表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/40

第四学園 「文化祭 前編」

第四学園 「文化祭 前編」


「さて、皆ー!この地球を襲ってきていた恐怖はなくなりました、そして、今ここに文化祭のやり直しを宣言します……!」

おおー!とクラス中の半分が拳を上げた、もちろん俺は拳をあげなかったほうに入っている。

何故こんな状況になっているかというと、アルクェル帝国との戦いで文化祭が中止になったからだそうだ。

もう一度資金を調達するのはどうやったんだ……?まぁ、ここの先生ならいくらでもやりそうだけど、ミスコンとか言い――。

「後、文化祭中にミス聖龍高校コンテストを開催します!」

さっきよりも大人数が拳を突き上げた。主に男子、当然女子が拳を突き上げているはずが……って豊が突き上げていた。

自分も選ばれるのが分かってるのか……?まぁ、こんなことだろうと思ったけども……咲達が参加するとは思わないけど。

「ミス聖龍高校コンテストに参加したい女の子は志乃くんに言ってねー、それでは本題の文化祭で出す店を決めるわよ」

その後、陽樹が提案した、水着喫茶ポロリもあるよ!というのは女子の意見をすべて敵に回した揚句陽樹がボコボコにされる結果に終わった。

志乃の提案した、お化け屋敷はポピュラーすぎて、この昨今の不況は乗り切れない、と日々之さんが却下した。

一体何ならいいんだろう。というか学校の文化祭で不況の関係があるのか?まぁ……そりゃ売上が悪ければ、打ち上げとかができないんだろうけど……。

「そうそう、いい忘れてたけど、今年の文化祭で一番稼いだクラスは豪華な賞品があるわよ」

それを聞いたクラスメイトが、騒ぎ始めた。皆かなり本気になったらしい、雰囲気が伝わってくる。それに……だから日々之さんにも気合が入っていたのかでも、それを言い忘れるって一体。

その時、陽樹が席を立って、声高らかに宣言した。

「コスプレ喫茶でどうだぁぁ!」

女の子はハァ?という顔なのに、やっぱりというべきか、男子は鼻の下が伸びている。まぁ……当然なんだろうけど。

男が変態で何が悪いって何処かの漫画でも言ってたしな。それは置いておこう、志乃が神妙な顔をして席をたった。

「コスプレ喫茶か……卑猥そうで、卑猥でない、それならいいかもしれん、みな!どうだ!これで文化祭一番をとらんか!」

志乃の匠(?)な話術にはまり、クラスの全員が頷いた。それからはもう発案者の陽樹がどのコスプレにするかを男と話し合い、その中立の立場に志乃が立って話を進めていた。

最終的なコスプレはこんな風に纏まった。

体操服、スクール水着、バニーガール、メイド服、褌、セーラー服(この学校の制服)、巫女服。

の七つ、だそうだ、というか褌ってなんだ!?衣装は志乃が女子の人数分調達するらしい。陽樹は志乃に衣装を細かく注文していた。

聞こえた話だとこうだ。体操服はブルマ、スクール水着は紺、メイド服はシンプルなもの。そうやって色々注文をつけていた。

志乃はその話を真剣に聞いていた、陽樹の話をあまり真面目に聞くもんじゃないぞ。

「咲は、ミスコンでるのか?」

「へぅ!?わ、私?どうしようかなって思ってるけど……」

「出たら優勝できるんじゃないのか?」

「ううん、私ってそんなに魅力なんてないと思うし」

年がら年中告白されるような人が何を言っておいでなのでしょうか……?

