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30話 なんだ、このかめ

 神さまが予言した通り、翌朝の空は抜けるような青だった。目の前の木々の隙間からは、海が覗いている。


 少し大きい鳥たちが、浜辺の家々の屋根で鳴いている。街の人に聞いてみたところ、ここの海の景色は大陸四大絶景の一つらしい。これには期待できるな。


「おいバーザール、早くしろ!置いていくぞ!」


 先を歩くスフィウスが、何度も振り返って俺を急かす。その足取りはいつになく軽い。



 しばらく歩くと、木々を通り抜けて海に出る。


「……うわぁ…………!」


 思わず声が漏れた。


 そこに広がっていたのは、俺が知っている「海」とは少し違っていた。水面はただの青ではなく、透き通ったエメラルドグリーン。波が打ち寄せるたびに、砂浜にはこれもまた綺麗な白波が現れる。


「神さまが言っていた通りだな………」


 俺たち五人は、吸い寄せられるように波打ち際へ駆けていった。


 冷たい水が足首を叩く。カニが足の隙間を歩いていく。それを観察していると、大きな水の塊が襲いかかってきて…


 バッシャーン!


 ?!水をかけられた…?


「バーザール!よそ見し過ぎだぞ!ここに入った時点で戦いは始まったんだ!」


 俺、戦い始めたつもりないんだが…?


「どちらが勝つか、見ものですね」


「私はバーザールに賭ける!」


「私もバーザール君ですね」


「私もバーザール様に賭けます」


「少しくらいは俺でもいいだろ?!」


 みんなの中で笑いが起きる。ふと岩に座っている三人を見ると、何やら小さい生き物がその前を横切っている。


「「……? なんだ、あれ」」


 スフィウスと俺は、目を細めてそれを指し示す。


 だんだんとこちらに近づいてくるのは、丸っこい、ぬいぐるみみたいな姿の亀だった。つぶらな瞳がキラキラしていて、甲羅には真珠のような貝殻がいくつか張り付いている。


 それが短い足をひょこひょこ動かして、一生懸命こちらへ歩いてきた。


「……亀?」


 スフィウスが首を傾げる。


 その亀さんは俺の目の前まで来ると、短い首をぐいーっと伸ばして、俺を見上げてきた。


「あ!やっと会えた!キミがバーザールだね?」


 頭の中に響いてきたのは、マシュマロみたいに柔らかい、子供のような声だった。


「え……俺の名前、知ってるのか?」


「なんですか?この可愛いかめ」


「可愛い…!」


「小さいな!言われるまで気が付かなかった!」


「……」


 ラナリリスは、可愛いものを見ると無言になるのだろうか。まだ知れてないことが多くて、時々怖くなる。


「うん!ボク、この海に住んでいるんだ。今日は君を招待しに来たんだよ!」


 亀さんは嬉しそうに顔を綻ばせる。可愛いな、おい。


「招待……?なんで?」


「そう!ボクの甲羅に触ってみて。すぐわかるから!」


 俺が戸惑いながらも、その光を反射させてキラキラ光っているの甲羅にそっと手を触れると、張り付いていた貝殻が光りだした。

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