第二学園 「パーソナル……分からない」
第二学園 「パーソナル……分からない」
「コンピューター室に行く?どうしてだよ」
陽樹は興奮した面持ちで喋り出した。ここで制服を脱いで外に出かねない勢いだ。
俺は釘をさしておく。本当にやられたら大変だ。
「陽樹、ここで制服なんて脱いで外なんて行くなよ、捕まるぞ」
「はぁ?いかねぇよ、大体なんで俺がそんなことしないといけねぇんだよ」
「お前ならやりかねないだろう?」
陽樹は少し考えたみたいだ、間が空いたあと発した一言は――。
「……やるかもしれねぇ……」
ダメだこいつ。
それから俺は陽樹にせがまれて、咲と冬を誘ってコンピューター室に行った。
一体なんなんだろうな?この二人を誘ってなんて。咲は俺の顔を一々確認するように、冬はスキップをしている。
冬は一見見るとただの可愛いというか綺麗……でみんなからは天然の生徒会長と思われているかも知れない。
でも結構思慮深い。それは小学生の頃思ったことだ。今でもそうだとは限らないけども……。きっとそうだと思う。
その時、目の前から冬の姿が消えた。
「あっ……たたた……」
思わず目を背ける。スカートが……。横を見ると咲がこっちを睨んでいた。不可抗力だろ!?皆もそう思うよな……?
なんで女の子ってこんなに怖い顔になるんだよ……。折角可愛いと思うのになぁって俺は何を言ってるんだ。
「あ、輝くん見た?見た?私のパン――」
その時、咲が電光石火の勢いで動いた。
咲が冬の言葉を遮って、コンピューター室にずるずると引っ張っていったのを俺はただ茫然と見送ることしかできなかった。
それにしても咲も出会った頃より変わったよな……随分話かけてくれるようになったし、言葉遣いも丁寧じゃあなくなってきたから。
これはいい傾向だよな、なえか見たいにならなければいいけど……。ふと、そんなことを思った。俺は咲にどうしていて欲しいんだろうな?
……
…
そしてコンピューター室。
俺が到着した頃には、咲と冬が陽樹の話を聞いている時だった。変なことを吹き込んでなければいいんだけれど。
「以上だ!いいな!」
「……」
「……」
なぜか咲と冬は返事をしない。さらに言うと陽樹がハァハァ言っていてキモイ。一体何を吹き込んだ。
その時驚くような大声で俺に咲と冬が迫ってきた。
「「輝くんがコスプレ好きって本当!?」」
「はぁ?」
俺は陽樹に視線を向けると歩き出した。またいらないことを吹き込んだな陽樹……。
「輝、待て、早まるな、待て、待てよ!?俺とお前の中だろ!?てかお前も原河の巫女服とかみたいだろ!?なっ!?まっ――」
その後数分間陽樹の断末魔は響いた。もうコンピューターのモニターが割れるんじゃないかというくらいに。これでもう陽樹もいらないことはしない……と思う。
でも……咲の巫女服か……俺は首を振ってその邪念を振り切った。一体何を考えてるんだ!俺は!
「そういえば、なんで陽樹はコンピューター室なんかに呼び出したんだ?」
「そ、それは……原河がパソコンは苦手と聞いたから、手伝ってるふりをして色々と――」
その時、高速で迫ってくる物体が陽樹の顔に直撃した。それと窓ガラスが割れるのが同時に襲ってきた。
あたり一面に窓ガラスが飛び散る様はいかにこの世が混迷しているのかを俺に自覚させるのに十分だった。
それは置いておこう、誰だ?こんなものを投げたのは。
俺の手には転がってきた硬式の野球ボールが握られていた。こんなものが陽樹の頭に直撃したのか……まぁ陽樹だから大丈夫だろうけど。
多分……。
「この男……油断なりませんです」
目の前にはいつの間にか分からないけど、妹羨さんが興奮した面持ちで陽樹の目の前に存在していた。何処から入ってきたんだ?
扉が開いた形跡はない……ということは窓からか……?
