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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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1章改稿・試作読み➃

(暗くてよくわからないな、月も隠れてるし……)


とはいえ、衛生状態は綺麗みたいだ。そうなるとこの人たちは性奴隷で確定だろう。


「荷物も一応確認しておくか……」


カモフラージュに使っている木箱を開ける、中には高級そうなドレスや宝飾品が詰まっている。


「流石に麻薬《クスリ》みたいな、わかりやすい違法なものはなさそうだな……」


それから一度、合流地点へ向かい準備を終えたアインが降りてくるのを待つ。その間に夜間戦闘用の装備を整えて戦闘準備は完了だ。


「アイン、奴隷商で確定だ」


「そうか、あとは相手が違法行為《悪い事》をしているかだな」


「麻薬《クスリ》のような一発で違法な物はなかったよ。流石にそこまで馬鹿じゃないみたいだ」


「そうか、その線で責められるんだったら楽なんだけどな。仕方ない、正面から行くか……ホウショウ、相手の背後を取っといてくれ、合図次第で…………頼むぞ」


「任せろ……」


アインと別れ、俺は闇に紛れつつ集団の背後を取って物陰に潜む。その間にアインは鎧から大きな音を鳴らし注意を引きつつ正面から集団と接触する。


(気づかれてはいないようだな。流石、ガタイがいいだけあるな、護衛の注意が向いている)


行商人と話をしている。準備ができたので風魔法で盗み聞きを開始する。


「へぇ……違法奴隷商じゃないと言うなら荷物を検《あらた》めさせてもらうぞ、それとも何か? 俺には見せられないような物でも入ってるのか?」


厳しい顔をしたアインが行商人を睨む。どうやら単刀直入に聞いたようだ。


「ぐぬぬ……」


(反応からして、馬鹿ではないが。そこまで手練れって訳じゃなさそうだな……)


周囲を固める護衛たちも俺には気づく様子が皆無だ、かなり距離を詰めているのだが未だに察知されていない。


「はぁ……わかりやすすぎ。違法奴隷を扱うのは国法違反だ! 大人しくしていれば罪も軽くなるぞ」


「クソッ! おい、お前ら!! 仕事だ!!」


ニタニタと笑っていた男たちの顔に殺気が浮かぶ、武器を取りアインを囲もうと動きを見せる。


「はぁ、可哀想だけど……知らねーぞお前ら……」


アインが背中に構えた剣を抜く。その瞬間、俺は陰から飛び出してクロスボウを構えた男を背後から一突きして心臓をナイフで抉り、引き絞られたトリガーへ指をかける。


「ごが……」


射手の声にならない断末魔と共に、飛び出した矢が男の脇腹に刺さる。


「がぁ、ふざけん……なぎゅ!?」


こちらに振り向こうとしている男の顔に素早く背中から苦無を引き抜いて投擲する。身体強化で重さと速度の上がった苦無は護衛の頭を拉《ひしゃ》げさせる。


「なんだ、こい……ごぼっ……」


更に振り返った護衛の一人へすかさず近づいて喉元を一掻《か》き。鮮血と汚い悲鳴を空中に残して崩れ落ちる。そうして、ようやく挟み撃ちにされたことに気づいた連中が俺に注意を向ける。


「おいおい、敵の前でよそ見するなよ!!」


アインの声と同時に敵だったものが飛び散る、囲んでいた男たちを二人ほど纏めて斬ったようだ。


「コイツ! つえぇ!!」


膂力《りょりょく》が強く大振りの剣を難なく扱うアインは魔獣を叩き切れるほどで、正面切っての戦闘は遥《はる》かに強い。そんなアインとコンビを組む俺はというと、器用貧乏なのでこうして様々な武具や魔法に頼る他ない。


