第四十部 第三宿駅と、救恤所で家族の名前を書かせる話 Another Side:青いインク臨時号
青いインク臨時号
救恤所で、家族の名前を全部書くな
麦粥を受け取るために、祖父の名前を書く必要はない。
熱冷ましを受け取るために、死んだ兄弟の移住先を書く必要もない。
一夜分の寝床を借りるために、昔暮らしていた村の名と、家に残っている古い札と、親族が今どこで働いているかを全部差し出す必要はない。
北方街道と南方戦線の周辺で、臨時救恤所が増えている。
火災、冬害、失業、街道封鎖により生活を失った人々へ、麦、薬、毛布、寝床を配ること自体は必要である。現場で働く宿屋の主人、医者、看護師、商人、役人の多くは、目の前にいる人間を助けるために動いている。
それでも、紙は読め。
救恤を受けるために必要な情報と、誰かが別の目的で集めようとしている情報を分けろ。
次の項目を書けと言われた場合は、誰が求めているか、どの部署の命令か、写しを受け取れるかを確認してほしい。
昔の居住地。
旧村名。
父母、祖父母、兄弟姉妹の名前。
親族の現在地。
古い通行札。
家に残っている印章。
戦争前の所属。
移住先。
救恤を断られると言われた場合は、その言葉を言った者の名前を覚えてほしい。
可能であれば、一人で書くな。
家族。
隣人。
宿屋の主人。
医者。
市場の女。
誰でもよい。
誰かと一緒に読め。
紙の端へ、ごく細い青線を引く者がいる。
この線は、私たちが記事を刷るために使っている青いインクとは違う。
同じ色へ見せかけているが、役割が違う。
知らせるための青ではない。
分けるための青だ。
誰が、何のために人を分けているのかは、まだ分からない。
分からないから、残してほしい。
燃やすな。
捨てるな。
写せるなら、写せ。
一枚を、一か所へ置くな。
北へ。
南へ。
東へ。
西へ。
別の道へ流せ。
紙は、人を消す。
だが、残し方を間違えなければ、人を守ることもできる。
青い活字社
ヴィクトル・グレイ
──Another Side 了