「そんなことはないと思うけど」

咲が不安さ100%といった顔を目と鼻の先に近づけてきた。ち、近い。息がかかる。

「本当に……?」

少し赤い顔、俺は顔を数秒間見てから言った。

「み、魅力なら十分にあるだろ、優勝なんて楽勝だ」

決心したように、顔を引っ込めた咲は。

「うん、やってみるよ!ありがとう、輝くん」

別にお礼を言われるようなことじゃないと思うけど、と言いたかったけど、咲はもうすでに志乃の所へ走った後だった。

まぁ、いいか。でも、なんだこの複雑な気持ち……よく分からない。手持無沙汰になった俺は、空を見て呟いた。

「ふぅ……文化祭まであと10日か、楽しくなるといいな」

そうだよな、なえか。思い出すと辛いのは当然だけど、それになえかの死は受け入れたはずなのに、それが現実のものと感じられなかった。

何故だろう、フィアーズ・コードを通じて、なえかが生きている可能性があるのを今も感じているからかもしれない。

……

「ふむ、分かった、原河、出てくれるんだな?」

「うん」

「分かった、そう手配しよう、優勝賞品は何がいい、出来うる限り用意してみよう」

「んーと……だったら――」

志乃と咲が学校での廊下で行った会話、これが後に、様々な騒動を引き起こすとは輝も思っていなかった。

ただ、彼女だけが望んだならよかったのだが、それは学園のアイドル二人が最も欲する商品であった。もう一人のアイドルをミスコンに出させる為に

志乃は、「商品」を彼が望む望まずに景品にする、でもこれは、ただの副賞であり、普通は求めるようなものではない。

この計画の裏には学校があらぬ雰囲気に包まれるような目的もあった、とされている。

この10日後に行われる文化祭は、学校内では記録として残り続け、奇跡の文化祭といわれ続けることになる。

……

朝だというのに花火が学校の上で炸裂する。文化祭が始まるまであと1時間という合図だ、それを見ていた咲が満面の笑みを浮かべて言った。

「いよいよ始まったね、輝くんは誰と回るの?」

「うーん、最初はとにかく店の手伝いだからなぁ、咲もそうなんじゃないのか?」

「うん、そうだよ、それで、輝くんあの……」

「うん?なんだ」

「よかったら一緒に――」

「うぉーい!輝!早くこい!」

陽樹が手を振ってこっちに向かってきていた。早く教室に行って手伝えってことだろう、男子はやることがたんまりある。

「ああ、分かった、今行く、それで咲、なんだ?」

「う、ううん、なんでもない」

「そうか」

陽樹の元へ行く間に俺は考えていた。

咲が言おうとしていたこと、あれは何だったんだろう?うーん……。

……

教室につくと志乃に呼ばれた。何だ?

「甲長、お前は明日自由にしていいぞ、変わりに明日の午後は予定をあけておけ」

「は?どういうことだよ」

「別にお前に不利益をもたらすことはない、安心しろ」

安心しろって、お前が言って安心できたことは……ないぞ。まぁいいか。

「分かった、そうするよ」

「さすが甲長だな、よし、持ち場につけ」

「へいへい」

一体なんなんだ、俺に不利益はない……か、それなら別に気にすることはないかな、とこの時の俺は思っていたのだけれど。

それが大きな間違いだと気付いたのは午後になってからだった。

俺が教室に戻ろうとすると豊がちょっとこっちに来てという風に手を招いていた。

招かれるがままについていくとそこは違う教室だった、確かここは……女子用の更衣室じゃなかったか?

「豊、どういうことだ」

「なんにもないよ!絶対に!だから入って!」

「いや、どう考えても怪しいから!説明してくれ」

「んー、そりゃ」

「うお!?」

俺は押されるがままに女子用の更衣室へ追いやられた。入った瞬間女子の匂いがした。う、ダメだ。

そのままの勢いで倒される俺、豊はすぐに教室中を走っていた。行動の早い奴、とっとと出ようとした時だった。

「輝、でちゃダメだよー、今から輝は女の子になるんだから!」

だからの部分が妙に力が入っていた。な、まさか……!?

「はーい、お着替えしましょうねー!」

「待て、待て!」

俺が抵抗しようとしているのを見て、豊がパチンと指を鳴らすと何処からともなく、咲と冬がでてきた。

なんでここにいるんだ!?

「えへへ……」

冬はえへへというよりげへへというのが似合いそうな声だった。お前はオヤジか……!?

「ご、ごめんね」

咲は謝っていながらも俺の手を掴む、謝ってるのにそんなことするなんて何か間違ってないか。

俺は思ったよりも強い力を持つ二人を振り払えずにまた地獄を味わうことになった……。

当然この先は話したくもない。

……

「う……ぐ……」

もう俺は今、恥もプライドも何もない……いっそのこと殺してください……。

「かっわいい~、さすが私!」

お前がやったのに何を言うか。

「えへへ、違う趣味に目覚めそうだよっ」

目覚めないでくれ……。

「う、うん」

何がうん、なんだ!?

