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55話 おにぎりと墓場

ここは内容があまりにも薄いので、時短をしたい方は飛ばしてもらっても構いません!次の話に繋がるわけでもなく、次の話があるわけでもなく…

次の話、間違えて消しちゃって今めっちゃ焦ってます

 3日目、あまりにも暇になった俺は夜からライブをすることにした。今回はキュラゴクス、ラナリリスも初めから参加している。もう漫画は読み終わったのか、今は読んでいないだけなのか…

 画面に映し出されているのは、無理を言って政府の担当者にお願いして買ってきてもらった山のようなおにぎりだ。今夜の夕飯はこれになる。バランスが少し悪いが…1日くらいいいだろ!

 コンビニによくあるコンブ、梅干し、ツナマヨみたいな定番ものから、都内の有名店が握ったという竹の皮に包まれてまだ温かさの残る高級なものまで、小さな円卓なら埋め尽くせるほどの量だ。

 俺は画面の向こうにいる数百万人の視聴者に向けてまずは一つ、ツナマヨのおにぎりを手に取って食べながら話す。


「……あー、聞こえるか。今、外の方でアメリカの基地とか大使館にデモとかやってくれちゃってる人がいるみたいだけどさ………ほら、聞こえてきた」


 俺は少し声を落として、マイクの向こうに語りかける。窓を閉め切っていても、遠くの方からメガホンを使った怒号やシュプレヒコールの地鳴りのような響きが聞こえてくる。

 ドラゴンになった弊害だろうか。なぜか人間の姿でも耳が異常にいいせいで、遠くの声が聞こえてしまうのだ。

 昨日の朝の大使とのやり取りがSNSを通じて瞬く間に拡散されたことで日本中の、いや世界中のアメリカの傲慢に対する怒りが頂点に達しているのは分かっていた。

 SNSを見れば、俺を支持するハッシュタグがトレンドを独占している。俺はあの条件で十分だと思って契約したんだけどな…


「正直に言うと、耳が謎にいいせいでちょっとうるさいんだよ。しかも…自衛隊がいるとはいえ現実的な話をすれば、アメリカが今までこの国を守ってきたっていうのは俺が異世界に行く前からずっと変わらない事実だろ?だから、あんまりデモを過激にやらないでやってくれよ。俺のせいで誰かが怪我をしたりしたら申し訳ないしね」


 俺がそう言うと隣でいくらのおにぎりを美味しそうに食べているキュラゴクスが、真剣な顔で頷いた。キュラゴクスが真剣に…?明日、天変地異が起こるのかもしれない。


「そうだぞ……よくわからないけど。一回のミスでアメリカの今までの功績がなくなるっていうのは可哀想だしな」


「ですがその一回のミスが、してはいけないミスだったのかもしれませんね…よくわかりませんが」


 キュラゴクスはキュラゴクスなりに、今回の騒動を考えているらしい。ラナリリスも、美味しそうに半熟卵のおにぎりを食べている。


「本当におにぎりは美味しいですね、バーザール様……皆さん、私たちのためにこのおにぎりを用意してくださった方々、そして毎日美味しい食事を作ってくださっている方々にも、感謝を」


 俺は改めて、カメラのレンズを真っ直ぐに見据えた。


「そう。このおにぎりを温かい状態で食べれるようにわざわざ少し前に買ってきてくれた政府の担当さんとか、お店の人。本当にありがとう。めちゃくちゃ美味いよ、感謝してる。実は…この世界で生きて居てもできないこういうことが一度はしてみたかったんだ」


 俺たちはその後、一つ一つの具材に驚き梅干しの酸っぱさに悶絶するキュラゴクスを笑い飛ばしたり、ラナリリスが海苔になぜか「光の加護を感じます」と大袈裟に感動する姿を眺めたりしながら、一夜を過ごした。

 ライブってのはいいもんだな。いろんな人の反応が見れる。まあ俺の場合はコメント欄の動きが早すぎてむしろ反応がわからないんだけどね…

 ひとしきり食べ終えて腹が膨れたところでライブを終わらせると、疲れが全身を包み込んだ。食後だからか、1時まで起きたからか。すぐに寝そうになる2人を支えながら横たわらせて俺も横になる。疲れているのに、妙に心地いい…そんなことを考えて瞼をもう一度開くと時刻はもう明日の6時。今日から、外出が解禁される!



