68話 神々の遊戯
「死なない、だと…」
「まあ、俺はちょっと特殊なやつでな…俺も俺自身がどうやったら死ぬのかはよくわかってない」
俺はそう言いながら構えた槍を消して、刀を構える。刃を出して戦うのもいいが、それだと相手が死にかねない…やっぱり、戦うにしてもできるだけ死者は出したくない。
「さあ、第2ラウンドだ!」
ゲームさながらの決め台詞を放ったが、敵の2人に反応は見えない。むしろ、懸念を抱いているように見える…
「………面倒なことになってきたな。敵が死なないのなら、戦う意味がない…ゲライウス。君ならどうする?」
「俺なら…こうする。あとは任せた、エオリア」
そう言った瞬間、槍使いの体の周りに霧が立ち込めていく。再び辺りを見渡せるようになった時には、彼は消えていた。
逃げた…?伝説によくある、ヴァンパイアみたいな逃げ方だな。
「……逃げた、だと…」
これには流石の剣士の方も驚いているな。仲間が自身を置き去りにして逃げたんだ、そりゃあそうなる。
「それじゃあどうする?剣士さん。このまんま殺し合うか、………」
「わかった。降参する」
「……意外とあっさり終わるな…」
「仲間に裏切られたからな。かわいそうに」
「あいつは、仲間ではない。むしろ敵だ。『敵の敵は味方』というやつだ」
「まあ何はともあれ、被害者ゼロで鎮圧できたのは嬉しいな」
「いや、お前は胸を貫かれただろう…?被害者じゃないか」
「いや、結局は無傷だし」
そういえば、危険は去ったものの次は何をすればいいんだ?どうやったらこのゲームの勝者になれる?
それらの情報を握っているのはおそらく、この場に1人しかいない…そう、あの女剣士だ。
「剣士さん。この試合のルールを教えてもらってもいいかな?」
「『剣士さん』ではない。エリオリアスという名前がある」
めんどくさいタイプかもしれない。でも、剣技に関しては普通に強かったからな…
「エリオリアス、このゲームのルールを教えてくれないか?」
「知らないで参加していたのか…?このゲームは、死を司るヴァルダ(スケイド)に選ばれた肆使が気まぐれで開催するゲームだ。死のヴァルダなだけあって、殺すことが重要になっていることをすぐに察知しているところは流石だが…少しも、噂などで頂上遊宴について聞いたことはないのか?」
「ないな……そもそも、俺の辞書に事前学習という2文字はない!」
「誇ることではないように思えますが…」
「それで?殺すってことは、相手も殺しにかかってくるってことか?」
「ああ。だがもし死んだとしても、本当に死亡するわけじゃないから安心しろ。殺されると自動的に生き返ることができる」
「マジか…いくらでもリスポーンできるとか神か?これで心置きなく殺し合えるって言うわけか」
「そして、これから言う情報は誰にも渡すな。実は、死のヴァ…」
そう言って、剣士は俺の耳に口元を近づけて何かを喋ろうとした。しかし、それから一向に声が聞こえてこない。不思議に思って横を見ると、そこにエリオリアスはいなかった。
生暖かい水が、頬を滑り落ちた。水…?俺はそれを手で拭い見てみる。その水は赤色だった…血だ。エリオリアスは地面に倒れていた。
「おい、大丈夫か?!エリオリアス!!」
「死んでいる……のか…?バーザール、お前…」
「いや、俺は何もしていない!ただ急に…」
そこまで言って、まだエリオリアスが生きていることに気がついた。出血の量がものすごいせいで、もう生きる道はないだろうが…
「君…わたし、の……ポケットに………メモ………が…………」
そこまで言って、エリオリアスの目は光を無くした。狙撃…?いや、銃声は聞こえなかった。なのに、胸…心臓の付近には、2つの穴が空いている。
戸惑っていると、俺に向かってエリオリアスを貫いた弾丸が飛んできた。それは俺の足をかすめ、ラナリリスの方へと飛んでいく。
「バーザール様、危険です!まずは建物の中へ!」
それを聞いた俺たちは、一目散に近くの家へと逃げ込んだ。ドアを閉めた直後、家の奥から何やら見覚えのある音楽が流れてくる。
これは……着信音?この世界にスマホはなかったはず…俺はその音を頼りに、奥の部屋へと進んでいった。
その部屋には、1つのスマートフォンが机の上に置かれていた。
画面ロックは解除済み、キーボードも打ち掛け。誰かが、ついさっきここにいた…?
「そういえエリオリアスは最後に何を言っていたんだ?うまく聞き取れなかったが、何かを喋っているのはわかった」
「彼女のポケットに何かが入っているらしい。メモか何か…おそらく、それは今回のこの試合の上で重要な役割を果たすと思う」
「そのまえに、エリオリアスがなぜ亡くなってしまったのか。どう見ても、誰かがやったようにしか思えません」
「多分俺の前世にやった狙撃銃ってやつだ。距離数キロ先から、一方的に攻撃ができる。ただわからないのは、なぜ銃声が聞こえなかったのか…」
意味不明が多すぎる。まずはいったん、そのメモとやらをみせてもらうか…そのためには、あの銃をどうするか、だな。
「『死』の中で『享楽』に溺れる。それもまた、『死』なんじゃないのかい?」
「さあ?どうなるかなんて、私でもわからないんだ。それなら、他の誰がわかるって言うんだ?」