「さて、いこうか輝」

「いこう、輝くん」

俺は引きずられるように喫茶店へ連れて行かれた。ちなみに俺の格好はメイド服らしい、健全な。と烙印の押された。

豊はスクール水着、咲は巫女服だった。二人とも驚くほど似合っていたけど、今の俺にはそんなことを感じるゆとりはなかった。

そういえば、冬はいつの間にか姿を消していた。

……

豊が教室をあけるとそこには、女の子がたくさんいた、というか女の子しかいなかった。そして教室に入った豊の第一声。

「連れてきたよー!今日の主役」

皆がおおーと声をあげる、主役?今入ってきたのは、咲と豊と俺だ。ということは主役は咲だよな。

「今日の主役の輝くんかー見違えたね……嫉妬しちゃう!」

は?待て待て、そこの女の子!?なんで主役が俺なんだ、咲と豊がいるだろう!

「そうでしょー、私のセンスに間違いなんてないと思ったのよ!」

「うん、凄いね、さすが豊さん」

「あ、咲、私のことは豊でいいって言ったのにー」

「ご、ごめんなさい、豊」

「それでいいの、それで輝くんは、お冷のお代わりとかだけしてもらったらいいから」

「お、おう……」

俺は流されるがままに頷いた。もういい、早く終わらせて休憩時間になれば……。それも地獄の始まりだった。

「それじゃあ、そろそろ文化祭始まるから配置についてねー」

クラスの女の子は全員拳を突き上げて絶対に優勝するぞーなどと言っている。俺にとってはもうどうでもいいことだった。

そして文化祭が始まった。この学校の文化祭はこの都市一番の学校行事として有名な為、様々な人がくる。

この文化祭は二日間あり、最後には何故か盆踊りがあるという謎の学校でもある。この最後の盆踊りには踊った人と恋を叶えるという説がある。

それを皆知っているから、女子も男子も必死らしい。陽樹が今もいないのはそういうことかもしれない。まぁ、多分雑用で色々パシリにされているんだけど。

文化祭では、学園長者というのがいて、二日間で数十万を稼ぐクラスもある、という噂があるくらいだ。実際にそれだけ儲かっている所があるかといわれると疑問だけど。

「輝ー、早くお冷もってきて」

色々言っている間に、いつの間にか豊に呼ばれた。人も結構入っているみたいだ、やっぱり男ばっかりだ。

変な視線で見られている気がするけど、もう無視だ、無愛想にしていれば大丈夫なはずだ。

「お、おう」

「おうじゃないでしょ、はいーでしょ」

「は、はいー」

ダ、ダメだ、早く誰かなんとかしてくれ……!二度も体験することになるなんてもう無理だ。

「お、お冷ですー」

何か視線がザクザク刺さってきているのが手に取るように分かる。もう精神がどうにかなりそうだ。

「輝ー、結構やれるね、その調子でお願い」

手を合わせてお願いという風にやってくる。もう俺には頷くという選択肢しかなかった。

「分かったよ、分かったから……」

「あはは、だから輝は扱いやすい」

「何か言ったか?」

「ううん-何もないからー頑張ってねー」

「あ、ああ」

あと三時間の我慢だ、あと三時間……長すぎる。もう無理だ。さっきからずっと無理無理言ってるな、俺。

まぁ、やるしかないんだけれど、皆の期待を裏切る訳にはいかない……。

「て、輝くん?どうしたの?」

「うおぉぉ!」

「ひゃう、どうしたの!?」

「俺はやるぞ、咲、俺はやってやるぞぉぉ!」

「う、うん、頑張って、大丈夫かな……輝くん」

「大丈夫大丈夫、あれが目的なんだから」

「そ、そうなの?」

「うん」

……

「お、終わった……何もかも……」

「お疲れ、輝くん」

咲がお茶を差し出してきた。冷たそうで、とってもおいしそうだ。

「ああ、咲、ありがとう」

俺はお茶を受け取って、それを飲んだ。冷たくていい。喉の渇きが潤う……。

喫茶店の手伝いが終わったのが12時で今はその30分後だ、なぜかというと着替えなどで手間取った。

女子が先に着替えるものだから、俺はその後入ることになった、その間外で待っている時間も地獄だった。

今日は地獄しかない……。

ここは屋上の一角、人もあまりこない所だ、咲が俺の隣に座って自分でも持っていたお茶を飲んでいた。

「美味しい、それでさ……輝くん――」

「何だ?朝もそんなこと言ってたよな」

「一緒に文化祭回れないかな」

「……」

「ダメ?」

咲は泣きそうな顔だ、そんな顔しなくても俺の答えは決まっている。

俺は座っていた腰をあげて、立ち上がると咲の方向へ向き直って言った。

「いくか?」

満面の笑みになって咲が立ちあがった。そんなことでそこまで喜ぶものなのか?

