、バーザールたちは街のみんなを助けに行ってくれ!俺は彗燦魂を保管しに行く」
「わかった…くれぐれも気をつけてくれよ!」
目の前では多くの人々が倒れ、苦しみ、悲鳴を上げている。こんな事ができるやつは、あいつただ一人だけだ…
「大丈夫か?!ちょっと待ってろ…2人は、人々を助けてくれ!俺は…」
俺は急いで聖なる領域を発動しようとする。しかし、俺はそこで固まった…
「ふははははは!!ははははは!!!!」
クソが。予想した通りだ。街の上空にいるのは肆使の1人、忌避…シャントタウンに襲撃していたから、3つの都市で忌避と出会うことがなかったのか。
俺はその気迫に少し怖気付きながらも、思考を巡らす。今は、アルカディアを発動すべきか…?いや、ただでさえ全快時で負けたのに今ここで大量に魔気を消費する技を放ったら、街のみんな以前に俺が負けるんじゃないか?
そうやって俺が迷っているの見透かしているのか、キュラゴクスは俺に一言告げた。
「バーザールは、思った通りに動いてくれ。俺たちが受け止める!」
「だけど、2人じゃ…」
「すでに一回、戦ったことがあるんだ。俺たちに任せてくれ」
「受け止めると言っても、援軍が…ゲライウスたちが来るまでの辛抱です。その程度、出来ます」
「だが……前回なりかけたように、今回は死んでしまうかもしれない。それなら、俺も…」
「戦いに身を投じないものが、戦争を止めるなど出来ない!!早く行け、バーザール!」
キュラゴクスが大声で叫んだのはいつぶりだろうか…俺はその声にハッとする。そうだ、俺たちに任されたのは…街のみんなを助けることだ!
「死ぬなよ…!」
俺が宙に上がり本気でアルカディアを解放すると、街のあちこちで緑色の光の柱が天へと昇っていった。同時に、街からは驚きの声が上がり始める。
俺は街の中心地の人々を回復させた後、建物が崩れた方へ向かう。あっちの被害は中心地と同じく酷いのに、救助が追いついていない…回復が行き届いていない街の端の住宅街は瓦礫の山と化し、もはや生き残っている建物はほとんどなかった。唯一残っているのは、あの塔だけ…
「助けてくれ!!親父が、まだ中に…!」
「待ってろよ、今行くからな…!」
「うわあぁぁぁん、ママーー!!」
そこはまるで地獄だった。全方向、何処を見ても苦しみと悲鳴が存在しているのだ…俺は近くで倒れていたおばあちゃんを見つけ、助けようとする。
すると、なんということか…建劉園で見たあの寄生人間が俺たちに襲ってきたのだ。本来なら素早く避けるところだが、背中にはおばあちゃんを乗せている。火弾を撃つこともできない…まずい!
f 俺が背中を守ってやれないと覚悟した瞬間、銃声がした。
後ろを振り返ると寄生人間たちは網に捕らえられ、身動きが取れなくなっている…そこに現れたのは、2人の治安維持隊員だった。
「来訪者さん!ここは私たちがやりますので、あいつを止めてください…!」
「これくらい、俺たちだって押さえておけますよ!!なあ、みんな!!」
掛け声を出した治安維持隊らしき人の後ろには、たくさんの増援がいた。彼らは気合を入れてそれに応える。皆、覚悟を決めてここにいるのだ…
「わかった。お前たちに任せるぞ!」
「「はい!!」」
治安維持隊なら大丈夫。彼らは、俺をそう思わせることができたのだ。きっと、ここで苦しんでいる人もそういう思いを抱くことができるだろう…
忌避は、相変わらずラナリリスたちを舐めてかかっていた。前と同じように剣を2本用意して、ただ弄ぶように斬り合っている…だが、今はそれでいい。
ここで無意味に力を使うよりはみんなが追いついてから使った方が効果的だということは、ラナリリスたちもわかっているようだった。
「……お待たせ…っ!街の方はあらかた大丈夫だと思う!維持隊が来た!あとはこいつだけだ!」
「こいつ呼ばわりか…お前も随分偉くなったもんだなぁ」
そういうと、忌避は手を一気に握る。その瞬間俺の周囲に剣が現れ、俺の方へと向かってきていた。まずい、槍だかファイヤーボールだかの準備をしていたせいで対応できない…!
ヒュンッ!!!
後ろから来たやつが見事に、俺を剣の攻撃から救い出してくれた。こいつも飛べるのか…!心強い!
「何殺されそうになってんだ!行くぞ!」
聞き覚えのある声に地上を見ると、ゲライウスたちの援軍が到着していた。これで、形勢逆転だ!
「ああ!忌避を倒す…!」
奴は俺たち十数人を見ながら、指を鳴らした。すると背後から大量の剣、槍、斧…あらゆる武器が出てくる。まさか、剣以外にも持っていたとは…!
「………ほう。久しぶりだな、ゲライウス」
「今回その役を担うのは誰になるか楽しみで仕方がないぜ、忌避ゥ!!!」




