1章改稿・試作読み⑩
「………………」
「………………」
「ねぇ、鷹取……こう、目に優しい色じゃなくて」
「もう少し、パステルカラーの服は……」
「あーうん……。そこになければないね……」
「えぇー!?」
「そんなっ!?」
「これでも十分に質がいいからねぇ……」
「質はね! 質がいいのはわかってるんだけど!!」
「もっと、選択肢が欲しいと言いますか……」
うーん、色はともかくデザインはかなり良いものが多いと思うんだけど……。
「店員さん。少し高めでもいいんだけど。冒険者用で丈夫かつ色合いがいいのはない?」
「そうだねぇ……普段は出してないんだけど……っとと。ここらへんはどうだい?」
奥から出してきたのは重厚な箱で、そこを開けると見るからに高級そうな服たちが顔を出す。ひと目でわかる、コレは貴族の流れ物だな。
「高そうだけど……どのくらい?」
「うーん、あまり売れないものだから金貨一枚……のところを仕立て直しを含めて大銀貨七枚でどうだい?」
かなり安い、仕立て代含めて三割引はもう投げ売り価格である。
「破格すぎません?」
「二十年前ならいざ知らず、あたしゃもう着れないからね。倉庫で眠らせているくらいなら別嬪さん二人に着てもらったほうがいいさ。それにこれは元々冒険者の支援用にイブキ公爵が補助金を出したんだよ、だからこの価格でやれるのさ」
そういうカラクリがあったんだな。ならばこの価格も納得できる。
「わかった。ありがとう。二人はどう? 良さそうなのはあった?」
「うーん、私はこれかなぁ、カワイイし」
短めのスカートにベルトで押さえたニーソが眩しい。上半身も袖口なんかにフリルがあしらわれていて細野さんによく似合いそうだ。
「 私は、スカートが長めの方が……」
蒼井さんが選んだのは大人しめの藍色に纏まった服だ。外側のロングスカートの裏地部分に魔法陣が刻まれているのが感じ取れる。
「ねえねえ鷹取、これは?」
細野さんが選んだ服の背中やネモフィラの外スカートの内側に刺繡された魔法陣を指差す。
「あぁ、これは魔法陣ってやつで。効果は……虫除よけと足元に草が絡まないようになる便利なものだね。後は汚損防止とか入ってるかな」
流石イブキ公爵の肝入だ、魔法陣の刺繍を施せる技術者を使っているとはかなり力を入れているようだ。
「魔法陣ってこんな形なんですね……」
蒼井さんもまじまじと見ている。まぁ、ここに描かれている魔法陣はデザインに溶け込ませながらのものだから普通よりもデザイン性が強いんだけどね。
「いや、実際形は様々で。細野さんのこのベルト、装着すると魔法陣が形成されるようになってるし。魔道具に使われてるやつはもっと簡単だよ」
置いてあった照明の魔道具を動かす。傘の部分に描かれた魔法陣は円の中に〝明かり〟の文字が書かれているだけだ。
「機能自体がシンプルな分、書き方に応用が利く……らしい」
俺も昔、魔法学術都市国の遠征で聞き齧った程度のものだし、高度なものになると魔法陣は専門の学部と会社が作られるほどにお金を生み出すのだ。
「らしいって……詳しくないの?」
「あぁ、正直専門外なんだよね。高度な魔道具になると秘匿性が高いから、少し陣がずれただけで発動しなくなったり……」
「へぇ……じゃあこれは洗ったりしたら不味いの?」
「いや、コレは大丈夫。糸を通して魔法陣を作ってるから、切ったり切れたりしない限りは永久に使えるよ」
「凄いですわね……」
そうして話している間に二人は服を選んだようだ。
「それじゃあ、二人とも採寸するからこちらにおいで」
おばちゃ……お姉さんに言われ間仕切りの奥へ入る。しばらく待っていると顔を赤らめた蒼井さんと、満足気な細野さんが出てきた。
「いやー眼福眼福。奏、また大きくなってたわね」
「うぅ……眼福と言いながら揉まれるのは恥ずかしいですわ……」
「それじゃあ、明日には調整が終わるからまた取りに来てね」
「わかりました、ありがとうございます」
「さて、あとは今日の宿を探さないとなぁ……」
服は安上がりだったとはいえ、最高級娼館の娼姫を二人引き取るというのは半端じゃない金額が必要になる。現に俺の貯金は数日前から残り二割を切っている。