「うん!いこう」

「それなら早めにいかないとな、もう昼飯の真っ最中だろし」

「あっ」

俺は咲の手を引くと、屋上から降りた。

……

「咲、何が食べたい?」

「うーん……お好み焼きも美味しそうだし、たこ焼きも……」

「ようするに食いしん坊か」

咲は顔を真っ赤にして抗議してきた。

「ち、違うよう」

「じゃあたこ焼きでいいか?それでいいなら買ってくるけど……」

「うん、ありがとう」

「それじゃ言ってくる、そこら辺で待って置いてくれ」

俺はたこ焼きを買いに走りだした、確かさっきあそこに……ってあれ?なんだあれ。

目の前にあるのは一つのポスター。そこにはこう書かれていた。

ミス聖龍高校コンテスト開催!この学園のアイドル二人と言われている原河 咲、比良乃 冬が参戦する!

ポスターの端にもこんなことが……。「原河 咲および比良乃 冬が優勝した場合は、副賞として甲長 輝が商品として授与される」

「は……?」

「どうだ、いいアイディアだろう」

いつの間にか真後ろに奴がいた。こんなことを書くのはあいつしかいない。

「どういうことだ、志乃」

「どういうこともこういうことだ」

「俺が言いたいのは――って」

志乃はもういなくなっていた。相変わらず言いたいことだけ言って何処かに行く奴だ。

この辺りにいると妙に殺気を感じる、とっととたこ焼きを買って戻ろう。殺気で殺されるかもしれない。

たこ焼きを買ってから、俺はすぐに咲がいると思う場所に戻った、だけれど、咲がいない、何処に行ったんだ。

咲は、勝手に何処かへ行くイメージがなんとなくある、もしかして本当に何処かに行ったのか?

