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第三学園 「なんでこの学校に……」

第三学園 「なんでこの学校に……」



俺達の通う聖龍高校二年三組。授業の終わりにあるホームルーム。それは突然やってきた。

「皆よく聞けー、今月からこのクラスを担当することになった――」

今は八月だ。なのに、この時期に新しい先生がやってきた。しかもその人はよく知る人物だった。

その先生は、自分の名前を黒板に綺麗に書いていき、さらに自分の身長までも書いていた。先生は振り返り、黒板を叩くと声高く言った。

「日々之 皐月です、皆よろしくー」

おぉ!とクラス中の男子が舞い上がる。陽樹は男子の中では一番興奮しているみたいだった。なんせ手を握り締めて今にも絶叫しかねない勢いだ。

隣からあの胸のサイズはやばいな……とか色々聞こえてくる。そう、日々之さんは誰が見ても、スタイル抜群。男子の七割くらいが惚れるかもしれない。

咲は無造作に自分の手を胸に当てていた、何してるんだ?豊は陽樹を睨んでいた。志乃は何か考え事をしているみたいで、首をかしげていた。

年上、ということもあって、咲や冬ほどはモテそうにないだろう……と思う。

それほど今でも、咲や冬に告白。というものは絶えない。でも、最近は少し減ってきたらしい。

「それじゃあ皆また明日!解散!」

そんなことを考えている間に、いつの間にかホームルームが終了してた。ダメだ、考えてることがると上の空になる。

日々之さんは俺のほうに歩いてきて、机に紙を置いて教室から去って行った。なんだろう、この紙は。

俺はその紙を開けた。そこには、今すぐに屋上へ集合、ついでに友達の皆も呼んでいいわよ、と書かれていた。

「咲、これ」

紙を咲に手渡すと咲は紙をしばらく見た後。

「どういうことだろうね?」

「分からないけど、屋上に行ったら分かるんじゃないか?」

「それは……そうだけど」

「あっれー?咲どうしたのー?」

豊が咲の手から紙をひったくり、その紙を二秒ほど凝視した後つぶやいた。

「よし、いこうかっ」

「ああ」

「うん」

俺達は陽樹と志乃を誘ってから、屋上へ向かった。

屋上へと続く扉を開けると日々之さんの声だと思われる声が聞こえてきた。

「さて、来たわね」

日々之さんは、腕を腰にあててポーズをとっていた。何が始まるんだろう。

「えーと、どうして学校に?」

ふふふ、と笑うと彼女は高らかに語り始めた。

「元から私はこの学校の教師だったからよ」

「……」

「やはりそうか…」

他の皆は黙っているのに、志乃だけが納得したように頷いていた。

「どういうことだ?志乃」

「この学校のことを以前、調べた時に名前が書いてあったのだ、日々之氏の名前がな、だがこの一年間一度も見たことがなかった為不思議に思っていたのだ」

「へ~じゃあどうして今頃学校にきたんだろう」

豊が最もな質問を投げかけるとそれに答えたのは陽樹だった。

「俺の為にきてく――」

陽樹の話を遮ると豊はもう一度質問を言った。

「はいはい、妄想は置いておいて、日々之さん教えてくれますか?」

「ええ、当然よ。だから来たのよ、志乃くんの言う通り、私は教師なんだけれど今までFDAの業務で学校に来れなかったのよ」

「よくそれでクビになりませんでしたね」

「そこら辺は……ほら、アレよ、アレ」

アレってなんだろう、分からないなぁ……。きっと分からなくてもいいことなんだろうけども。

「ふむ……ということはこうだな、FDAの業務がなくなったから再度学校の教師としてきた……そして、今頃二年三組の教師になったのは、甲長と原河を観察するためだな」

「正解よ、志乃くん、ということで宜しくね」

「観察って……」

「うん……」

「そんな暗くならないでよ、観察って言ってもただ授業中にどんな風に過ごすか見るだけなんだから」

「そうなんですか」

授業の風景を見られる、最初は慣れないだろうけど、すぐに慣れると思う。それにしても、日々之さんの担当教科はなんなんだろう?

