66話 刀で入場
「こんなものを、泡沫は残していったのか…なんだこれは?」
俺とラナリリスは、部屋に戻って泡沫から貰った紙を見せた。案の定、キュラゴクスは予想通りの反応をする。
「これは、頂上遊宴という試合の招待状らしい。あいつがラナリリスへ向けて、去り際に俺に渡すように言ったらしいんだが…正直、これが偽物っていう可能性も否めない」
「ですが…これが本当に招待状でしたら、この旅が大きく進みますね」
「ああ。願いを一つ叶えられる…『この世界から核爆弾を無くし、2度と持ち込ませられないように、使えないようにしてください』」
「夢を描いて行くのもいいですが…まずは、この紙に書かれている座標の元へと向かってみましょう。日付や時間は指定されていないようなので、おそらく…」
「もう始まっている、あるいは着いた時に始まる…」
「ああ、そうだろう。バーザール、準備はいいか?こういうものは、兵士たちに見抜かれる前に行動した方がいい」
いや…待て。もしこれが、俺を貶めるための罠だったら?ここにいる2人までも巻き込まれる。それは、それだけは絶対に避けなきゃいけない…
「ああ、行こう。だけど、2つだけ約束して欲しい。一つは、危険があったらすぐに逃げること。二つは、俺が帰ってくれと言ったらすぐに帰ること」
「?……バーザールが俺たちを縛るなんて、珍しいな」
「私は了解しました。約束を守りましょう」
「俺もいいぞ。今回は、それほどのレベルだということか」
「うん。今から経験するのは、戦争以上のもの…神の元での戦闘だ。その上、これに着いては一切記されていない」
「少なくとも、敗者は殺されていることがわかりますね。勝者は…」
「おそらく、記憶を消されているか…敗者と同じように殺されているか。いずれにせよ、心してかからなければいけないということか」
「ああ。2人とも、協力してくれてありがとう」
「それでは、すぐに向かいましょう。善は急げです」
俺は急いで外出の準備をして、部屋を出る。泡沫から渡された招待状が本物であって欲しいという希望と、偽物であって欲しいという葛藤が頭の中を巡る。左手には、あの刀が握られていた。
「ここですか。想像していたよりは随分…」
想像していたよりは、随分と簡素な作りをした建物だ。中からは、酒飲みたちの喧騒が聞こえる…俺は半信半疑になりながらもドアを開けて中へ入ってみると、部屋の中は急に静まり返った。
「あれ?外からはあれだけうるさく感じたのに、入ってみると静かだ…バーザール、お前何かしたのか?」
「いや、何も…そのすぐ俺を疑う癖、やめてくれよ」
部屋の奥へと進んでいくと、暗い部屋の中央には宙に浮かぶ石?岩?のような結晶があった。そういえば、手紙に…
「やっぱり……手紙に描かれているこの絵と全くおんなじだ。多分、この結晶が目印なんだろう」
「つまりは結晶に何かをすれば、ゲームの試合場に行けるということですね。問題は、どうすれば正解なのかですが…」
確かに。近づいても道らしきものは出てこないし、触れたり殴ったり蹴ったりしてみたが一向に反応はない。
「もしかしたら、泡沫から貰ったその刀で……いや、そんな訳ないか」
「…つまりキュラゴクスが言いたいのは、この刀でこれを斬れってことか?」
「ああ。咄嗟に思いついたんだが、それでその結晶が使えなくなったら元も子もないからな…忘れてくれ」
「………ですが、それ以外に方法が思いつきません。ここで長い間時間を浪費するより、試してみた方がいいかと」
「………………やるか」
俺は意を決して、刀を構える。この行動が、合っていますように…勢いよく刀を振り下ろすと同時に刃は決勝に弾かれ、そこには一筋の線が生まれた。
なんだこれ…?空中に、線が刻まれている…?手を伸ばして触ろうとするが、そこには何もないかのようにすり抜けた。
「刀で振るった部分が線となって現れたということは…これでドアを描けば、その正体されたところに行ける、ということでしょうか?」
「ナイスアイデアだ。バーザール、やってみてくれ」
言われた通りにすると、その四角形ができた瞬間、見知らぬ街が見えた。まさか、刀を使って試合場に行くことになるとは…
「本当に合っているなんて…」
「だが、これで参加権を得たも同然だ。さ、早く行くぞ!」
「慎重にな。今回は、今までとは違うんだ」
「それ、何回も聞いたぞ…」
「まあまあ、お二人とも。喧嘩しないでください」
「あと1人だ。泡沫のプロキシだけだな」
「今回は、どんな奴が来るかなぁ…!やはり、今まで通りエオレウス一強かな?」