 庁舎での生活は表向きは俺たちの護衛で裏は俺たちの監視…のはずだったが、実際にはほとんどホテルだ。それも、使用人付きのホテル。ネットサーフィンをして、2人と一緒に遊んで、配信をして、いつも作ってくれた料理を食べる。だが、そんな奇妙な日常もついに大きな区切りとなる「4日目」を迎えたのだ。


 この日、俺は一人である場所へ向かう。今日は「冨永啓一」として、両親や祖父母の墓参りへ行くと決めていた。


 キュラゴクスとラナリリスには、自由に行動していいと伝えてある。二人は、俺がおすすめのお出かけスポットを見せたときに、ある一つのものに心を奪われていたらしい。「お台場に、伝説の鋼鉄の巨人が立っているらしい」という噂。実物大ガン○ム立像だ。


「バーザール!あれは本当にあるのか?あんなに大きなものが、か?」


「情報によると、お台場にあるようですよ。お台場とは…どこなのですか?」


「ここから北に行ったところだな。そうだ、迷ってもよくないし政府の人に聞いてみたらどうだ?もしかしたら連れていってくれるかもしれないぞ」


 俺は、政府が爆速で用意した護衛車両に乗り込む二人を見送り、自分は電車で千葉県にある静かな霊園へと向かった。


 イヤホンで曲を聴きながら電車に寄りかかり、窓から流れる景色を見ていると、上京した時のことを思い出す。

 その景色は記憶にある日本の風景そのものだったけど、どこか現実味がなかった。思えば俺の家族は、俺がこの世界から消えるずっと前から悲惨な運命を辿っていたな…

 母親は、兄が突然の神隠し……異世界転移でいなくなった時のショックで、次第に精神を病んでいった。兄の帰りを待ち続けていた姿を、俺はなんとなく覚えている。彼女はそのまま身体を壊し、衰弱して亡くなった。

 そして父親は、その数年後、妻を失った悲しみから立ち直る間もなく、仕事帰りの交通事故でこの世を去った。

 俺を親の代わりとして親身に育ててくれた祖父母も、俺が21歳の時に相次いで亡くなった。




 霊園に着くと俺は管理人に案内してもらい、家族の墓の前に着く。

 俺は墓石の前に立ち、持ってきた菊の花を供えた。線香に火をつけ、その独特の香りが風に混じって鼻をくすぐるのを待つ。


「……久しぶり。俺だ、啓一だ」


 墓石に水をかけ、静かに手を合わせる。最近は色々と身の回りの出来事が多すぎて、何から言えばいいのかがわからない。

 

「じいちゃん、ばあちゃん……俺、今は一人じゃないからさ。うるさい仲間がいて、結構大変なんだよ。それと、母さん…兄は、生きていたよ。正確に今どこにいるかとか、どんなことしているかとかはわからないけど…」


 俺は片付けたあと管理人にお礼を言って、霊園から去った。ふと、ポケットの中でスマホが激しく震える。取り出してみると、キュラゴクスからのメッセージと写真が画面を埋め尽くしていた。俺は思わずその場で吹き出しそうになる。

 送られてきたのは、お台場の空を背に凛々しくそびえ立つ巨大なガン○ムのドアップ写真。そして、その下には必死な形相で目を剥いたキュラゴクスの自撮り。背景でラナリリスも驚き空を見上げているのが小さく写っていた。


『日本はこれほどのものを持っていながら、アメリカに頼っていたのか…?これがあれば、どんなことにも対応できそうなもんだがな』

『そうだ!腕試しといこう。あれは、どうやったら倒せる?教えてくれ!』


 どうやらあいつは、展示されているあの像をこの世界の最新鋭の兵器か何かだと本気で思い込み、戦い方を考えているらしい。ドラゴンである俺にあのガン○ムの攻略法を聞いてくるなんて……世界広しといえどあいつくらいだろう。


「……ったく、あいつら本当に何やってんだよ」


 俺は少し笑いながら、スマホをポケットにしまった。墓に最後の一礼をして、俺は霊園の出口へと歩き出す。ちょうど時間も余ったし、お台場にでも行くか…俺は翼を生やして、お台場へと向かっていった。

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