「それじゃあ解散ね」

一方的に解散を宣言して、屋上を扉を開けた日々之さんは、こっちに振り返って言った。

「そうそう、明日の朝7時に学校の校門前集合ね」

それじゃあねー、と言いながら日々之さんは屋上から去っていった。

「朝7時……」

「お、起きれるかなぁ」

「わ、私達もいかないとダメ?」

豊と陽樹が聞いてきた。志乃はもう来る気が満々の顔だ。

「当然だろ?」

「うっ……陽樹……起してね」

「はっ!?無理、お前が起しに来てくれ」

「私だって無理……」

そこから1時間ほどその押し問答が繰り返された。二人とも何とか朝6時頃に起きるということで決着したらしい。

それにしても朝7時ってなんだろう?でもそれに俺は心当たりがあった。

ファリクサーに乗っていた頃、まだ捕まっていないアレが学校にいるはずだった。

……

「皆注目ー!」

「「お~……」」

ね、眠い……さすがに朝6時起きはキツイものがある。今日集まったメンバーは豊、志乃、陽樹、咲、俺……それに妹羨さんだった。

皆かなり眠そうだ。ふとしたことで寝るかもしれない。日々之さんは、何故かジャージで、俺達は制服だ。

「なんで妹羨さんがここに?」

「え、えーと、昨日の帰り道に……ね」

昨日の帰り道で出会って、事情を話したら来るって言った所か。咲は妹羨さんと対応するので忙しいみたいだ。

「くっそー……なんで輝ばっかり」

陽樹が不満そうな声をよこしてきた。

「何が俺ばっかりなんだ?」

「妹羨 姫歌、一年でも人気のある女子だ、それに俺が狙ってた女子なのに……なぁ」

溜息をつくと陽樹は俺の肩に手を置いてきたが、俺はそれをすぐに振り払った。

俺は心の中で陽樹にドンマイと言った。狙ってた女の子が同姓好きとなったら無理だろうからな……。

「なんで日々之さんはジャージを着てるんですか?」

「これは動きやすいからに決まってるじゃないの」

間をおかず答えが返ってきた。

「それで、今日は何をするんでしょうか?」

まぁ、大体は見当がついてるのだけれど。

「今日はこの学校で話題になっている、女の子の天敵、下着を食べる蟲を捕まえるのよ」

やっぱりそうだ、あの蟲は未だに捕まっていない。どうしてまだ捕まってないんだろうな?

