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第三十三部 一人旅と、一人分の自由を持て余す話 Another Side:青いインク臨時号

第三十三部 一人旅と、一人分の自由を持て余す話 Another Side:青いインク臨時号


「青いインク」臨時号

北方街道で、紙だけを選ぶ火

グランデル帝国北東部の街道沿いで、記録倉庫と荷車が焼かれている。

金貨は残った。

武器も残った。

食料の大半も残った。

消えたのは、通行記録。

患者移送札。

薬箱の受領記録。

盗賊は普通、金を盗む。

紙だけを選んで燃やす者がいるのなら、その火は、少し賢すぎる。

誰の名前が消えたのか。

誰の名前が、別の誰かへ渡ったのか。

まだ、分からない。

だが。

火事と呼ぶには、少しだけ手際が良すぎる。

地下出版網「青いインク」臨時号

 青いインクで刷られた紙は、王都から南へ、西へ、東へ流れていく。

 旧街道の途中で、誰が何を燃やしているのか。

 まだ、誰も知らない。

 黒松林の手前で足を止めた傭兵も。

 その朝。

 枝道の奥で、何が待っているのかを知らなかった。



──Another Side 了


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