表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

303/368

第五十八部 門が一つではない国の話 Another Side:アルムロイト辺境伯府

アルムロイト辺境伯府


 同じ頃。


 山と川が交わる谷の奥で、アルムロイト辺境伯は、帝国から先に届いた短い報告へ目を通していた。


 机の上には、鉱山街道の修繕記録、港から届いた漁獲量、雪解けによる増水予測、カラドリン側の山道へ入った商隊の一覧が積まれている。


 報告書の一番下には、灰岩関から追記された一文があった。


旧リュカリオン王家第1王子レオン・ヴァン・リュカリオン、同行のイタリカ監察官カミラ・パヴェルと共に入領。


河橋管理人の判断による通行停止を受け、灰岩関先の宿駅にて待機。


移送中、道、橋、荷重記録へ強い関心を示す。


 辺境伯は、一度だけ目を細めた。


「王子殿は、橋を見ていたか」


 向かいへ立つ秘書官が頷く。


「そのようです」


「剣ではなく?」


「橋です」


「悪くない」


 辺境伯は、報告書を机へ置いた。


「急いで連れてくる必要はない。傷を診ろ。歩けるようになってからで構わん」


「ヴァルター軍監殿の私信は」


「受取役が戻り次第、読む」


「客人へ、何か追加の指示を?」


 辺境伯は少しだけ考えた。


 窓の外では、谷へ落ちる夕方の光が、川面へ細い線を引いている。


「明日は、橋ではなく、市場を通せ」


「市場ですか」


「王子殿が何を見るのか、見てみたい」


 秘書官は、静かに頭を下げた。


 辺境伯は、次の報告書へ手を伸ばす。


 その手元には、まだ開かれていないヴァルター軍監の封書が届くのを待つ場所が、最初から空けられていた。



──Another Side 了


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