食堂の騒乱
今回の話は、いつにも増して酷い出来な様な気がします⋯
赤髪の男と黒髪の男が出している雰囲気は、まさに一触即発と言う雰囲気だった。
「おいおい、俺とヤりあうのにビビってんのか?」
赤髪の男は敵意を剥き出しで黒髪の男を挑発している。
「いや〜君みたいな脳筋君とヤりあってもつまらないからね」
対する黒髪の男は、一見挑発を受け流している様に見えるが、脳筋という明らかに誹謗中傷の言葉を赤髪の男に使い、挑発をしていた。
「お前はあの時からいつもその言葉を使って俺から逃げてるよなぁ?」
「君は戦術も無しに突っ込んで来るだけでつまらないからね〜」
「あぁん?舐めてんのか」
二人の不毛とも言える言い争いは、段々とヒートアップしていた。
「やばくないか?あの二人って確か名門の奴だよな⋯⋯」
「あれだよ⋯⋯赤髪の男が高宮で、もう一人の方が黒葛原だよ」
「やべーじゃん帰ろうぜ」
「そうだな」
「俺は名門どうしの喧嘩見てみたいから残るわ」
「俺も残る」
それと同時に、食堂に居た人達は巻き込まれるのを恐れて帰宅し始めていた。
だが、この喧嘩の結末を見たがる人達も居た。
ちなみに俺とまりんは、後者だ。
「ふっ⋯⋯君みたいなお猿さんを舐めるなんて、汚らしくて出来ないよ」
「てめぇ⋯⋯殺す」
黒葛原の一言をきっかけに、高宮が襲い掛かった。
「くらえ!」
「ははっ⋯⋯君の攻撃はどんな果物よりも甘いよ」
「てめぇは一々癪に障る野郎だなぁ!?」
――
「ちっ埒があかねぇな⋯⋯炎球!」
「本当にお猿さんだな⋯⋯君はここで魔法を使うのかい?」
最初は、ここが食堂だという事を意識してなのか殴る蹴るなど魔法を使わずに争っていたが、高宮が魔法を使った事によって状況は一変してしまった。
「こいつら魔法を使い始めたぞ⋯⋯」
「さすがに巻き込まれそうだから帰るわ」
残って喧嘩を観戦していた人達も、巻き込まれるのを恐れて帰宅を始めた。
「まりん、そろそろ帰ろう」
「そうだね⋯⋯このまま見てると巻き込まれそうだよね」
ついつい二人の喧嘩に見入ってしまっていた俺とまりんだが、周りの人達に乗じて食堂を出る事にした。
だが、それは叶わなかった。
「そこの青髪の女の子を連れた銀髪?白髪?の君、この暴走お猿さんを止めるのを手伝ってくれないか?」
黒葛原から高宮を止めるのを手伝ってくれと頼まれてしまったのだ。
(⋯⋯何という自己中心的な男だろう)
俺は助けを求められた時に、黒葛原という男をこう評価した。
元々は、黒葛原が無駄な煽りをしたのが原因とも言える。
それで手に負えなくなったから人に助けを求める⋯⋯人としてありえない。
俺は無視を決め込もうとしたが、それも叶わなかった。
「君が協力してくれないと食堂が壊れちゃうよ?⋯⋯それに君ならこのお猿さんに負けないでしょ?」
確かに、このまま放っておいたら食堂が壊れてしまう。
食堂が壊れてしまったら、この学校に合格したら少なからず学校生活に支障が出る筈だ。
ならば嫌々でもコイツの提案に乗っておくか。
「えーっと高宮?食堂が壊れるから魔法打つのやめてくれないか?」
俺はまず、口で交渉する事にした。
怒り狂っている高宮に交渉は通じないと思うが、念のためだ。
「あぁん?関係無いヤツは黙っとけよ⋯⋯天界の業火!」
案の定、交渉は失敗した。
それに加えて、俺に向かって高宮は魔法を放ってきた。
「炎風」
俺は複合魔法の炎風で、高宮の魔法に対応した。
「おい、てめぇ邪魔する気か?」
「いや、ヤるなら外でやってくれないかと交渉しに来ただけだ」
「そうゆうのを邪魔って言うんだ、分かるか?」
このままでは、交渉どころか俺までもがこの喧嘩に参戦せざるを得なくなりそうだったので、俺は秘策を使うことにした。
「お前らが喧嘩すると、無関係な女の子にまで迷惑が掛かるんだよ!」
俺はそう高らかに声を上げながら、まりんを指さした。
この様なオラオラ系のヤツは、大抵可愛い女の子に弱い。⋯⋯いや、男なら可愛い女の子には弱いか。
もちろん、高宮も例外ではない筈だ。
「あぁん?しらん⋯⋯」
高宮は、「しらん」と言ったきりある一方向を見て、視線を固めていた。
その視線の先に居るのは、もちろんまりんである。
まりんを見た高宮の表情は、驚きに染まっていた。
「ちっ興が冷めた⋯⋯今日は終わりにしてやる」
どうやら高宮は、喧嘩を終わりにしてくるようだ。
どうやら高宮も結局は男だったようだ。
(ふぅ⋯⋯これで一件落着だな)
俺は心の中で、安堵の溜め息をついた。
だが、俺は一言言ってやりたいヤツがいる。
「随分と無責任じゃないか?黒葛原」
そう、元凶とも言える黒葛原だ。
コイツが高宮を煽らなければ、こんな面倒臭い事態にはならなかった筈だ。
「いやー名前を覚えてもらえるなんて光栄だよ⋯⋯無責任だった事は謝罪するよ、ごめんよ」
黒葛原は、悪びれる様子もなくそう言う。
「はぁ⋯⋯帰るぞまりん」
「えっ?う、うん分かった」
俺はこれ以上コイツと関わるとろくな事にならないと思い、今度こそ帰宅する事にした。
「君とは学校で会える事を楽しみにしてるよ⋯⋯どこぞの名門君」
黒葛原の一言に気付かぬまま。




