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45.ボルゲノンとの決着

「まだ・・・戦える・・・・・・」


虚ろな目でそう呟くも、声は今にも消え入りそうだ。


「ああもう何なのあなた達!死に急ぎすぎよ!」


トップランカーでもない駆け出し冒険者がS級討伐モンスターと戦うことなど、本来あり得ないのだ。

彼女の悪態は至極当然だ。

残された戦力は、アルフレッドさん。ヤリスさん。ラティーナさん。そして、俺。

たった4人で、この化け物を倒さなければならない。

決着は近い。

とはいえ、全身が硬くて攻撃が通る気がしない。

狙うべきは脇腹の傷だ。

ボルゲノンが再び咆哮を上げる。

奴の突進を、アルフレッドさんが正面から迎え撃った。

まともに受ければ吹き飛ぶため、硬度な技術で受け流す。

剣がボルゲノンの腕を撫でるように滑り、軌道を逸らした。


「今だ!」


ヤリスさんボルゲノンの脇腹目掛けて飛び込む。

だがボルゲノンが速い。

カミソリのような爪の横薙ぎに阻まれ、ヤリスさんのスピードでは掻い潜れない。


「クソッ!」


アルフレッドさんが斬りかかる。剣が閃くが、ボルゲノンは腕で防ぐ。傷口には届かない。

ラティーナさんが魔法を放つ。紫色の魔力弾が飛来するが、ボルゲノンは身体をひねって避ける。

ダメだ。勝ち筋が見えない。

皆徐々に削られていくだけだ。

そもそもなんでこの化け物はしつこく俺達を追ってきた?

また、俺のせいなのか?

ボルゲノンは本来俺だけを狙っていたはずなのに、またみんなを巻き込んで危険に晒してしまった?

俺は頭を抱えた。


「違う違う違う!そうじゃないだろ・・・・・・!今はあいつを倒す方法を考えなきゃいけないのに・・・・・・!」


俺の頭の中はまた自責の念で埋め尽くされていく。

その時、俺は、ある可能性に気づいた。

ボルゲノンの攻撃パターン。

今までこいつは、容赦なく命を刈り取る攻撃をしてきた。

だが、俺に対して取ったアクションは、掴みだ。


「・・・・・・殺そうとしてない?」


もし奴の目的が、俺の生け捕りなのだとしたら。

裏クエストで俺だけが生け捕りを指示されていた事実とも一致している。

早計かもしれないが、賭ける価値はあるんじゃないのか?

俺はアリシアさんの元に駆け寄った。

それを持っているとしたら、きっと彼女だからだ。

倒れて浅い呼吸を繰り返すアリシアさんの胸元に手を突っ込むと、懐を弄った。


「ちょっと!?何してるの!?」


エリザベスさんが声を張り上げて俺を制止しようとする。


「黙っててください!!」

「へっ!?」


あった。ベストの内側に、目的の物が2つ。

引き抜いた俺の手には、アリシアさんが好んで使う赤褐色の魔石爆弾があった。


「そんなもの、何に──」


俺はエリザベスさんを無視して思い切り息を吸うと、ボルゲノンに向かって叫んだ。


「ボルカス野郎!俺を逃がせばご褒美はお預けだぞ!」


全員が何事かと俺の方を振り向く。


「は?お前何言って・・・・・・」


次の瞬間、ボルゲノンは目を血走らせて地面に踏み込んだ。


「マズい!抑えろ!」


アルフレッドさんの声虚しく、ボルゲノンは怒り狂ったように俺の元へ襲ってくる。

心臓が張り裂けそうなほど鳴り響くも、俺はボルゲノンから目を背けなかった。

奴の腕は俺に向かって振るわれ、そして掴みかかってきた。

そのまま頭上高く持ち上げると、奴は歓喜の雄叫びを上げた。


「ヒイラギ!」


ヤリスさんが悲痛な叫びを上げる。

きっと彼からすれば、俺は今から握りつぶされるところなのだろう。


「ぐううう・・・・・・!」


実際、あまりの握力に肋が折れてしまいそうだ。

でも、バカみたいに口を大きく開けてくれて助かったよ。


「息が臭いんだよ、この野郎」


俺は奴の頭上から、持っていた魔石爆弾を口の中に落とした。

一拍おいて、魔石が喉あたりで炸裂する。

ボルゲノンは苦悶の悲鳴を上げて俺を離した。

着地と同時に足の骨の折れる音が響く。


「イッ──!!」


あまりの痛みで涙が出る。

でも、千載一遇のチャンスを逃すわけには行かない。

なぜなら、俺の目の前にあるのは、奴の脇腹にできた深い傷だからだ。


「うああああああ!!」


俺はもう一つの魔石を握りしめると、表面の魔術回路に指を添え、魔力を流し込んだ。

起爆の準備が出来たと同時に、奴の傷口目掛けて拳を叩き込んだ。

そのまま腹の奥深くまで突っ込んで手を離すと、一気に引き抜く。


「ギャオオオオオン!」


その身体が内側から吹き飛ぶ。

脇腹が大きく裂け、血と肉片が飛び散る。

そして重い音と共に、ボルゲノンは地面に崩れ落ちた。

灰色の巨体が、動かなくなる。

呼吸が止まる。赤い瞳から、光が消える。

数秒間、誰も動けなかった。


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