「い、妹羨ちゃん……何してるの?」
「あ、お姉さまーこの下衆で不埒な男がお姉さまに変なことをしようと思っていた見たいなのでです~」
下衆でしかも不埒か……散々な言われ方だよな、陽樹。まぁ、仕方がないのかも知れないけど。
普段教室でこの女の子可愛いよなーとか言いながら雑誌見ているくらいだからなぁ……まぁいいか。
「妹羨さんか?これ投げたの……」
「そうや、それがどうかしたやか?」
「別にどうもしないけど……顔に当てたら危ないだろう?いくら陽樹だからと言って――」
「ひ、酷すぎじゃない……か……」
「もう目が覚めたのか?」
「もう覚めたのですか~もう一回する?」
「するって何をー!え、エッチなことだったりしないかー!?」
コイツ……相変わらずだよな。これだからモテないんじゃないのか?素材はいいと思うんだけど……自分の感情がすべてダダ漏れというか。
多分それがダメなんだろうな。俺が陽樹を見ているのに気付いたのか陽樹はこんなことを言い出した。
「輝……お前……まさか……俺のことを!」
体をくねらせていうもんだから、気持ちが悪いことこの上ない。最近陽樹のくねりがさらに気持ち悪くなった気がする。
「輝くん!?本当に……!?」
咲がこちらをうるうるした顔で見ている。なんでだ!?しかも冬までそんな顔で見つめてくる。だー!なんでこんなことに……。
「さ、お姉さまこっちにいらしてくださいな……」
語尾に漫画ならハートとつくような甘ったるい声だ。何故か妹羨さんは制服を微妙に脱いでいた。何してるんだ……?
「うん……そっちに行くよ……」
咲ー血迷ったのか!?咲がフラフラ歩いていくのを見かねて、俺は肩を掴む。すると咲はこっちに振り返って俺が立ち直れないほどの一言を放った。
「輝くんって……男の子が好きだったんだね……やっぱり……」
やっぱり?やっぱりってなんだ!?一体何処でホモ疑惑がでたんだ……女の子というか咲に言われるのって辛いな……。
俺はその場で膝をついて項垂れた。
……
…
「あははー輝くんあんなこと言うんだもん!あははは~」
「そうそう!あれは傑作だったよな!輝も思春期してた訳だ!プッ……」
「……」
咲は顔を真っ赤にして俯いている。なんで皆笑ってるのに……。
いっそのこと殺してもらったほうがいいのですが、無理ですかね……?何故か心の中で敬語になるほどの生殺しだった。
「と、ところで咲はコンピューターはできるのか?」
突然話を振られて驚いたのか、咲が顔を上げた。
「え……?コンピューター?」
「パーソナルコンピューター」
「パーソナル……分からない」
「分からない!?このご時世にパソコンが分からないって……」
「私機械に疎くて……」
「じゃあなんでアレの操縦はできるんだ……?」
アレというのはフェクサーやファリクサーのことだ。結構複雑な操作をしないといけないはずなんだけど……。
「あ、あれは……違うでしょ?輝くん分かるよね」
「まぁ、分かるけど……でもパソコン使ったことがないっていうのはなぁ」
「じゃあ輝くん教えてよ……」
「別にいいけど」
この言葉が原因でこの後コンピューター室を数日に渡って借りることになってしまった。
でも、咲がパソコンをしている姿は可愛かった……ついでに言えば、冬と妹羨さんの面倒も見ることになって大変だったんだけど……。
そして今でも俺の奥深くに傷をつけた言葉がある。「輝くんって……男の子が好きだったんだね……やっぱり……」という言葉だ。
この言葉だけは心の奥深くに傷を残した。そしてそのあと俺が放った一言がこれだ。
「お、俺は……女の子が好きだ!」その場のことを否定したくて言ったんだけど……後から気付けばこれはとても恥ずかしいことだった。
そしてコンピューター室を使い終わった後。咲はこう言っていた。
「輝くん……パソコンは私もう使わない……」
そう、咲はいつまでたってもパソコンをマスターできなかった。機械オンチもここまで行くと……という感じで皆呆れていた。
でも、それはとても咲らしかった……ような気がする……。
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第三学園へ続く