「残念、俺よりもアイツの方が強いよ!」


「土よ、槍《やり》となりて目の前の敵を貫け……石槍《せきそう》の帳《とばり》!!」


相手の頭上から石の槍を降らせる。雑に詠唱しているので当たると砕けるほどの強度だが〝それなりに硬い物質〟を降らせることに意義がある。


「身体強化・装脚」


身体強化を脚に集中し大きく跳ねる。上からの飛来物に防御の姿勢を取った相手の死角を取りながら目や首の弱点を狙っていく。


「ぐわっ!?」「ぎゃっ!?」


悲鳴を上げる暇もなく崩れていく護衛たち、程なくしてアインの方も片付いたようだ。


「おっと、逃がすか!」


錘付きの縄(ボ ー ラ)を投げつけ動きを封じる。派手に転んだ奴隷商にアインが近づいていく。


「さて、悪いことは言わん。どこの誰に雇われた?」


「ぐぐぅ……」


アインが奴隷商の胸倉を掴み吊り上げる。苦悶《くもん》の表情を浮かべるが、余程雇い主が恐《こわ》いのか口は割らないようだ。


「はぁ……いいこと教えてやるよ。あそこに見える男、違法奴隷商に並々ならぬ怒りを持ってて俺

が制止しなきゃ惨

むご

い死に方するぞ……なぁ?」


アインが目配せをするので、頷いて空間収納《アイテムボックス》から皮袋を取り出しアインへ手渡す。


「ひっ!? そ、それは!!」


皮袋を見た途端みるみると青ざめていく。中身はゴブリンの血で、本来は害獣や弱い魔物向けの忌避剤として用いられる。だがそれは街や村の周辺だけで、こんな街道から外れ町からも遠い森の中で使えば血の匂いに誘われた大型の獣や魔物を呼び寄せるのが明白だ。


「わかるなら話が早い。話すならコイツは使わないでやろう」


苦虫を噛《か》み潰したような渋面を作る、ひとまずの尋問はアインに任せておこう。


「アイン、俺は死体の検分をしてくる」


「任せた。もしかしたらもう一つ増えるかもしれないけどな」


「ひぃぃぃぃ!?」


アインが奴隷商へ視線を向けると悲鳴が上がる。その悲鳴を聞きながらごろつきたちの荷物から所属を調べていく。


「やっぱり闇ギルドか……」


出てきたのは木彫りでできた髑髏《どくろ》の装飾品たち。これは犯罪者となった冒険者が所属している違法ギルドで、暗殺や誘拐に始まり、今回の違法奴隷売買などの犯罪を至る所で仕切っている。


「とは言っても、違法奴隷の運搬なんて下っ端《トカゲのしっぽ》の仕事だから。あんまり手がかりはないかぁ……」

違法奴隷の運搬や売買は物と違いバレやすい。なので尻尾切りがしやすい下っ端や新人の仕事だ。


となると、これ以上は逆さまにして叩いても、出てこないだろう。


「あとは、個人の証明になる物を回収して……」


「ホウショウ、手伝うぞ」


奴隷商の尋問を終えたアインがやってくる。浮かない顔を見るに結果はあまり芳しくないようだ。


「重要な情報は、何も吐かなかったか?」


「あぁ、裏に誰が居るかとかは、ガタガタ震えて答えられなかったよ。あれだけ吐かないとなると背後に貴族が居るだろうし、あとはイブキ公爵領の尋問官に任せるつもりだ」


公爵家の尋問官はかなりの裁量が認められているので酷いことになるだろうけどそれは自業自得だ。


「そうか、それじゃあ俺は捕らえられた子たちの様子を見てくるよ」


「はいはい、俺は顔が怖いからな。一応こっちである程度は埋葬しておくぞ」


「頼んだ、まだ検分し終わってないのもあるし何かあったら呼んでくれ」


「はいよー。『土よ、我が願いに応え』——」


土属性の魔法に適性のあるアインが地面に死体片付け用の穴をあけていく。俺はその間に奴隷が捕らえられている馬車へ向かい荷を下ろしていく。


「よし、これで開けられるな。少し離れててね……はぁっっっ!!」


――バギンッ!


「みんな、大丈夫だったかい?」



鈍い音を鳴らし、檻の 蝶番《ちょうつがい》を破壊して中にいる子たちへ声をかける。怯《おび》えた表情の少女たちと俺たちより少し年齢が下の女奴隷が中には居た。


「えっと、この中だと君が一番年上……っつ!?」


話を聞こうと女性の前に膝立ちをすると、こちらへ焦点の合わない視線を向けてきた。


「仕事ですか?」


ニタァ……と嗤《わら》う顔には酷い痣《あざ》が、全身には暴行の跡があり、明らかに一人だけ酷い扱いで見せしめにされていたのが見て取れた。


(一人だけ眠っていたように見えたのは、これが原因だったのか……)


「違う、助けに来た。俺は聖王都ギルド所属の人間だ」


「?????」


ギルド証を見せるが彼女の反応は希薄である、まさかと思いランプを近づけるが目に濁りがあり焦点が合わない。


「アイン!」


「どうした?」


遺体を埋めていたアインが、俺の声を聞いてこちらへ来る。


「酷い暴行を受けた女性が居る。奴隷商を連れてきてくれ」


「わかった、吊るしてるから少し待っててくれ」


アインの返答を聞き届けた後は、檻を取り外す為に一人ずつ馬車から降ろしていく。見せしめにされた女性以外は逃げられないように首輪を付けられているだけのようだ。


「さぁ、あとはそこのふたっ……!?」


月の光が差し込んできた馬車の中、照らされた二つの顔に、懐かしさが湧く。それと同時に困惑で心臓が強く大きな音を立てて跳ねる。

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