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第二十六部 朝潮と、間違えた灯の返事の話 ① 朝の海

 朝の海は、夜より信用できる。


 そう思っていた。


 少なくとも、見える。


 黒いものは黒く見える。


 白い波は白く見える。


 近づいてくる船は、近づいてくる船として見える。


 だから夜よりましだと思っていた。


 甘かった。


 海は、明るくなっても信用できない。


 見える分だけ、怖いものも増える。


 黒帆。


 浅瀬。


 白い岩礁。


 それから、朝日を受けてこちらへ近づいてくる、知らない矢。


 俺の名は、レオン。


 便宜上は、ロド・カナリ。


 二十八歳。元王子。現傭兵。職業、負傷予定者。


 趣味、惚れること。


 専門、死にかけて誰かに縫い直されること。


 現在の役目は、寝台上の動かない証人から、甲板上の動かない荷物へと変わった。


 昇格なのか。


 悪化なのか。


 たぶん、海では同じことなのだろう。


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