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第二十五部 死んだ水夫の合図と、灰橋倉の家令の話 ① 戻る名前
死んだはずの人間の名前が、もう一度出てくる。
それは、幽霊より厄介だ。
幽霊なら、まだ怖がればいい。
祈ればいい。
逃げればいい。
だが、名前だけが戻ってきた場合、怖がっているだけでは足りない。
誰が書いたのか。
誰が持っていたのか。
誰が売ったのか。
誰がその名前で、別の誰かになろうとしているのか。
調べなければならない。
つまり、寝ていられない。
俺は寝台の上で、静かにそう悟った。
たいへん迷惑な悟りである。
俺の名は、レオン。
便宜上は、ロド・カナリ。
二十八歳。元王子。現傭兵。職業、負傷予定者。
趣味、惚れること。
専門、死にかけて誰かに縫い直されること。
現在の仕事は、動かない証人、動かない助言者、桶係、そして、死んだ水夫の名を見る係である。
肩書きが、どんどん人に説明しにくい方向へ増えている。




