受験「2」
「これはまた⋯⋯」
俺は二日目の試験の、実技テスト会場に来ていた。
実技試験が行われる会場は、特徴と言える特徴が無い、殺風景な部屋だった。
昨日は、学校の大きさに驚かされたが、今日はこの部屋の殺風景具合に、逆に驚かされた。
「受験する子かな?」
俺が部屋を見渡していると、突然見知らぬ女の子に声を掛けられた。
「そうだけど⋯⋯君は?」
「君と同じ受験者だよ⋯⋯名前は木原桜華って言うの。よろしくね」
「うん、よろしく」
最初に声を掛けられた時は、馴れ馴れしいと思ったが、こんな可愛い子によろしくねと言われてしまえば、そんな事は気にしなくなっていた。
「では、実技試験を開始する。呼ばれた者は、奥の部屋まで来い」
木原と話し終えると、テスト監督の先生から声が掛かった。
(気持ち的に、一番最初と最後に呼ばれるのは嫌だな)
「月如深夜」
そんな事を考えていると、最初の試験者の名前が呼ばれた。
(最初の試験者は月如君ね⋯⋯は?俺じゃないか?⋯⋯)
俺はまだ苗字に慣れていない為、自分が呼ばれた事にすぐに気付けなかった。
「月如は居ないのか!」
いつまでも返事をしない俺に、テスト監督の先生の怒号が響き渡った。
「はい、今行きます」
俺は先生の怒号に少し怯えながらも、早足に奥の部屋に向かった。
――
奥の部屋の中には、テスト監督の先生が三人居た。
「まずは、使える属性の魔法の中で最大火力を誇る魔法を出してくれ」
俺が部屋に入室すると、一番偉そうなテスト監督の先生がそう言った。
「本当に最大火力でいいんですか?もし、この部屋を壊してしまっても責任は取れませんよ?」
俺はこの殺風景過ぎる部屋に不安を覚えた。
いくら事前に超級魔法まで耐えられると説明されていても、安易には信じる事ができなかった。
「そのような事を聞いてくるヤツは毎年多数居るが、誰一人とも壊せていないから安心しろ」
(なるほど⋯⋯それなら安心してぶっぱなせるな)
俺は先生の言葉を聞いて、この部屋の耐久性を信じる事にした。
実例があるのならば、信じる事も出来る。
「では、いきます」
俺はどの魔法を使うか迷った。
俺はまともな魔法の教養が無い。
魔法に対する常識が皆無だ。
つまり、俺は自分の使える魔法の中で、どの魔法が最大火力かが分からないのだ。
だから俺は、自分の使える魔法の中で、威力が高そうな魔法を数種類ピックアップする事にした。
そして、ピックアップした魔法を順番に使っていく作戦だ。
「いきますと言った手前悪いのですが、複数の魔法を使ってもいいですか?」
俺は確認の為、先生に質問をした。
「いいだろう」
先生からは承諾を得た。
「では、炎獄」
俺はまず、炎属性魔法の炎獄を発動した。
炎獄は、自分の周囲に灼熱の炎を発現させる技で、炎の発動範囲は、自分でコントロール出来る。
「では、次の魔法になります⋯⋯大嵐」
次に、大嵐を発動させた。
これは一番使い慣れている魔法で、尚且つ俺の使える魔法の中でも、おそらくだが複合魔法を除いて一番威力が高い。
発動させた瞬間、風が吹き荒れ、部屋の中に雷鳴が轟き、豪雨が降り注いだ。
その様は、まさに大嵐と呼ぶのに等しいだろう。
(久しぶりにぶっぱなしたな⋯⋯隔離空間内でしか本気では発動出来なかったからな)
俺は久しぶりに大嵐をぶっぱなした事で悦に浸っていたが、テスト監督の先生からの一言で大嵐の発動を中断する事になった。
「お願いだから発動を止めてください!!」
テスト監督の先生が懇願する様な表情で俺にそう言ってきたのだ。
俺はなぜと思いながらも発動を止めた。
だが、その疑問はすぐに解消された。
なぜか、他の受験者が待機している部屋の方の壁だけは、全くと言っていい程被害が出ていなかったが、超級魔法ですら凌ぐと言われた試験部屋は、壁は剥がれ落ち、床は抜け、廃墟の如く荒れ果てていたからだ。
(まさか、大嵐が超級魔法を超える魔法だったとは⋯⋯)
俺は大嵐が齎したこの惨状に、大嵐が超級魔法を超える魔法だという事に気付いた。
「月如君⋯⋯ちょっと来なさい」
大嵐の級位の高さを知れて驚いていると、一番偉そうなテスト監督の先生から声が掛かった。
「分かりました」
おそらく、賠償等のその他諸々の話だろう。
俺はこの先起こるであろう展開に憂鬱になりながらも、テスト監督の先生の後に続いた。




