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市場で買い物

この街には都市計画と呼べるものが一切ないらしく、無法図に皆が家を建てて地図も標識も何もないのでラビリンスもびっくりな街模様である。

アリスのような道案内がいなければ目的地だった市場はおろか、俺は二度と街の外に出られずに干からびる羽目になるかもしれない。


「おお!ここが夢にまで見た市場!マーケット!自由経済!」

目の前に広がる露天商と人混みの多さに圧倒されながら俺はテンションをあげる。

「タフィーとは何が違うってまずはすごくカラフルだ。」

露天では敷物の上に商品が陳列されているのだが、少しでもその見栄えをよくしたいのか、

敷物はあざやかな染料で染められており商品とのコントラストがうまれている。

「あそこは商品がどれも蔵の中にしまってあるから、通りの外観がすごく地味なんだよな。」

おまけに内装も殺風景なものでどの店も代わり映えがしない。

特権による制約もあるので、商品にはバリエーションがなく、やはりあれは小売店ではなく倉庫だ。

「そしてこの活気ある売り子達。威勢があって大変素晴らしい。」

少しおしゃれな色の服を着た人達が、相手の気を引こうと様々な文句を通行人達に投げかけている。

彼らもまた店の見栄えの一部なのだ。

「とどめがこの人の数。

皆なんかエネルギッシュで、見ているだけでこっちも元気がもらえてくるよ。」

なんだかどれも懐かしい光景を見ているようで日本を思い出す。

いや、こんなクリップは列島のどこにも存在しないけど。


「人混みが好きだなんて山田は変わっているね。」

「そうかな?」

「だってここはスリには気をつけないといけないし、息苦しいし、なんだかソワソワしてこない?」

「アリスはおのぼりさんだもんな。」

その一言が彼女の怒りに触れてしまったのか、三角の目をしたアリスに下から睨まれる。

「山田よりよっーーーーぽど、私の方がここに来たことあるんだけど!!!」

腕をばたつかせながら抗議している彼女をいつか、渋谷スクランブル交差点にでも連れ出してみたい。

おろおろしているその姿が容易に想像できる。

「それで、まずは何から取り掛かるんだ?

山田くんのカツカレー?それともアリスのお仕事?」

「もちろん私からだよ。

仕入れる予定の果物を買いに行こう。」

カオスの渦にアリスが先陣をきった。


買い付けを命じられた商品はダーツと呼ばれる果物を乾燥させたものらしく、

シワシワに今はくすんで黒に縮んでいるが元々は赤い果実ならしい。

さきほど味見をさせてもらったが、ねっとりとした黒糖みたいな味で普通に美味しかった。

「冗談だろ?

そんな値段で売れるわけないだろ。お嬢ちゃんはなんて強欲なんだ!

もしかして私を破産させるために悪魔が遣わした代理人なのか!?」

やけに芝居掛かった言い回しと、手ぶりを披露しているのはアリスの交渉相手。

ダーツを取り扱うイスパという男だ。

「そんなに大げさなことを言わないでよ。

たくさん買うからさ。」

「安くしてたくさん買われたら損が大きくなるだけじゃないか!」

「いやいや、売れ残って商品が駄目になる方が損になると思う。」

「駄目になる?幸いうちが取り扱っているものは日持ちがするからね。」

「それならカゴは空っぽで懐は豊か、帰りがはやくて奥さんもにっこり。

どう?想像してみてよ?」

「奥さん?俺はまだ独身だよ。」

「ぐぬぬぬ。」

「市の終わりが近づけばその条件で考えてやってもいいが、今はその時じゃないからねー」

見た感じアリスの交渉はあまりうまくいっていないようだ。


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