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60話 トラブル発生!

 手紙を書き終えた。

 俺はペンをゆっくりと置き、深く息を吐き出す。落ち着いたら手紙を出すと言って、巡雩とスフィウスを置いて出ていったことを思い出した。

 封蠟を溶かして丁寧に閉じながら、俺は2人のことを想像してみる。2人とも、大丈夫かな…特にスフィウスは、あれから立ち直れただろうか?

 やはり、街から出ずに治るまで共にいたほうがよかっただろうか?この世界ではざっと約1ヶ月経っているから、向こうでは何が起こっていてもおかしくはない…

 この世界の情勢を聞こうとしても、兵たちは答えてくれなかった。それどころか、俺たちを変な目で見てくるのだ。もしかして、向こうで何か大きなことでもあったのか…?


「終わったか?」


 隣からキュラゴクスが静かに声をかけてきた。俺は立ち上がり部屋を出る準備をしながら、手紙を彼に渡す。


「ああ。意外と時間がかかったな……俺、こんなに文章書くの苦手だったっけか」


「上手く書けているといいですが…では、出しに行きましょう」


「そうだ、外に行くなら少し寄りたいところがあるんだ。兄さんに、博物館に行って荷物を取りに行ってくれと頼まれて…それも一緒に終わらせておきたい」


「わかった。俺も外に出てみたかったし、ちょうどいいんじゃないか?このままバーザールの兄さんの準備が整うまで部屋の中で待っているのも暇だし…それが終わったら、適当に街を回っておきたいな」


 

 それから、俺たちは3人で街へと踏み出した。郵便屋に手紙を出したあと、博物館へ向かっていく。

 街では、やはりいろんな人がこっちを見て来た。俺たち、もしかして浮いているのか?確かに少し服装は違うが…この手の街では、別に問題ではないはず。

 そう思いながら横を見ると、2人はそんなことも気にせずに普通に話をしている。周囲の目など気にしていないのか、俺が神経質になっているだけなのか、あるいは単に2人が周りからの視線に気がついていないのか…

 まあ気にしていないなら、俺も別にこんなに意識する必要はないか。


「兄さん、俺を便利屋みたいに使ってくるなぁ……これくらい、自分で取りに行けるだろうに」


「まあ、バーザールの兄さんなりの考えがあるんだろうさ。彼もあの様子じゃあ、そこまで暇じゃないだろうしな」


「それに、断る理由もないでしょう?博物館はこの街の中心部にあるようですし、街を見回るついでと思えばちょうどいいですよ」


「わかったよ。早く終わらせて、街を回ろう。せっかく来たんだし、これから世話になる所があるかもしれないからな」


 博物館は街の中心部に位置する、重厚で古びた石造りの建物だった。入ると、ある人物の肖像画が飾ってある。なんだか見覚えのある絵だな…そう思いながらじっと眺めてみると、兄さんの机の上にあった写真だと気がつく。もしかしたら、兄さんと関係のある人物なのかもしれないな。


「それにしても、綺麗なところだな…いや、そうじゃない。ここに来たのはそのためじゃない。荷物を預かるときはどこへ行ったらいいんだ?」


「あれだけ勲章があったんだから、兄さんの名前を出せば大体解決しそうなもんだけどな…」


「それはおにいさまに失礼ですよ………とりあえず、受付の方に話を伺ってみましょう」


 俺たちは受付の職員に兄の名前を出して預かりに来たというと、職員は一瞬だけ俺たちを見て驚いた。彼はすぐに専用の部屋へと入っていき、大きな木箱を一つ持ってくる。


「これが、受け取る荷物…通りで兄さんが自ら行かないわけだ。こんなの大きすぎて兄さんじゃむりだな」


「中身は何が入っているでしょうか…?」


「実はこれ、中身は獰猛な獣が鎮静剤を打たれて眠らされているだけだ…怖いぞ〜……」


「バーザール、やめてやれ。獣系は多分…」


 言わんこっちゃなかった。ラナリリスは、キュラゴクスの影に隠れて怖がっている。あれ、ガルヴァのことは触れたよな?なんだか不思議なやつだな。


「ごめん…ラナリリス。わざとじゃないんだ」


「絶対、わざとです」


「まあまあ、一旦それを届けてしまおう。色々見れるのは、それからだからな」


 俺たちは博物館から出て、城へと戻っていく。この中には何が入っているんだろう?開けるなとは言われてないし、少しくらいはいいか…?

