1章改稿・試作読み⑧
ポカンとした顔をする二人、デメリットを言った後にさらっと「自分に買われない?」なんて、最初から狙ったマッチポンプでしかない。
「いや、その……、少なくとも他の冒険者たちよりは強いから二人のことは庇護できるし。不服かもしれないけど、生活したり働いたりする環境は整えるしその上で二人の意思も尊重する。ただ…………」
「ただ……何よ?」
二人に見つめられる、この後のことを考えると言葉が詰まる。
「その……性奴隷の契約って付与するのはシンプルなんだけど、上書きする方法は殊更でね、元の主人の魔力を新しい主人の魔力で上塗りする。その際に奴隷側が受け入れて、初めて変更可能になるんだ」
視線を逸らしつつ濁して言うと、勘のいい細野さんはどうやらわかったようだ。
「つまりアンタと一発もしくは、それに準じたことをやらないといけないって感じ?」
「えぇっ!? で、でも確かに性奴隷はエッチなことをする為の奴隷ですし……」
疑いの目を向ける細野さんと内容に驚き、顔を更に赤くする蒼井さん。
「不本意だと思うけど、そうなるかな。俺の名誉の為に言い訳をすると、性奴隷の契約主と逃走防止の奴隷契約をしてるから、それの上書きの為に性行為をして、主人となる人から渡された魔力を体内に保持した状態じゃないと主人の書き換えができないんだ」
「体内に渡された魔力って、まさか?」
「あーうん、想像通りの物です」
「つまり新しい契約者の精液を中に出した状態なの!?」
「だから……言い出しにくかったんだ……」
「それは、本当に不本意ね……」
「ですが、見ず知らずの方と身体を重ねる必要のない、一番いい解決方法に思えます……」
「そうなのよねぇ……少なくとも他の有象無象よりは見た目もいいし」
「むしろ 私は、今の方が好みですし」
「はいはい。でも、鷹取はそこまでオジサンって感じはしないけどね」
トリップしてる蒼井さんに肩を竦めつつも細野さんが俺の顔をまじまじと見る。
「好意的に受け止めてもらえてよかったよ。それじゃあ改めて、もし俺が助けてもいいなら。嫌だろうけど犬に噛まれたと思って我慢してくれ」
俺が尻すぼみになりながら言う。細野さんはしばらく考え込むと顔を上げた。
「それじゃあ、さっさとやりましょう」
「細野さん!?」「恵ちゃん!?」
驚く俺と蒼井さんを置いてポイポイと服を脱ぐ細野さん、こちらの世界の服に慣れてないはずなのにスルスルと下着姿になっていく。
「ほら奏と鷹取も脱ぎなよ、さっさとやっちゃおう」
そう言って蒼井さんの服を緩める。その瞬間重い効果音がしそうな勢いで蒼井さんの胸が出現する。
「めめめ、恵ちゃん!? それを鷹取さんの前で言うのは!!」
真っ赤になりカタコトになりつつ、胸を押さえる蒼井さん。ポロリはしなかったけどあまりの弾みに目を奪われてしまった。
「ほら、鷹取の目が釘付けだよ?」
「あうあう……鷹取様……」
顔を真っ赤にして目がぐるぐるになった蒼井さんが混乱し始める。
「いや、でも……嫌じゃないの?」
「うーん、嫌か嫌じゃないかと言われれば微妙に嫌だけど。不特定多数の男性に抱かれるのはもっと嫌だし。娼館で過ごすよりも鷹取と一緒に居た方が将来性がありそうだしね」
「いいのか? おっさんだけど」
「いいも何も、私の彼氏も鷹取と同じくらいの歳だし。脂ぎったオッサンを相手にさせられるよりは数倍マシだし。それだったら顔のいいアンタに抱かれてる方がいいわ」
そう言いながら最後の一枚を脱ぐ細野さん、なんというか年下の裸を見るのは慣れてるけど、クラスメイトのとなると妙な気恥ずかしさがある。
「それは喜んでいいのかな? というか細野さんは彼氏いるんだ」
清楚風にしててもギャルっぽいし、いかにもな見た目で遊んでそうだし。
「なに? 処女厨なの? 奏は心配しなくても大丈夫よ、遊び歩いてる私と違って日本有数の大企業の御令嬢で、蝶よ花よと育てられた娘が婚約者も居ないのに経験済みは流石にありえないって!」
