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32話 事の後

 部屋に着くと俺達はまず3人を寝かせる。ベッドに横たわらせると、痛々しい傷が見えてしまう。


 窓を閉め、カーテンを閉めてから、俺は治癒魔法をかけ始める。部屋が青色に輝き始め、たちまち傷は消えて行く。


「……ありがとう、バーザール。体が、少し軽くなった」


「そうか、よかった……でも、無理はするなよ。傷は塞がっても、消耗した体力は魔法じゃ戻らないからな」


 俺が言うと、キュラゴクスは力なく頷いた。隣ではラナリリスが、自分の腕を眺めている。


「……ねえ、バーザール」


 スフィウスが、窓を開けながらこちらを見た。その瞳には、治療を終えた安堵よりも、まだ拭いきれない困惑の方が色濃く残っている。


「少し、いいかな?」




 俺とスフィウスは通りへ出た。


「キュラゴクスがあそこまでなるなんて、やっぱりおかしいよ。いくら動物たちが強かったからって……」


「……ああ。あいつが、途中で息を切らしてたなんて信じられねえしな」


 俺は部屋があるであろう窓を見やった。起きる気配は、まだない。


「……私、やっぱりあの男が何かしたんだと思う。そうじゃなきゃ、ラナリリスだけがピンピンしてた説明がつかない」


 スフィウスの言葉には、どこか説得力がある。


「確かに、そうだな。弱体化でもしてきたのか?」


「わからない…そんな魔法、聞いたことない」


 人々は、キュラゴクスらが戦っていたところに向かっている。スフィウスは、それを力のこもっていない目で見つめる。


「でも、もしそうなら、あの男はそれを使えるほどの知識を持っているってことよね」


 スフィウスは少し視線を落として、独り言のように言った。


「そうだな…なんだか、怖くなってきた」


「まあ、今はそんなことを考えてもしょうがないか………まずは3人の療養だね。よし、部屋に戻ろうか」


 俺は壁から背を離す。風が、背中を冷やしてくる。


「そうだな。とりあえず、3人が起きたら何か食べられるように準備しておくか」




 宿に戻り、軋む階段を上って部屋の扉を開けると、そこには既に身を起こしているキュラゴクスの姿があった。


「……お、起きたのか。気分はどうだ?」


 俺が声をかけると、ベッドの端に腰掛けていたキュラゴクスがゆっくりとこちらを見た。顔色はまだ疲れていそうだが、その眼はいつもの明るさを僅かに取り戻しているように見える。


「……バーザールか。」


「ああ。スフィウスと少し外の空気を吸いに出てたんだ。……体の具合はどうだ?疲れているみたいだけど」


「だいぶ、良くなったぞ。あとは背中が痛むくらいだ。」


 悔しそうにしているキュラゴクスの隣で、巡雩が静かに起きあがる。


「あら、みなさんもう動き始めていたんですか。すみませんね、遅くまで寝ていて」


「いや、ちょうど今きたところだよ!すこし外に行ってて…」


 そんなことを話しているとラナリリスも起き上がる。やっぱり、うるさくしすぎてしまったか?


「皆様、待たせてしまいましたか?」


「いや、ちょうど今来たところだ。……そうだ。みんな、重要なことを聞きたい。とても重要なことだ」


「なんだ?」


「なに?」


「「なんですか?」」


「ここには、どれだけ滞在するんだ?」


「「「「…」」」」


 ?あれ?地雷でも踏んでしまったか?


「すまないが、少しまだ辛くてな。1、2週間は必要かもしれない…んだ」


「私もまだ治っていなくて…」


「みんながそういうなら、しょうがないよね〜〜…」


 ………………


「そうか…くれぐれも、お大事にしてくれよ?」


「…………」


 ラナリリスからの視線が痛い。ここはひとまず、退散しよう。


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