「ということで、今日は一部屋になっちゃうけどそれでもいいか?」
「仕方ないわねぇ……私たちの為に使ってるし、今日もご奉仕してあげるわよ」
「え? いやいや! そんな意味では!!」
「しないのですか?」
「流石に、今日は……それに宿だから防音の魔道具とかないからさ!」
「そうなのですか? 残念です」
「残念だねぇ~」
小悪魔のような笑みを見せる蒼井さんと、ニヤニヤと笑う細野さんに煽られつつ、今日の宿を探すのだった。
◆◇
翌日、結局二日連続で大旦那の所にお世話になった俺たちはゆっくりと起きた後、注文していた服を取りに向かう。細かい最終調整をしてもらいながら早速着替える。
「おぉ……」
正直に言う、ドスケベだ。薬が抜けるまではどうしても気にしてなかったが肉感が凄い。とはいっても太ってる訳でもなくすらりとした手足にはっきしと見える身体のライン、正直、エロい。
「サイズは大丈夫かね?」
お姉さんが聞いてくるので俺が二人に通訳する。
「大丈夫、問題ないわ」
「はい、少しキツイですが問題ありません」
「あーそれは……諦めてくれ。なるべく身体のラインに張り付く服の方が武器や相手の攻撃が引っかかりにくいんだ」
俺やアインなんかも比較的に身体のラインに沿う服を着ている。俺の場合は背中に苦無を持ってるからだったり、アインは上からガッツリと鎧を着込むからちょっと意味合いが変わるんだけどな。
「蒼井さん、かなりきついなら服屋で調整し直してもらうけど……」
「だ、大丈夫です……さらしを少し強くしすぎましただけですのね……」
「あー鷹取。聞きたいんだけどこの世界ってカップ入りのブラジャーってないわよね?」
なるほど、そういうことか。
「あー、こっちの方は流通してないけど。最高級娼館か貴族街のお店にはあるよ。こっちみたいにルセットで持ち上げるタイプじゃないから楽になるかも。王都に戻ったら用意してもらえるように交渉するよ」
「頼んだわ。私も結構動いて困るのよ」
「そ、そうなんだ……」
「それは、オープンになった胸元のせいでは?」と、ツッコミそうになるのを抑えて苦笑いをする。それからお店を出て武器屋に向かう。これから二人の武器を選びに行くのだ。
「えっと……教えてもらった道は……っ!?」
「あ!」
「危ない!」
「…………!!」
物陰から飛び出した影を受け止める。小柄な為持ち上げる形になってしまうがふわりとした甘い香りが鼻腔を突く。
「おっとと……大丈夫かい?」
「……………(こくり)」
華やかなドレスを身に纏った少女が頷く。見たことある顔なんだけど思い出せない、恐らくどこかの貴族か大きな商家の娘なのは身なりを見ればわかる
「どこ行きやがった!!」
「………(ビクッ!)」
曲がり角の向こうから怒号が聞こえる。どうやら追われているらしい。
「二人とも、この娘を頼む。さっきの服屋に戻って。事情は話せないか……」
空間収納から紙とペンを出して事情を簡単に書くと、それを手渡す。
「コレ見せれば大丈夫だから」
「えぇ!」「はい!」
三人が洋服屋に入るのを確認すると、目の前にいかにもといった風体の連中が現れる。
「貴様、今ここを通った貴族の娘を知らないか?」
「知らないし、知ってたとしても不躾で怪しい連中には教えないだろ。貴族のいざこざには興味ないけど。そうやって刃物をちらつかせてこちらを害そうとするなら話は別だ!」
いきなりナイフを抜いて襲いかかってきた男の腕を取り締め上げる。それを見た連中がナイフや小剣を抜いて囲む。
「おいおい、こっちは善良な市民だぞ?」
ナイフを奪い男を蹴り出す。たたらを踏んで仲間に受け止められた男がこちらを睨む。
「貴様! イブキ公爵の雇った護衛か!?」
「イブキ公爵? いやいや、通りすがりの冒険者だよ」
どうも、作者です。
本日、著作「異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。」が発売されました!!
皆さん買って! 挿絵素晴らしいので!
ネモフィラとミモザとカトレアのえっちな挿絵あるから!!(オイ)
では! 書店回り行ってきます!!




