69話 欠けている遺書
隠れた家が一軒家だったからか、周りが全て開けているからか。どうやっても狙撃手の的になってしまう状況を、打破する方法を思いつけない。
かくなる上は、地面を掘り進んで…いや、そんなことをしていたら何日ここにとどまることになるか分かったもんじゃない。
「2人とも、狙撃手がどこにいるかわかるか?」
「ラナリリスに向かって、バーザールの方から弾が飛んできたと言うことは…南西か。おそらく南西に狙撃手はいるんじゃないか?」
「それと、もう1人。北東にもいるかと」
「ああ。貫かれた後は2つあった。あの短時間で弾を2つも撃てるわけがない…貫かれていた弾道は平行だったし、おそらく狙撃手はエリオリアスを中心にして対称に2人いる」
「となると、地面を進むしかないのか…!バーザール、お前は地下を楽に掘りすすめられる魔法を持っていたりしないのか?」
「そんなピンポイントでそこまで便利じゃない魔法を持っているわけないだろ…」
だが、狙撃手はスコープを通して俺たちを狙っているはずだ。スコープ。スコープ…?それなら、光に弱いんじゃないか?
そうだ、俺はちょうど光を出せる魔法を持っている!いい案が思いついてしまった…!
「2人とも、いい案がある…こう言うのはどうだ?」
それを2人に伝えると、2人は悩みながらも、最終的にはうなずいた。
「それは…随分と命懸けですね」
「だが、地面を掘り進めるなんて言うことをしなくていいと言うなら話は別だ。何週間もここに閉じ込められるのは嫌だからな」
「よし、決まりだ。それじゃ、今言った手順通りに頼むよ」
俺は持ち場につくと、地面に向かって火弾を連射した。俺の行動が少しでも遅ければ、2人はどちらも簡単に死んでしまう…そう思うと緊張のあまり、ファイヤーボールを暴発しそうになる。
「それじゃあいくぞ…3…2…1…」
準備は万端だ。まずは俺が2人を天高く投げたあと、直後に…
「0!!」
ラナリリスとキュラゴクスは、空へと向かって登って行った。今頃、狙撃手はそれぞれがそれぞれに標準を合わせているはずだ…
「おらあぁぁぁぁ!!!!」
俺は地下に押し込んであったファイヤーボールを操り、一気に地上に持って行った。それが放つ圧倒的な光で、狙撃手の目を壊す…!
バァン!!バン!
今度は銃声がした… 2人に当たっていないか⁈音のした方を向いて目を凝らすと、逃げる準備をしている狙撃手を見つけることができた。逃すか!!
俺はやつに向かって槍を数本投げ、そいつを仕留める。後は、真反対にいる狙撃手だけ…
俺が後ろを振り向いてその方向を向いたとき、弾が俺の胸をまた貫いた。今日、みんな俺の胸に穴を開けようとしているのはなぜ…?
だが、場所が特定できただけいい。俺は再び狙いを定めて、その槍を飛ばす。もう1人の狙撃者の方から微かな悲鳴が聞こえた後、言葉通り空中に投げ出されていた2人は華麗に着地した。
「2人とも!どっちも討伐できた!」
「ナイスだ、バーザール!流石はドラゴンだな」
「ありがとうございます、バーザール様。それでは、エリオリアスのメモを…」
俺たちはその死体の周辺へ行き、ポケットを探ってみる。案の定、そのポケットには一切れの紙が置いてあった。
“これを見ている君へ
これを渡された者は非官だという前提で記しておく。
私はカシダーノ家の家へ出向き、このゲームの真の……を聞き、見つけた。それをここに記しておく。
①主催者は死を司るヴァルダとその肆使。今回はその…
②生き返ることは、普通はありえない。これは周知だが…
③この主催者は、なんらかの方法で享楽…
これを読んだあなたが、毎日を幸せに過ごせるようにな…”
「…ところどころ血に染まっていて、読めたとしてもこれが限界だ」
「享楽…?享楽って、あの、あれか?3大不明ヴァルダの享楽か?」
「おそらく、そうかと思われます。スケイドとその肆使が、なんらかの方法で享楽…になったのでしょうか?」
「いや、流石にそれはないんじゃないか?俺が予想するのは、手を結んだんじゃないかってことだ」
「だとすると、相当厄介になりますね…もしスケイドと敵対したとしたら、享楽も出てきかねないのですから」
「別に、そんなこと心配しなくてもいいんじゃないか?敵対するようなトラブルを起こさずに、全員を倒して……」
俺はそこで言葉に詰まった。復活できると言っていたエリオリアスは、狙撃銃であっさりやられた。
つまりそれからわかるのは、俺たちがこれから参加者を全員殺した時に実際に死ぬということだ…
「やっぱり、全員を殺さなきゃいけないのかな…?」
「………ああ。それしか、道はないだろう。この頂上遊宴に勝利し、バーザールの兄を生き返らせる…そうしなければ、元の世界で核が消える未来はない」
「数人の死を犠牲に、数万、数十万の命を守る…聞こえは素晴らしいですが……」
「だが、やるしかないんだろうな…」
「その前に、バーザールは出会った時に先手を取られて殺されないように意識するのが先だな。槍だったからいいが、なんだ?その…『どんな生物でも絶対に殺す武器』みたいなものだったら終わっていたぞ」
確かに。俺には少し高をくくっているというか、斬られたりしても死なないことに慣れているのかもしれない…この世界じゃ何が起きてもおかしくないからな、もっと気を引き締めなければ…
俺たちが決意を固めていた時、俺のポケットに入れた未確認のスマホから新たな着信音が流れていたことには誰も気が付かなかった。




