1章改稿・試作読み⑥
生徒手帳を出し入れする俺。その光景に気づいた人たちからの視線がこちらに向く。
「これは、秘密の話をできる状況じゃなくなったな……」
今までは人に注視されないから話してる内容(言語)に違和感が持たれなかったが。違う言語を話して空間収納が使えるとなると要注意人物として睨まれるだろう。
「なんだ、そこに居るのはホウショウじゃないか!?」
「へ?」
居るはずのない人間の声がして振り向くと、王都に居るはずの大旦那がそこには居た。
「要注意人物が居ると聞いて奥から出てきたら……どうしてこんな所に?」
「それは俺の台詞だよ、どうしてここに?」
「それは、それは愛しのホウショウの後を追いかけて~」
「うっさい黙れくたばれ、俺は冗談を聞いてるんじゃない」
睨みながら返すと、苦笑いをしながら真面目な顔になる。言語の分からない二人も圧され気味だ。
「怖い怖い、睨むなって。実はな、この店俺がやってるんだよ、以前お前に相談した時にカフェでも始めたらどうだって言ってたじゃないか」
「あーそんなこと……言ったか?」
「言ったじゃないか! そう、あれは三ヶ月前の飲み会で……『娼姫たちの老後と、孤児院の子たちが増えてきたからどうしようか?』って聞いたら、官能的かつ気だるげに『地方でカフェでもやれば?』と返してくれたことを!!」
「思い出せない……」
そもそもあの時はカトレアに絞られすぎた後に、ロビーでやってた大宴会に娼姫たちが持ち込んだ多量の酒を飲まされたのだ、それ故に半死半生だったのもあり記憶が 朧気である。
「ともかく、お前がここに来てる理由はわかった。騒がしくてすまんな」
「いや、いいさ。それで、ホウショウはどうしてここに?」
「俺か? 俺は今回の依頼の途中で拾い物をしたんだよ。んで、怪我した二人の完治祝いに、ギルドでお勧めの店を教えてもらったんだ」
二人に視線を向けると、カンの良い大旦那はすぐに気づいたようだ。
「違法奴隷か。君、ここのテーブルは僕に支払いを回しておいて」
「はい、わかりました」
「食事を終えたらでいい、俺は裏に居るから呼んでくれ。秘密の話ができる場所、あった方がいいだろ?」
察しがいい大旦那が苦笑いをして奥に引っ込んだ。
「色々と聞きたいことがあるって顔をしてるけど。詳しいことは食べてからにしようか。場所を用意してくれるって言うし」
二人に向き直り食事を再開する。浮かない顔をしていた二人も食事を進めると段々と笑顔が戻っていった。
◆◇
それから、食事を終えて大旦那の所に行くと色街にある大旦那の店に連れていかれ、二人がお風呂を使わせてもらっている間に、俺は別室へと通された。
「さて、拾ったって言ってたが。事のあらましを聞いていいか?」
「あぁ、実はな……」
アインの持ってきた飛び込みの依頼を受けたことから二人を含む数人の少女たちを助けたこと。薬漬けになってた二人の治療を終えたこと。伝えると大旦那は苦々しそうな顔をしている。
「大変だったな、見た感じ煌希か極東か?」
「恐らく極東だな、母国語が通じたし。聞いた話だと勇者召喚に巻き込まれたらしいぞ、貴族様」
「最後は聞かなかったことにしたい。確か、ホウショウの出身は極東だよな?」
「あぁ。俺の時と同じように、二人は違法《訳わからず》で連れてこられたからな……」
「まさか、面倒見るのか?」
「そうするしかないだろ。船や徒歩で一年近くかかる距離の言葉を話せる人間なんてこの国では聞いたことないぞ?」
「いや、確かにそうだけど……カトレアが知ったら大変なことになるぞ……」
「大前提、二人の同意さえ得られればだけどな。言葉を覚えさせて、ある程度自立できるようになるまでのつもりだが。というか、カトレアは関係ないだろ?」
「マジか……コイツ死にたいのか?」
「は? どういうことだ?」