「ででで、ですが! それを鷹取さんの前で言うのは!!」
「なにー? 好みの男だからって気取らなくてもいいじゃん、むしろ男子は処女厨多いってし?」
「いや、違うけどさ……でも蒼井さんだって心の準備とか……」
「え? 奏は嫌なの? 鷹取とセックスするの」
「そ、それは! いやじゃないというか……むしろ理想の男性像に近いのでそういったことをするのはやぶさかではないというか……」
「じゃあいいじゃない。それに、こっちの世界は娼館が多いだろうし。それに娼館主と親しい鷹取は、必然的に女性の扱いが上手いだろうし、言っておいて損はないでしょ?」
「そそそ、そうなんですか!? 鷹取さんは百戦錬磨なのですか!?」
「いや、百戦錬磨かどうかはわからないけど、相手した女の子は多いと……と思う?」
「何故疑問形なのですか!?」
「いや、なんというか王都にある大旦那の娼館に入った子の訓練は大体俺がやってたから……って今のなし!!」
ニヤニヤしている細野さんと、もう顔自体が燃えてそうな蒼井さん。
「さて、鷹取の緊張も解けたことだし、三人でお風呂に行きましょう!」
「「へっ?」」
「という訳で、さぁ脱いだ脱いだ」
◆◇
「いやー気持ち良かったわね……色々と」
「はうぅ……恥ずかしい」
お風呂で色々と楽しんだ後、腰の抜けてしまった蒼井さんを抱え部屋に戻る。ベッドに寝かせると湯上り服を着た細野さんが棚を吟味している。
「ねぇ鷹取、この世界ってお店に出る処女の子って大変だと思うけど、何か対策はあるの?」
「えっ? えっと……スライムポーションっていう名前の回復薬を混ぜたローションがあるよ。それと媚薬」
「「び、媚薬ぅ(ですか)!?」」
「あぁ、どうしてもこの世界、お世継ぎ問題が付き纏うからね」
貴族はもとより、商家だって自分の子供たちに継がせないと安泰ではないし、そうなると自分の子供を産ませる為に必死に努力するのだ。その過程で媚薬なる物が生まれた訳である。
「「あぁ~なるほど……」」
「まぁ、娼館に卸してるのは効果も弱いし、薬師に聞いたのは気分が高揚しやすい酒精を混ぜてるのと鎮痛成分が主原料だからね、あとは普通の媚薬成分」
「へぇ……安全性は大丈夫そうね、それでどこにあるの?」
「えっと、そこの鏡の裏、戸棚になってるからさ」
細野さんが体を揺らしながら戸棚を開ける。その中から二種類の瓶を持ち出してくる。
「さぁ、飲むわよ!!」
「あっ、ちょっ!!」
そう言って備え付けの小さいガラスコップに入れた媚薬をひと息で飲み干す細野さん。
「あーやばい……」
「えっと……何がヤバいんでしょうか?」
「えっと……本来は他の飲み物に混ぜて使うんだ、それに一気に飲むとお酒が入ってるから一気に酩酊しちゃう……」
「それって急性アルコール中毒になるんじゃ……」
そうなのである、だから娼館で媚薬を使う時は娼姫がゆっくりと飲ませるように促していくのだ。
「そうでなくても混ぜ物してない媚薬だから普通の三倍くらいの効力になるん……でゅっふ!?」
細野さんに突き飛ばされベッドの上に倒れ込む。更に馬乗りになった彼女が瓶をラッパ飲みしようとする。
「だめー!」
止めようとする蒼井さんが飛び込んでくる。すると媚薬を口に含んだ細野さんに蒼井さんが押し倒され媚薬を口移しされる。
「ん゛ー!!!」
「ぷはぁ……たかとりぃ~」
「は、はい……」
「たかとりくぅ~ん……」
蒼井さんの目が据わってる。いくら回りが速いとはいえこんなに速攻で効果が出ることあるのだろうか。
「ちょっ、二人共。一旦落ち着こう! おちっ……むぐっ!?」
細野さんに媚薬を口移しされ目の前に火花が散る、これって原液より強っ……!?
「んくっ……ぷはぁ……」
満足そうな細野さん。媚薬の影響なのかいつもより力が出ない……。
「あはは~暑いですねぇ~」
顔に布を被せられた、朦朧とした状態で退けると二人の身体を隠していたタオルだった……。
「あっ……駄目だ……」
繋いでいた意識の糸が途切れる音がした。