10分ほど周囲を探したものの、何処にもいない、もしかしてヤンキーとかに連れていかれて……。

この学校は都市一番の文化祭ということで、規模もかなりのものだ、当然その中にはナンパ目的の輩もいる。

そんなことがあるものだから、風紀委員などがかなり頑張って仕事をしているはずなんだけれど……。

時間がたつにつれ、さらに俺の中にネガティブな思考が溜まっていく、とにかくもう一度探そう。

咲が輩についていく訳はないと思う。でも強引となれば……。もう迷っていられない、皆に応援を頼もう。

それから俺は、走ってあらゆる場所に行き、咲が何処にいるか知らないかと聞いて回ったが、全員知らないと言う、何処に行ったんだよ。

もうたこ焼きは冷めてるぞ……。

皆に事の次第を話して、協力してもらったものの、未だに見つからない。咲がいなくなってから2時間が立とうとしていた時だった。

校舎でもこの学校の生徒、その更にごく一部しか知らない場所から猫の鳴き声が聞こえてきた。

なんでこんな所に猫が?行ってみよう。

角を曲がりその場所に出た。そこには――。

「ふふ、美味しい?まだまだあるからね」

ふぅ、心配させて……。俺は座っている彼女に言った。

「何してるんだ、咲」

「ひぁう」

咲はビックリして腰を浮かし後ろにこけた。見事と言うべきか。こんなに驚くとは思わなかった。

「て、輝くん……」

「探したんだぞ」

「ごめん……」

「まぁ、何もなかった見たいだからよかったけど、猫に餌をやってたのか?」

「うん、ほら」

猫を抱きあげて、咲はこっちに振り返った。何か手慣れてるな……。

「お、おう……」

「どう?可愛い?」

首を傾げて、咲は聞いてきた。

「ああ、うん、可愛いと思うよ」

「うん、そうだよね」

咲は動物が好きなのか?と尋ねたい気もしたけど、今はやめておこう。

「あ、たこ焼きもう冷めてるけど食べるか?」

「う、うん、食べる」

「ほら」

俺はたこ焼きを差し出した。咲はそれを本当に美味しそうに食べていた。冷めてるのにな。

その時アナウンスが鳴った。

「今から古本の整理を行います、同時に本の売りも行います興味のある方はどうぞ校庭にお集まりください、繰り返します――」

「……いかなきゃ!」

「は?おい!?咲!」

咲が走り出すと同時に俺も走りだした。どうやら行き先は校庭らしい。そういえば、咲は本を読んでたよな……。

欲しい本でもあるのか……。

「急がないと!輝くん、早く!」

妙に早口で喋る咲、本のことになるとこんなになるのか。咲らしいかもしれない。

「ああ」

そんなに早くいかなくても本は逃げない、と思うのだけれど……。

咲に追いついた俺はその横顔を見ると、今まで見たことのないほどの真剣な表情だった。

……

「うわぁ!」

校庭に到着するとそこには人だかりができていた、なんだ、この人の数。

咲は子供みたいにワクワクした目で、今にも走っていきそうな感じだ。

「は、早くいこう!輝くん」

「あ、ああ」

人ごみをかき分けて、進む咲、ものすごく強引だ。俺は必至に咲についていくと、そこでは本の争奪戦とも言うべきことが行われていた。

中には0が五つも並んでいるものもあった。一体誰が買うんだ?しかもかなり分厚い。

咲は手の動きが見えないほどの速さで、本を文字通り漁っていた。

しかも横にうず高く本が詰まれている。こんなにお金があるのか?

「咲、そんなにお金があるのか?」

「え?えへへ、今日の為に貯めてたんだ」

今日の為……って、こんなこと何処かに書いてあったか……。

話している間にもどんどん本が詰まれていく。十秒で一冊ほど増えてるんじゃないだろうか。

その時、咲の手が止まった。

「うっ……欲しいけど高い」

「どれどれ……」

本当に高い。0が四つもある。一介の高校生に出せる金額じゃない。

「諦めよう……」

凄くテンションの下がった咲はまた本を漁り始めた。さっきより笑顔に陰りを感じた。

うーん……俺は数か月ほど使っていない財布を取り出した。よし、こんな時くらいしか使わないもんな。

「あのーこれを――」

……

文化祭が終わっての帰り道、結局咲はあの後3時間ほど地面から根を生やしたごとく動かなかった。

そのお陰で文化祭はもう終わっていた。

「ふゅ、重ぃ……」

「大丈夫か……?咲」

「だ、大丈夫、多分」

仕方ない。俺は強引に咲から荷物を引っ手繰った。

「て、輝くん!?」

「重いだろ」

「そんな悪いよ」

「大丈夫だって、これでも男なんだからな」

咲は俯いたあと、静かに頷いた。でもさっきと同じく、笑顔なものの、陰りを感じる。

「輝くんのその荷物は何?」

「えっいや、これは……」

今バラすのもなぁ。

「輝くんも本に興味があったの?」

「うん」

「そうなんだ」

その後、帰り道がわかれる場所まで俺達は文化祭の話で盛り上がったり、世間話で盛り上がったりと色々話した。

そして分かれ道。

「よいしょ……今まで持っててくれて、ありがとう、輝くん」

「い、いや、別に普通だろ」

「そうなのかな」

「多分」

「また明日ね――」

「咲!」

「な、何?いきなり大声出して」

「あ、いや、ごめん。えーと咲、これ」

俺はそういって自分で買った「本」が入った袋を差し出す。

「これは……輝くんが買った本じゃないの?」

「い、いや、実は咲に渡そうと……」

咲は驚いたような顔になり、少し頬を赤く染めてその袋から本を取り出した。

「え!?これは」

「いや、咲が欲しそうだったから……」

「で、でもこれすごく高かったよ?こんなものもらえないよ」

その後30分ほど俺と咲は互いの意見を言い合い、俺は最後にこう言った。

「じゃあこうしよう、俺がその本を貸した、それでいいだろ」

咲はまた俯いてから、頷いた。何か顔がほほ笑んでいたような気がしたのは気のせいか。

「それじゃあ、また今度私の本貸してあげるね」

「お、おう、楽しみにしてるよ」

「うん!、輝くんありがとう、じゃあまた明日ね!」

咲は小走りに去って行った。俺はまた明日ということができなかった。

なぜなら女の子にプレゼントをしたことなんてなかったからだ。もちろんなえかにもない。

喜んでもらえたようだから、まぁいいか……。

帰り道の俺は何故か、少し足取り軽かった。

明日。とんでもないことがあるとも知らずに。


第四学園 オワリ


第五学園へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