 いや、多分俺を信頼してくれて頼んでくれたんだ。余計なことはしない方がいいな。色々な話題で話が盛り上がり、人通りの少ないところを通っていた、その時…


 突然、数人の兵士が前方から現れ、道を塞いできた。え、なんで…?俺、また何かやらかしてたか?


「止まれ。身分証を見せろ」


「………バーザール、お前何かしたか?」


「いや、何もしていない…はずだ」


 兵士の一人が冷たい目で、俺たちを上から下まで舐め回すように見てくる。


「最近、密航者が急増している。東側諸国は外国人の入国を一切禁止しているのは知っているだろう?お前たちのような服装が少しおかしいやつは、ほとんどが外人だ」


 え、外人はこの国に一切入っちゃいけないの?!そんな国、聞いたことないぞ?

 というか、俺たちはどういう判定になるんだ?ワープして来た人は外人に入るか…?


「なあ。もし、ワープをしてこの地に来た人がいたらどうなる?」


「もちろん、外人とみなして即刻逮捕だ」


「そうか…じゃあもし、逮捕に抵抗するとしたら?」


「実力行使、だ」


 また、戦闘か…


「そりゃあどう……もっ!!!」


「待て!動くな!」


 奴らは銃を向けてきているが…先手必勝!俺はとっさに火弾(ファイヤーボール)を作り出し、地面に落とす。辺りには砂埃が舞い、お互いの立ち位置が見えなくなった。こうなったら、流石に奴らも下手に撃てやしないだろ。


「今だ、逃げるぞ!」


「了解!」


 俺は2人の腕を引いて、路地を進んでいく。兵たちに目をつけられたってことは、弁明でもしないと部屋には戻れないな…まさか、この国が江戸幕府みたいなところだとは思っても見なかった。俺たちは後ろに兵士たちの姿が見えなくなったことを確認して、ようやく立ち止まった。


「逃げ切れたか…?」


「ああ。後ろには見えないな…2人とも、これからどうする?こうなった以上、下手に動き回らない方がいい気がする。また戦闘になったりしたら面倒だし、なにしろ兄さんの研究まではなんとしてでもこの街にいなけりゃならないからな」


「私も同感です。いつまでも先ほどのように逃げ続けるというのはできないですしね…しかし、どこに居ればいいのでしょうか?」


「そんなの、今まで通り貸してもらっている部屋でいいんじゃないか?まあいざとなったら他のところだな」


「そうと決まれば、早く帰りましょう。このまま外にいるのは危険です」


「そうだけど………まっすぐ帰るのは危ないだろうな。迂回しよう。どうせあそこら辺の町中には兵がうようよでてくるだろうし」


「迂回か……面倒くさいけど、仕方ないか」


「よし、決まりだ。全知王(ヘルメス)、この都市の地図を見せてくれ。城へ戻りたいんだけど、どこをどう行けばいい?大通りは通らずに頼む」


〈了解しました。あらかじめ検索しておいた検索結果をご覧ください…案内をスタートします。〉


 予め?こうなることを予想して、前から用意していたってことか?


〈はい。〉


「なんだよ!!!それが分かっていたなら言ってくれよ!」


「どうした?バーザール。急に怒ったりして」


「いや…なんでもない。あと、すごく言いづらいんだが…」


「なんでしょうか?」


「俺の今の声で、兵が集まって来たみたいだ………」

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