↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年前に戻った聖女は、最凶魔王を『お花の好きな優しい子』に育てることにした!  作者: 優木凛々
第2章 デイジーは、最凶魔王を”お花の好きな優しい子”に育てることにした!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/14

魔王城(?)へ


本日2話目です。

 

 子どもにいじめられていた少年を助けた、約30分後。



(これ、一体どういう状況なんだろう……)



 頭の上に疑問符を浮かべたデイジーが、眠る少年を背負って森の中を歩いていた。

 向かっているのは、彼の家だ。


 傷は回復魔法で癒えたものの、ぐったりしており、放っておける状態ではなかったからだ。


 朦朧とする本人に、家の場所を聞いたところ、どうやら北に向かって伸びる道の先にあるらしい。


 教えられた道を歩きながら、デイジーは思案に暮れた。



(この子、魔王だよね……)



 魔力は、人によってそれぞれ違う。

 親兄弟であっても、同じということはありえない。

 つまり、同じ魔力を持った魔王と少年は、同じ人物ということになる。



(でも、なんで魔王が子どもの姿に? しかも、“兄上”とか“殺していい”とか、よく分からないこと言ってたし……)



 考えながら歩いていると、



 ガウゥ!



 突然、横から狼のような魔獣が襲い掛かってきた。


 デイジーは、持っていた錫杖を軽く横に振った。



 ガツンッ



 狼は顔をしたたかに打たれ、怯えるように逃げていく。



(とりあえず、この子を早く家に送り届けよう)



 彼女は足を早めた。

 魔王の家ということは、きっとお城なのだろう、と考える。



(門番さんにこの子を引き渡して、元の野原に戻ろう)




 ――そして、歩くこと、しばし。


 デイジーは森の中にある、草ぼうぼうの空き地に出た。

 空き地の端の方には、オンボロの山小屋が立っている。



(狩猟小屋かな?)



 すると、背中の少年が身じろぎして、小さな声で言った。



「着いた」

「……え? ここ……?」



 デイジーはポカンとした。

 まさかのボロ小屋に、思わず立ち尽くす。


 もしかして、魔王の実家は貧乏なのだろうか、と思うが、

 彼女は首を横にブンブンと振った。



(ダメよ、見かけで判断しちゃ)



 もしかすると、外はカモフラージュで、中は謁見の間みたいに金ピカなのかもしれない。


 彼女は、草ぼうぼうの空き地を通り抜けると、小屋に近づいた。

 ゆっくりと扉を開くと、冷たい空気と埃っぽい匂いが漂ってくる。



「……し、失礼します」



 デイジーは、おそるおそる中に入った。

 中は薄暗くてガランとしており、テーブルやベンチ、台所など、最低限の設備はあるものの、埃をかぶっており、人が使った形跡がない。



(本当に、ここに住んでるの……?)



 呆気にとられるデイジーの視界に、開いている扉が映った。

 覗き込むと、扉の向こうは大きなベッドが見え、毛布が丸まっているなど、ここだけかろうじて生活感がある。



(とりあえず、ここに寝かせよう)



 デイジーは、ぐったりした少年をベッドにそっと降ろした。

 細い体に毛布を掛けてやると、部屋を出てドアを閉める。


 そして、薄暗く埃っぽい部屋を見て、大きなため息をついた。



(……どうしよう)



 この家の様子から察するに、住んでいるのは彼1人だろう。

 さすがにこの状態の家に、体調が悪い子ども1人を放っておくわけにはいかない。



(食べ物と飲み物くらいは用意していこう)



 デイジーは部屋の隅にある、埃だらけの台所に向かった。

 水と食料を探す。しかし――



「……何もない……」



 水を入れておく樽や、鍋や食器、

 捕まえて来た動物を閉じ込めておく檻など、古いながらも設備は揃っている。


 でも、肝心の水や食料がない。

 棚の奥に塩の塊があったくらいだ。


 デイジーは眉間にしわを寄せた。

 これはますます、少年をこのまま置いてはいけない。



(とりあえず、水と食べ物を探しに行こう)



 彼女は、台所にあった古い籠と水筒を持って小屋を出た。

 外に出て、錫杖を構えると、魔力を高めながら静かに詠唱する。



「<対魔獣・防御結界>」



 デイジーの足元に金色の魔法陣が浮かび上がった。

 家の周りに金色のドームが現れ、すぐに見えなくなる。



「これでよし」



 彼女は、鬱蒼とした森に足を踏み入れた。

 木の実、キノコなどを見つけ、魔力を通して毒がないことを確かめると、ポンポン籠に入れる。

 小さな湧き水を見つけ、持ってきた水筒を満たす。



「まあ、こんなもんかな」



 デイジーは元来た道を戻り始めた。

 歩きながら、思案に暮れる。



(食べ物を準備したら、あの子を起こして食べさせて、それからあの野原に戻ろう)



 そして、草ぼうぼうの空き地に到着し、山小屋に向かって歩いていた、そのとき。



「……ん?」



 デイジーは、小屋の窓辺に、1羽の黄色い鳥がとまっているのを見つけた。

 スズメくらいの大きさで、窓ガラス越しに、熱心に家の中を覗き込んでいる。



(綺麗な鳥、見たことない)



 珍しく思いながら近づくと、ふと鳥が振り向いた。

 デイジーを見て、驚いたように、ギャー! と悲鳴を上げながら飛び上がり――



 ガツンッ!



 窓枠の上にしたたかに頭をぶつけた。

 そのまま地面にポトリと落ちる。



「た、大変……!」



 デイジーは慌てて鳥に駆け寄った。

 つんつんと突いてみるが、完全に気絶している。



(このまま置いといたら、鷹とかにやられちゃうかもしれない)



 彼女は鳥を抱えて家の中に入った。

 ちょうど良さそうだと、台所にあった木製の檻の中に入れる。


 そして、「よーし、やるぞ!」と腕まくりをすると、料理に取り掛かった。

 とりあえずスープを作ることにする。


 そして、古びた黒鍋にぐつぐつとお湯を沸かしながら、鼻歌まじりに包丁でキノコを切っていた――そのとき。



「くそ……頭いてえ……」



 突然、横から甲高い声が聞こえてきた。


 驚いて声の方に視線を向けると、檻の中の黄色い鳥が、片方の翼で痛そうに頭をさすっていた。

 デイジーを見上げ、目を丸くしながら口ばしを開ける。



「お、お前、誰だ!?」



 デイジーは呆気にとられた。



「……え! 鳥がしゃべった!?」

「ふん! 当たり前よ! 俺様は大天才だからな!」



 驚かれたことに気を良くしたのか、鳥が得意げに胸を張る。


 そして、鳥は周囲を見回し、自分が檻に閉じ込められていることに気が付いた。

 ぐつぐつと煮立つ鍋と、デイジーの手に光る包丁に目を移す。


 そして――



「ぎゃあああ! 殺されるー!!」



 甲高い声が、山小屋の中に響き渡った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。