「あ、その蟲、今そこに……」

「はっ!?」

「むっ」

皆それぞれの反応をして咲の指差した方向を見ると、そこには例の下着を食べる蟲がいた。結構離れてるのによく見えたな。

「皆捕まえなさい!捕まえた人には授業免除よ!」

「授業免除……!?」

「おおー!さすが日々之先生」

「そうなれば俺も頑張るしかあるまい」

志乃はすぐに動き出していた。陽樹、豊、妹羨さん、日々之さんもすぐに志乃の後を追って動き出していた。

「皆早いね……」

「授業免除と聞いた瞬間、皆動き出してたしなぁ」

「どうするの?」

「適当に探すとするか?」

「うんっ」

咲は何故か嬉しそうだった。

………

……

あの後、俺達は学校に入り、生徒会室の前を通った時のことだった、通った時に確かにムシャという音がした。

「輝くん、今何か聞こえなかった?」

「聞こえた、多分生徒会室からだ」

「うん、そうだよね……輝くん先に行ってくれる……?」

咲が上目遣いで体を震えさせながら、制服の裾を握ってくる。そんな顔されたら男としては行かないわけにはいかないよな。

生徒会室の扉のノブを握り締めて、俺は咲に確認した。

「分かった、それじゃあ開けるぞ……」

「うん」

ノブを回して、扉を開けるとそこには――。

「ふぇ!?」

冬がいた、こんな朝早くから何してるんだ。冬はお菓子を食べていた。

「ふぇぐふぁえぐ」

「とりあえず飲み込んでから、話せよ……」

「うぐ……ど、どうしたのっ」

「どうしたの……じゃなくて、何してたんだ?」

「うーんとお菓子食べてたのっ」

「いや、それは分かるから、この時間に何してたんだって……」

「そ、それは……」

冬は少し恥じらいつつ言った。

「お菓子を生徒会室で食べる為に……」

「その為にこんな朝早くに学校に?」

「うん」

なんで家で食べずに生徒会室なんだろうな。何か、家じゃ食べちゃダメとでも言われてるのか。

「輝くん、と咲さんはなんでこんな時間に来てるのかなっ」

「えーと……女の子の下着を食べる蟲って聞いたことがあるだろう?それを皆で捕まえようってことになって」

「へー、私も言っていいかなっ?」

「いいよな?咲」

咲は少し複雑な顔をしてから、言った。

「うん、一緒にいこう、冬さん」

「それじゃあいくか?」

「はい」

「うんっいこう」

俺達は生徒会室から出るとそこで何処に蟲がでるか話ながら歩き出した。

「女の子の下着を食べるのだったら……更衣室とかじゃないかなって思うんだけどどうかな」

「確かにそうだけどなぁ……」

「うん、そうだけど、さっきは全然違う所にいたよ?」

「それは、部活の人とかがいないしねっ下着が置いてないじゃないかな」

確かにそうだ、この時間は人もいないし、ましてや下着が置いてあるはずがない。ならどうしたらいいんだろう。

「じゃあさ、私達の下着を置いておいたら目標はくるんじゃないかなっ!」

「え……?」

「は……?」

「だってそうじゃない?こっちが餌を撒いたらあっちから来てくれるよっ」

咲は少し赤くなって、抗議の声をあげた。

「そ、それはそうだけど、でも恥ずかしい……」

「でも捕まえないと人がドンドン死んでいくんだよ……!」

死ぬって、それはあまりにも……でも、俺はただただ、立ち尽くすだけだった。

「う、うん、そうだよね……頑張る、私頑張るよ!」

あれ……何か変なスイッチが入ってないか?そこまで気負う必要はないんだけど……。

「それじゃあいこうかっ」

「はい!」

俺は咲と冬に手をひかれるようにして更衣室にいった。それが地獄になるとも知らずに……。

………

……

はぁ、はぁ……と息遣いが聞こえてくる、咲が目と鼻の先で息をしている、冬は俺の後ろでその……胸を俺にあててきている。

どう考えても故意だ……どうしたらいいんだ。ムニとしか感触が咲と冬から伝わってくる。大体こんな所に入るなんてどうかしてる、どうしたらいいんだ……!

今の状況を説明しよう、俺達は更衣室にやってきてから、冬と咲は上の下着だけを脱いでそこに置くということを言い出した、俺は、というといきなりロッカーに放り込まれた。

そのあと、咲と冬も入ってきて、今の状況に至る。という訳だ。誰か助けてくれ……役得?これの何処が役得なんだ……。

ロッカーに右から、咲、俺、冬という順番で入っている。息遣いも聞こえれば、心臓の音まで聞こえるような距離だ。当然、咲は、顔を赤らめて下を向いてる。

「冬、動くな……!」

俺はかなり低めの声で冬に声をかける。

「だってー、くすぐったいんだもんっ、あっ、輝くん、そんな所……」

「輝くん……」

「何もやってないだろ……!咲もまともに受けるな――」

「ううん、そんな所触ったら……あう……」

「ご、ごめん」

俺は手をどけるが、それが冬の胸に直撃する。

「あ……私の胸にっそんな強くしたら……!」

俺はすぐに手を退けたのだけど、冬が言うので、咲が少し睨んできた、どうしてだ……!?

どうしてこうなる。俺は静かに手をどけると、もうポケットに手を突っ込んで、目を閉じた。

早く終わらないか、終わらないと俺は……というか人生最大の拷問だ……!本当に、どうしてこうなった……。

永遠の拷問が続くかと思ったその時、扉がガタガタと動いた。

「きた……」

「ああ、きたな」

「うんっ……」

扉が開いた瞬間、俺がロッカーを飛び出して、拝借してきた虫網で捕獲する……それでいけるはずだ。

その時はすぐに訪れた。扉が開いたのを察知した瞬間、俺は飛びだした――。

虫網を振り、入ってきた蟲を捕獲した……と思った。

「あの、何してるの?」

「え……?」

そこにいたのは、妹羨さんだった、なんで妹羨さんが……。

「あ、姫歌ちゃん、どうしてここに……?」

「お姉さま~、どうしてこんなところにいるんですかぁ?」

妹羨さんは、いつの間にか虫網を振り払って、咲の目の前に移動していた。

「えーと、うんとね」

咲は説明を開始するとしばらくうんうん、頷いていた妹羨さんが、こちらに向き始めた。やばい、何かやばい気がする。

「ということは、この男のせいでお姉さまは下着を脱いだと……?」

「えっ、ち、違うよ!?」

「へー、ほー……あんさん、いい度胸してまんがな」

「待て、妹羨さん?待ってくださいませんか?」

「許さん……絶対に……!」

その後、俺は徹底的にボコボコにされかけるのだけれど、なんとか咲のおかげで助かった。

蟲はというと、志乃が無事に捕獲して、焼却したらしい。らしいというのは誰もその現場を見ていないからだ。

その一週間後、また違う噂が広がることになる。新たに出た蟲が女子が着ているにも関わらず、下着を食べるという話を。

そして、学校が始まっても睡魔に勝てなかった俺達は昼休みには、全員熟睡してしまい、先生に怒られることになった。

ただ、志乃を除いて……。


第三学園 オワリ


第四学園へ続く

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