【一方その頃】王都にて①
本日1話目です。
時は遡ること、デイジーが魔王の天幕に入る少し前。
高台の上に、馬に乗った男がいた。
黒装束に身を包み、頬に傷がある。
しばらくして、男の目の前で、らせん状の金色の光の渦が巻き起こった。
空全体が金色に染まって、やがて静かになる。
「……やったか」
男がそう独り言ちる。
しばらくして、馬に乗った騎士が高台までやってきた。
デイジーの馬車を護衛していた騎士の1人だ。
彼は軽く頭を下げると、口を開いた。
「筆頭聖女が魔王の天幕に入るのを確認しました。その後、すぐに天幕から金の光が放たれております」
彼によると、その後、魔法士と思われる人物が天幕に集められるなど、明らかにパニック状態だったらしい。
傷の男が尋ねた。
「それで、魔王は?」
「警戒が厳しく、魔王本人の状態を確認できておりませんが、何かあったことは間違いないかと」
「……なるほど」
黒装束の男が手綱をひいて、馬の首の向きを変えた。
「では、私は経過報告に戻る。お前たちは引き続き見張っておけ」
「はっ」
男は王都に向かって馬を走らせた。
何度も後ろを振り返り、誰もいないことを確認する。
そして王城に到着すると、すぐに城の中に入った。
長い廊下を通り抜け、奥の部屋に到着する。
そして、ノックして中に入ると、そこには、待ちかねたように国王と王妃が座っていた。
傍には宰相と、ぐるぐる眼鏡の学者風の白髭の老人が書類を持って立っている。
男は国王の前に跪くと、顔を上げた。
「数時間前、筆頭聖女が魔王の天幕に入ってすぐに、天幕から金色の光が放たれるのを確認しました」
白髭の老人が尋ねた。
「その光はどのような色と形状じゃった?」
「金色で、上に向かって渦を巻くような形をしておりました」
「光っていた時間は?」
「30秒ほどです」
「ふむ、聖剣が正常に作動したのは間違いないようじゃな」
宰相が黒装束の男に尋ねた。
「それで、魔族の動きは?」
「複数人の魔法士と思われる魔族が魔王の天幕に呼ばれるなど、パニック状態だったと聞いております」
老人が「なるほど」と白髭をしごいた。
「確かめる必要はありますが、魔王を封印できた可能性は高そうですな」
国王が老人に目を向けた。
「これからどうなる」
「魔王が封印されれば、すぐに新たな魔王の選出が必要になりますゆえ、魔族は撤退していくかと」
「では、撤退を待つということか」
「そうなります」
国王は軽くうなずくと、宰相を見た。
「ローレンスに、私が褒めていたと伝えておけ。あ奴がいなければ、これほど早く事が運ばなかっただろうからな」
「わたくしからもよ。今回のあの子の働きは見事だったわ」
王妃も笑顔で言う。
その後、国王は引き続き警戒に当たるようにと命令。
「念のため、すぐに次の筆頭聖女を選んでおくように」と指示すると、王妃と共にその場を去った。




