65話 禁断の抗争
俺は、夢を見ていた。
〔ようこそ。我がステージ:リチュアル・ワールド・スワップへ!〕
〔ようこそ、大陸の運命を分けし決戦の地へ〕
〔ようこそ、この大陸最後の砦:*****へ〕
〔久しぶりだな、バーザール。俺の事を忘れてしまったか?〕
なんだ…?聞いたことのない言葉が次々と並べられている。きちんと聞こえたのに、なんと言っていたかは思い出せない…それに、なんだかすごい不思議な感じがする…
あれ、俺は確か刀を刺した後の気絶して、どうなったんだ?まさか、死んでしまったのか…?そんな事を考えていると、ぼんやりとした頭の奥に聞き覚えのある声が響く。
「バー…はまだ…みはっ…くから、お…っってもい…」
「…りまし…たかた…このまち…いします…ちろん、…みつから…げんて…です…」
「…がみのせ…ちのことは…れより、とも…きたいとこ…んだ」
そうだ。泡沫、あいつは俺の兄さんを…考えれば考えるほど、だんだんと怒りが込み上げてくる。
そうしているうちに、泡沫が目の前に出て来た。俺はそれに手を伸ばす。お前には絶対に同じ目に合わせてやる…!!
「待て…!」
腕を伸ばしながら勢いよく起き上がると、下半身が沈むような感覚に駆られる。俺はキュラゴクスに運ばれて、ベッドの上で横になっていたのだ。
さっきのは、夢か…未だに、夢の中で言われたあの言葉は思い出せない。
「バーザール、起きたか…!調子はどうだ、どこか悪いところはないか?」
「あ、ああ……」
俺は刀で自ら刺した腹を見る。傷は全く見えず、なんなら鏡の世界に行く前よりも綺麗に見えた。問題は、まだ全身が痺れることだけだ。
「今の所は、痛みとかはないな…あの刀、本当に出血はしないみたいだ」
「痛みでショック死か…暗殺に使えそうだな。あ、いやそういう意味じゃないがな?ふと思っただけだ」
「それで、あいつはどこへ?」
「ああ、ラナリリスか?ラナリリスは…」
「違う、泡沫だ」
「泡沫は、今さっきラナリリスと一緒に外へ出て行ったぞ。兵に見つからないが、とても綺麗なところがあると言っていたな」
ラナリリスと共にいるのか…そうであれば倒すにしても無理だ。クソ!!
「そういえば、泡沫から伝言だ。『その刀は渡す。今後刃を交えることになったら、それを使うといい』だそうだ…バーザール、戦うのは勧めないぞ。あいつには敵意がないと思う」
敵意がない…か。であれば、殺したのはどう説明がつくのだろうか?
「やつは…どういうつもりなんだろうな」
「俺に聞かれてもわからない。直接会って聞いてみたらどうだ?ラナリリスを追いかければ、会えると思うぞ」
俺はベッドから降りて、窓から外を眺める。心なしか、俺たちを探している兵が街にたくさんいるように思えた。
「少し、外に出てくる」
「わかった。バーザール、くれぐれも兵士たちに見つからないようにな」
兄さんが死んでしまった今、核を解析できる者はこの世にいない。前世の世界に戻ったとしても日本は核関連に手を貸してくれないだろうし、そのほかの核に詳しい国が手を貸してくれるとは思えない。万事休すか…
(なあ、全知王。俺はどうしたらいい?どうすればいいんだ…?)
〈……最適な解答が見つかりません。何もできないかと思われます。〉
どうしようもない…その一言が俺の頭をぐるぐる回る。それはすなわち、この戦争上で核兵器の使用を止められないことを示していた。クソが…!なんてことをしてくれたんだ、泡沫は!
「バーザール様ですか………?こんなところで、何をなさっているのですか?お身体は、大丈夫ですか」
その声に驚いて振り向くと、背後にはついさっきまで泡沫と共にいた人物…ラナリリスが立っていた。近くに、泡沫の姿はない。
「ラナリリスか…驚いた。体は痛いところが全くなかったから、リハビリも兼ねて少し考えを整理しようと思って…泡沫は、どこに行った?」
「そうだ、泡沫といえば…彼女はあなたに伝言を残していきました。確か…」
〈バーザール様。解析の結果、有力候補を一つ見つけました。〉
「〈頂上遊宴〉」
〈この試合に参加することで、解決する可能性があります。〉
「『それに出て、そして勝てばバーザール様の願うことが実現する』と言っていました」
ヴィクターレガリア?直訳すると、勝者の王冠となるが………あと、試合?なんのことだ…?
「そのヴィクターレガリアというのはなんだ?」
「申し訳ないですが、私にもよくわかりません…その伝言を言った瞬間に、泡沫は去っていったので」
(ヘルメス。お前もヴィクターレガリアって言っていたよな?それについて教えてくれないか)
〈ヴィクター・レガリアは、選ばれた者数名が命をかけて争う試合のような物です。全ての登場人物を制し、勝ちを掴み取った者1人には、それ相応の報酬が得られると言われています……しかし、今日までの歴史の中でこの戦いが開催された記録が残っているのは4回だけであり、その全ての試合での報酬の内容は記されていないことから「開催はヴァルダの気まぐれ」と言われているようです。〉
ついに、大きく神が関連しているものが出て来たか。旅が進むにつれ、どんどん規模がデカくなっていっているな…
「ヴィクター・レガリアは、報酬をかけて数人が争う試合みたいなものらしい。勝者には、さぞ素晴らしい報酬が支払われるみたいだ」
「では、その伝言と共に渡されたこの紙は…」
「ああ。おそらく、5度目の試合の招待状だ」




