受験勉強?
「本当にすみません」
俺は勉強を教えてもらう為に、まりんの家に来ている。
それなのに、なぜ俺はまりんに平謝りをしているか⋯⋯。
「深夜って馬鹿なの?」
魔法について勉強し始めて僅か一分で、まりんにこう言われてしまったからだ。
やはりと言うべきなのか、俺は魔法論理の基礎が全く分かっていなかったのだ。
まりん曰く、足し算や引き算レベルの問題すら出来ていないらしい。
「何で他は完璧なのに、魔法論理だけはこんなに駄目なの?」
「いや⋯⋯それは分からない」
あまりの不出来さに、嫌味混じりな事も言われてしまった。
「⋯⋯魔法技術の方は大丈夫なの?初めて会った日は使えるって言ってたけど⋯⋯」
はい、これには自信があります。
父親にも天才だと褒められたし、何よりも何種類もの魔法が使える。
これでまりんに「魔法技術もダメじゃん」と言われたら泣いてしまいそうだ。
「それは大丈夫だよ」
「本当?⋯⋯」
俺は大丈夫と言ったが、まりんには信じてもらえなかった。
それもそうだ。魔法論理ではズタボロな結果を出したのだから。
「なら、俺の魔法を見てみる?」
だから俺は、まりんに魔法を見てもらう事にした。
「いいけど⋯⋯使うのは水属性の魔法にしてね?相殺出来ないと、大変な事になっちゃうから」
まりんからは了承を得た。
本当は複合魔法を見せてやりたかったが、水属性と限定されてしまった。
(まぁいいか⋯⋯では、やりますか)
俺は魔法を発動させる為に、集中した。
今回使う魔法は、少し発動に時間がかかる。
俺の使える水属性魔法の中で、最大の威力を誇るからだ。
「水作成」
俺はまず、水作成を発動した。
今回作った水の量は、水溜り程度のごく少量の水だ。
「それで終わりなの?」
俺の魔法を見たまりんの表情は、普通すぎて何にも言えないという様な表情だった。
「まだだよ、まりんその水の中に入ってみて」
「?⋯⋯分かった」
俺は次の魔法を発動する為に、まりんを水の中に誘導した。
「じゃーいくよ、渦潮」
俺は次の魔法を発動させた。
この魔法は名前の通り、渦潮を発現させる魔法だ。
「何も起こらないよ?⋯⋯キャッー!」
俺の魔法を受けたまりんは、女の子のらしい可愛い悲鳴を上げた。
「ちょっと!深夜止めて⋯⋯」
まりんは魔法を止めてと懇願してきたが、俺には止める気が無かった。
こんなに可愛いリアクションを見せられては、もっと見てみたいと思うのが男の性というやつだ。
何というか⋯⋯ナニカに目覚めそうな気さえしてきた。
「相殺すれば?」
俺は更に突き放すような言葉を放った。
「深夜のバーカ!!渦潮なんて相殺出来るわけないじゃん」
「あれれ?何で出来ないの?」
「うー⋯⋯使えないからだよ!」
どうやらまりんは渦潮を使えないらしい。
しかし、発動元は水作成で作った水なのだから、そっちを相殺すれば渦潮も消える筈なのだが⋯⋯。
「水の方を相殺すれば?」
俺はまりんにその事を教えてあげた。
「え?⋯⋯水作成」
俺に指摘されたまりんは、呆然と言った表情を浮かべながらも、魔法を相殺した。
「深夜に魔法論理で負けた⋯⋯全くその事に気付かなかった」
どうやら俺に指摘されて、呆然としていたらしい。
少し悔しいが、呆然としたまりんの表情は、とても可愛かったので良しとする。
「これで俺が魔法技術の方は大丈夫って分かった?」
俺はまりんに認めてもらえるかを確認した。
「大丈夫も何も、魔法技術だけで入試をクリア出来そうだよ」
何と⋯⋯俺の魔法技術はそんなに高かったようだ。
それも、魔法論理抜きで合格出来るレベルだそうだ。
「俺の魔法ってそんなに凄いの?」
「凄いも何も、渦潮は超級魔法だよ」
俺は全く知らなかったが、渦潮は超級魔法だったようだ。
超級魔法は、階級で言うと二番目に高かった筈だ。
(確かにそれは凄いな)
俺は自分の魔法技術の高さに少しだけ驚いた。
「へー⋯⋯それよりまりんの魔法を見せて!」
だが、俺は自分の事よりも、まりんの魔法の方が気になった。
正直どの程度の魔法が使えようとも、俺には関係ない。
俺はただ、色々な魔法が使いたいだけなのだ。
「へーで流さないでよ!⋯⋯まぁ見せるのは良いよ⋯⋯溝渠」
溝渠とは一体どんな魔法何だろう⋯⋯俺には全く想像出来なかったが、その魔法の効果はすぐに出た。
「うわっ!」
俺はまりんの魔法に驚き、素っ頓狂な声を上げてしまった。
なぜ俺がそんな声を上げたかというと、まりんの発動した溝渠とは、足元に2m程の深さの水溜りを作る魔法だったからだ。
「さっきのお返しだよ!」
俺が驚いているのに対して、まりんは無邪気な笑顔を浮かべていた。
ここでやり返したら楽しそうだが、それでは埒が明かないので俺は欲求を抑える事にした。
「もういじめないので許してください」
俺は一言謝りを入れた。
これで、この楽しい⋯⋯不毛なやり取りも終わる筈だ。
「いいよー、それじゃー勉強を再開しようね!」
俺は今のやり取りを惜しみつつも、まりんとの勉強を再開した。




