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第二十四部 濡れた外套と、寝台の上の囮の話 ① 寝台の囮


 走れない。


 踏ん張れない。


 剣を抜けない。


 胃は常に反乱寸前。


 肩は熱を持ち、脇腹は深く息を吸うたびに文句を言い、膝は揺れる床に対して完全に不信感を抱いている。


 そんな状態で役に立てと言われたら、普通は無理だ。


 だが、人間、追い詰められると役目が見つかる。


 この日、俺に与えられた役目は、囮だった。


 寝台の上で。


 動かずに。


 吐きそうになりながら。


 たいへん名誉な役目である。


 泣いてはいない。


 少しだけ、左の桶を見た。


 俺の名は、レオン。


 便宜上は、ロド・カナリ。


 二十八歳。元王子。現傭兵。職業、負傷予定者。


 趣味、惚れること。


 専門、死にかけて誰かに縫い直されること。


 そして現在、海上における臨時職は、寝台付きの囮である。


 人生は、まだまだ知らない形で俺を辱めてくる。


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