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千年前に戻った聖女は、最凶魔王を『お花の好きな優しい子』に育てることにした!  作者: 優木凛々
第2章 デイジーは、最凶魔王を”お花の好きな優しい子”に育てることにした!

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黄色い鳥


本日3話目です。

 

「ぎゃあああ! 殺されるー!!」



 甲高い声が、山小屋の中に響き渡った。


 デイジーは慌てて包丁を持った手を振り回した。



「食べるなんて、そんなつもりじゃ!」

「じゃあ、その包丁は何だ!」

「こ、これはキノコを……」

「ギャー! キノコと一緒に煮込まれるー!」



 ――そして、こんな感じですったもんだすること、約10分。


 ようやく落ち着いた鳥が、檻の中で木の実を啄んでいた。

 お腹が空いたと言うので、とりあえず食べ物を与えることになったのだ。


 高速で木の実をつつく鳥をながめながら、デイジーが口を開いた。



「あんた、よく食べるわね」

「まあな!」



 鳥が得意げに胸を張った。



「地面を這いつくばってる奴らにゃ分からないだろうが、飛ぶってのは、体力と魔力が必要な高等技術なんだぜ! しかも俺様の場合は頭も使うからな!」



 デイジーは「へえ」と相槌を打ちながら、ニコニコした。

 この鳥は本当によくしゃべる。

 しかも、ちょっと口が悪い。



(でも、しゃべれるってことは、賢いってことだよね)



 この鳥であれば、ここがどこかなど知っているかもしれない。



(よし、色々聞き出そう)



 とりあえず警戒させないようにと、ニコニコする。


 そんなデイジーのお腹の中など露知らず、鳥は木の実を綺麗に食べ終わった、

 満腹そうに翼でお腹をさすると、檻の中からデイジーを見上げる。



「そろそろ出してくれ!」

「いいよ」



 デイジーはニコニコした。



「でもその前に、色々と教えて欲しいことがあるんだけど」

「……っ!」



 鳥が、ギクリと言う風に翼を震わせた。

 ニコニコするデイジーから露骨に目を逸らす。



「お、俺様は、何もしてねえよ! ちょっと様子を見ていただけだ!」

「様子って何の?」

「さ、さあな! 俺様は単なる鳥だからな! ちょ、ちょっと歌いたくなってきたぜ! ピヨピヨピーヨ!」



 滝のように汗を流しながら歌い始める鳥を、デイジーは訝しげにながめた。

 ちょっと質問しようと思っただけなのに、いきなり怪しくなった。



(実はこの鳥、何か悪い事してたんじゃ……?)



 そして――



(……ん?)



 デイジーは、眉間に皺を寄せた。

 鳥の胸元あたりから、奇妙な魔力の気配がする。



(この気配……)



 しばらく観察して、デイジーは口を開いた。



「あんた、もしかして、呪われてる……?」

「……っ!」



 鳥が驚愕の表情を浮かべた。



「な、ななななんで分かった……!」

「魔力の感じが、何となく呪いっぽいから」



 “呪い”とは、かけた対象に、特別なルールを強制する魔法だ。

 解呪するには、聖魔法の「解呪魔法」が必要になる。


 デイジーは何度も解呪を行なったことがあるが、鳥から感じるこの気配は初めてだ。



(すごく良くない呪いの気がする)



 何となく放っておけない感じがして、デイジーは口を開いた。



「その呪い、ちょっと調べてみてもいい?」

「え?」

「そんなすごい呪い、今まで見たことがなくて」



 すごい呪いと言われ、鳥が満更でもない顔をした。



「…………まあ、そこまで言うなら」



 そう言いながら、見せてくれるように胸を張る。


 デイジーは、檻に手を入れると鳥の胸のあたりをそっと触った。

 軽く魔力を流して解析する。



 ――そして、解析が終わり。

 彼女は思わず眉間に皺を寄せた。



(なにこれ)



 それは見たことがないほど強力な呪いだった。


 術者に対して絶対服従で、逆らうと息が吸えなくなる。

 しかも、呪いの維持のために生命力が常に削られており、寿命が徐々に縮まるようになっている。



(こんな酷い呪い、始めて見た)



 もしかして、何かの処罰だろうかと思い、「なんか悪いことした?」と尋ねると、

 鳥がいきり立った。



「してねーよ! 俺様ほど真面目に生きてる鳥はいねーっつーの!!」



 ギャアギャア騒ぐ鳥に、「ごめんごめん」と謝りながら、デイジーは思案に暮れた。

 確かに、この鳥は口が悪い。

 でも、こんな呪いをかけられるほど悪いことをするようには見えない。


 そして、このまま放っておけば、この鳥はそう長くは生きられない。



(……まあ、これも何かの縁か)



 デイジーは、ギャアギャア騒ぐ黄色い鳥をながめた。


 よく知らない鳥ではあるが、この呪いは見過ごせない。

 もしもこの鳥が望むなら、解呪してあげよう。

 幸い逆探知もついていないから、解呪しても術者は気が付かなさそうだ。



(よし、決めた)



 彼女は黄色い鳥に尋ねた。



「あんたこの呪い、消したい?」

「そりゃそうだろ。こんなもん、百害あって一利なしだからな」



 鳥がため息をつく。


 それならばと、デイジーは鳥の胸に手を当てた。

 魔力を集めながら静かに詠唱した。



「<解呪>」



 鳥の周囲に黄金の魔法陣が浮かんだ。

 黄金の光が「な、なんだこれ!」と騒ぐ鳥の周囲を優しく包み込む。


 ――そして、光が消えると、デイジーは改めて鳥の胸を触った。

 魔力を確かめて、うなずく。



「呪い、解けたよ」

「は!?」



 鳥が呆気にとられたような顔をした。

 体のあちこちを動かして「マジか……」とつぶやく。


 そして、大きく息を吸いこむと、思い切り叫んだ。



「第1王子のクソったれ!」



(第1王子?)



 首をかしげるデイジーの前で、鳥は叫び続けた。

 第1王子とやらに、人でなし、極悪非道、おたんこナス、など、あらゆる罵詈雑言を浴びせる。


 そして、気が済むまで叫ぶと、鳥はデイジーを信じられないという目で見た。



「……お前、もしかして、すごい奴なのか?」



 デイジーは考え込んだ。

 確かに聖魔法は珍しいが、すごい奴と驚かれるほどではない気もする。



「まあ、そこそこかな?」

「……そこそこ」



 デイジーの言葉に、鳥が何とも言えない顔をした。

 しばらくして、両足を揃えると、神妙な顔で頭を下げる。



「とりあえず、礼を言わせてくれ。呪いを解いてくれて感謝する。これで心置きなく、あのクソったれ王子の悪口が言える」



 そして、鳥は真剣な顔でデイジーを見上げた。



「それでなんだが、あんた、俺と取引してくれないか?」

「取引?」



 首をかしげるデイジーに、鳥が、ガバッと頭を下げた。



「俺はあんたに絶対の忠誠を誓う。“従魔契約”だってする! だから――どうか俺の兄弟たちを助けてくれ!」






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