「いや、なんでもない……。それよりも、あんまり部屋を汚すなよ?」
「そういうことするか!!」
「でも、その二人。性奴隷なんだろ?」
「うぐっ、どこで気づいた?」
「勘……って言いたいけど、その容姿で違法奴隷ってとこだな。それに勇者召喚の対象者というとこもだ。伝説の勇者様を屈服させたい、そういった捩れた嗜好の奴が好みそうだということかな?」
「ご明察。流石、優秀すぎて放蕩息子になった奴は違うな」
「褒めるなよぉ~。まぁ、俺としてはお前が自分の人生に誰かを入れるなんて驚きだな」
「クソッ、皮肉が通じねぇ。とはいっても、契約されてる二人を助けるには主 そ れ
従契約変更しか手段がないし。こっちはあくまで人助けの為にやってるんだが……」
「まぁ、お前らしいし納得はできる。だがお前、同郷の人間の時は見過ごしたよな?」
「 春蘭の時は、正規の手段で来た上でこっちの言葉も十分に喋れただろ? あと、春蘭は煌希の人間だぞ」
「そうだったか? 数百人も面倒見てると、たまにわからなくなるんだよ」
「そんなに増えたの?」
思わず聞き返す。最近景気いいとは聞いてたがそこまでとは……。
「あぁ、殆どお前のアイディアのお陰さ。おや、部屋の準備ができたようだな」
入ってきたメイド服の少女が一礼する。後ろには困惑している表情で、先ほどまで着ていた制服と違い豪奢なドレスを着ている二人が居た。
「わおっ、これは王都でも十分通じるな……」
「おい……」
品定めに入るような言い方をする大旦那に釘を刺す。
「怖い怖い、冗談だよ。さて、俺は一度この街の孤児院に顔を出してくるよ。数日はこの街に居るから、何かあったら頼ってくれよ」
「悪いな、助かる……」
「では、三人の案内頼んだぞ」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ、旦那様」
それから案内された部屋は、かなり豪華な部屋でとりあえず皆で座る。二人はやたら深刻そうな顔をしていてずっと黙っている。
「えっと……二人共、大丈夫か?」
「あっ、いえ! は、はい……大丈夫です」
「あ、あの……鷹取さんは、 私たちをどうするのでしょうか?」
「へっ?」
顔を青くした蒼井さんが、恐る恐る聞いてくる。
「豪華な食事に、途中の歓楽街……ここって、そういう所ですよね?」
「へぁっ?」
そして、さっきからやたら丁寧に喋る細野さんに、間抜けな返しをしてしまう俺。
「……………………あぁ! 違う違う! 食事会は快復祝いだし、今の二人の服装は好意でやってくれただけだから! 二人を売ったりするつもりはないからさ!」
俺が慌てて取り繕うと、二人は心配をしていたのか大きく息を吐いた。
「それに、調子狂うから二人共いつもの喋り方でいいよ」
「わかりました、 私はこのままが自然体ですので、そうさせていただきますわ」
「そ、そう? それじゃあ……」
緊張していた顔が落ち着きを取り戻す。紅茶を出して二人が落ち着いたところで居住まいを正す。
「さて、一息ついたところで……。二人にはこれから幾つかの厳しい現実を伝える必要がある。ショックを受けるし、耳を塞ぎたくなることをね……。その上で二人には決断をしてもらわないといけない、いいね?」
「わかったわ」「わかりましたわ」
「さて、まずは。二人も感じたと思うけどここは地球とは異なる世界……つまり【異世界】なんだ……まぁ、食べ物や言語、街の造りとかで日本じゃないことはわかったと思うけどね」
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メロンブックスさんの特典は恐らく2~3回復活→品切れが繰り返されたので。恐らく発売日付近で復活する……かも、との事です。
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